ξ ´ з`)ξハイパーメタボリックエンジェルズのようです #2
- 1.
l从・∀・ノ!リ人ピチャピチャ ペチャペチャ
ξ ´ з`)ξ
ツンはピーナッツバターを一心不乱に舐める人形を呆けたような顔で見ていた。
小さな体に似合わない、ものすごい食欲だ。
ビンの底にこびりついたわずかな残りをスプーンで掻き出しながら、人形は食べカスを
飛び散らせつつ言った。
l从・∀・ノ!リ人「うまいのじゃ! これは何て言うものなのじゃー」
ξ ´ з`)ξ「え? ピーナッツバターだけど……」
ハイパーメタボリックエンジェルズのようです
#2 ハイパーメタボリックエンジェル参上!
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- 2.
l从・∀・ノ!リ人「そうか、そうか。この世界にもこんなウマいもんがあったんじゃのう!
ずっと野良犬と生ゴミの取り合いしとったから知らんかったのじゃー!」
人形はビンの中身をすべて平らげると満足げに目を細めた。
膨れ上がった腹に両手を置き、音もなく宙に浮かび上がる。風船のようだ。
l从-∀-ノ!リ人「あー、お腹一杯なのじゃー」
ξ;´ з`)ξ「うわっ、飛んでる」
l从・∀・ノ!リ人「ところで自己紹介がまだじゃったかのう。
わらわは妹者なのじゃ、よろしくなのじゃー」
ξ ´ з`)ξ「“わらわ”ってあんたどこの人? っていうか、そもそも人なの?」
l从・∀・ノ!リ人「話せば死ぬほど長くなるのじゃ。食休みしてからにして欲しいのじゃ」
なかなか面の皮が厚そうな奴だ。
ツンはとんだ拾い物に辟易した……いや、こんな事してる場合じゃなかった。
- 3.
中学入学祝いに買ってもらった腕時計に目をやる。
ξ;´ з`)ξ「あばば、こんな時間! もう出ないと」
l从・∀・ノ!リ人「お? どっか行くのかえ」
ξ ´ з`)ξ「学校行かなきゃ! 大人しくしててよー」
l从-∀-ノ!リ人「言われんでも今は動きとうないのじゃー」
通学カバンを拾い上げて階段を駆け降りる。
玄関に行って靴に足を押し込んでいると、カーチャンが弁当を持ってきてくれた。
J( 'ー`)し「気をつけて行くんだよ。寄り道するんじゃないよ」
ξ ´ з`)ξ「行ってきまっす。ドクオは?」
J( 'ー`)し「もうとっくに出たよ」
ξ ´ з`)ξ(ちぇ、待っててくれたっていいのに)
弁当を受け取ってカバンに入れつつ、家を飛び出す。
- 4.
途中、いつものように友人クーと合流する。
川 ゚ -゚)「歩くエンゲル係数、ツンさんじゃないですか! おはよう!」
ξ;´ з`)ξ「おはよー。毎朝嫌味言うのやめてください……」
川*゚ -゚)「これがわたしの毎朝の楽しみだからな!」
毎朝恒例の強烈な挨拶を食らいつつ、一緒にバス停へ向かう。
途中、クーがツンのカバンをチョイチョイと指差した。
川 ゚ -゚)「それは感心せんな、校則違反だぞ」
ξ ´ з`)ξ「え?」
l从・∀・ノ!リ人
ξ;゚ з゚)ξ「何やってはるんですか妹者さん!」
いつの間にか妹者がストラップよろしくカバンにくっついている。
だが彼女はツンを無視してぷらぷら揺れているだけだ。
- 5.
川 ゚ -゚)「人形に口を利いたりしてそれは何だ、萌え系のつもりか?」
ξ;´ з`)ξ「ん!? いいえ、ええと、何でもないです」
一体どういうつもりだって顔をして見せると、彼女はウインクして来た。
l从・∀-ノ!リ人
ξ;´ з`)ξ(どうかモメゴトになりませんように)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ツンとクーが出会うよりちょっと前、体育教師クックルもまた職場へ向かっていた。
そろそろ十月だというのにジャージにタンクトップ一枚で、筋肉をパンパンに詰め込んだ肉体を
周囲を辟易させるくらいに見せつけている。
( ゚∋゚)「通勤時間も特訓を怠る事なし! フオオオオ!!」
- 6.
電車の中では吊革を使って懸垂、駅の階段は腿上げ、最後の道程をマラソンで過ごし、
そろそろ学校に到着と言う頃、背広の男に声をかけられた。
( ФωФ)「おはようございます。ちょっといいですか?」
( ゚∋゚)「むっ? 通勤途中なんだが……」
( ФωФ)「五分で済みますから。ちょっと向こうに視線お願いします」
もう一人の男がテレビカメラを肩に担いでレンズをこっちに向けている。
CMの撮影のようだ。
(゚q 。)ウボァーウボァー
( ゚∋゚)「テレビか? おっと、いかん。紳士のたしなみを忘れていた」
クックルはヒヨコ柄のネクタイを取り出し、太い首に締めた。
- 7.
(;ФωФ)「いやあの、そのままで結構ですから。
ちょっとこの新発売のドリンク『2chエナジーDX』を飲んでもらえますか?」
( ゚∋゚)「おっと、俺は栄養ドリンクにはちょっとウルサイぜ?」
( ФωФ)「フフフ、この2ch製薬のは一味違うでありますぞ」
クックルは手渡されたドリンク剤の蓋を親指で弾いて開いた。
( ゚∋゚)「ファイトォオ! イッパ……」
(;ФωФ)「すみません、それ他社なんで止めて下さい」
( ゚∋゚)「む、そうか」
腰に手を当て、ビンを口につけて45度の角度に傾ける。
( ゚∋゚) ゴキュゴキュ グビグビ
( ゚∋゚)「……ん?」
- 8.
喉の奥へと流れ込んでくるものの違和感に顔をしかめ、クックルは口からビンを離した。
中を覗き込むと赤いモヤのようなものが入っている。
( ゚∋゚)「何だいこりゃあ。霧……?」
レポーターはニヤリと笑った。
( ФωФ)「どうです? 今までのとはちょっと違うでしょう?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
さて、時間は進み、こちらはツンの通う中学校。
二時間目は体育で生徒たちはすでに着替え、グラウンドに集まっているのだが、いつまで経っても
肝心の体育教師が来ない。
生徒たちが待ちくたびれてダレていると、職員室に様子を見に行っていた委員長が戻ってきた。
(゚、゚トソン「皆さん、教室に戻って下さい。先生は今日は来れないみたいです」
- 9.
ξ ´ з`)ξ「お、こりゃあ自習かな」
川 ゚ -゚)「文系オタどもが醜悪な顔を歪めて悶え苦しむ様が見れない……だと……?」
( ><)「やれやれ、助かったんです」
ξ ´ з`)ξ(あ、でもビロードくんと組めないのは悲しいかもー。
せっかくコンビになったのになー)
ちょっと複雑な気分だが、まあ何にせよ堂々とサボれるわけだ。
生徒一同は教室に戻り、思い思いのことをして過ごした。
川 ゚ -゚)「くそー、ツンの醜態を楽しみにしてたのにー」
ξ ´ з`)ξ「ブヒヒ! 残念でしたー」
川 ゚ -゚)「かったるいな。テレビでも見るか?」
ξ ´ з`)ξ「この時間はさわやか三組くらいしかやってないよー」
クーがバッグからDSとTVチューナーを取り出している間、妹者がツンのバッグから顔を出した。
- 10.
川 ゚ -゚)「んー、電波状況が良くないな。もっとこっちか? いや、向こうへ……」
l从・〜・ノ!リ人モッシャモッシャ 「なんじゃ、サボりか?」
ξ ´ з`)ξ「いやあ、なんか先生が来ないみた……何食ってんの?」
l从・ 3 ・ノ!リ人 ペッ
エビフライの尻尾を吐き出し、妹者は口の周りの食べカスを拭った。
l从・∀・ノ!リ人「野菜は取ってあるのじゃー。心配するな」
ツンはあわてて自分の弁当を取り出し、包みを開いた。
ξ;´ з`)ξ「ああああ!! あ、あたしのお弁当がっ」
l从・∀・ノ!リ人「お前の母上もなかなか罪な女なのじゃー。
娘の体型に気を使ってもうちょい油を控えたもんすりゃ良いのにのう」
ξ ; з;)ξ「メ、メインのおかずだけ食べられてるっ! ひどおい!」
- 11.
ほぼ空っぽな弁当を手に取って涙目でいる彼女を無視し、妹者は改まって言った。
l从・∀・ノ!リ人「ツン、ちょっと話がある。助けてくれた礼にお前の……」
川 ゚ -゚)「映ったぞ、ツン」
ξ;´ з`)ξ「んっ!? ああ、ハイハイ」
l从・∀・ノ!リ人 ムギュッ
妹者の頭をバッグに押し込み、ツンは窓辺のクーの方へ行った。
画面の中ではリポーターが何やら喚いている。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(#゚;;-゚)「滝川クリスでぃルが現場から生中継でお送りしています。
突如街中に現れた謎の怪人が町を破壊しています!
警察も歯が立たずここ、VIP通りは無法地帯に……」
- 12.
カメラが異変を察して左右に揺れ、レポーターからピントが外れた。
その背後、ハリケーンの跡さながらの様相を呈している交差点に、人影が一つ見えた。
潰れた車から立ち上がる炎と煙で、その姿は漠然としたシルエットにしか見えない。
( ∋ )「ふんがあああああ!!」
この男がハリケーンの目らしかった。
雄叫びを上げ、近場の乗用車を空き箱さながらに軽々と担ぎ上げると、のけぞって力を溜めた。
(#゚;;-゚)「あっ、危なっ……」
ぶんっ。
鉄の塊は弾丸と化して放たれ、カメラの画面を覆い潰した。
一瞬激しくモニタが震動してすぐにノイズになり、スタジオに移り変わった。
- 13.
( ゚д゚ )「でぃさん? でぃさん?
……えー、中継が途絶えてしまいました。続報が入り次第、引き続きお伝えします」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
川 ゚ -゚)「……今の、クックル先生に似てなかったか?」
ξ ´ з`)ξ「うん? う〜ん、どうかなあ」
川 ゚ -゚)「って人間の力じゃ車は持ち上げられんな。
謎の怪人か……おお、なんかワクワクして来た!
学校サボって見に行かないか?」
ξ;´ з`)ξ「えええ!? イヤだよぉ」
慌てて断るといつの間にか肩に這い上がっていた妹者が、ツンの耳に囁きかけてきた。
l从・∀・ノ!リ人「ツン、話があるのじゃー。ちょっとこの場を出るのじゃ」
ξ ´ з`)ξ「ええ!? ええと、ああ、うん」
- 14.
川 ゚ -゚)「どうした?」
ξ ´ з`)ξ「ちょっとおトイレに……」
川 ゚ -゚)「そうか。お、ヘリの映像になった! 怪獣映画みたいだな」
妹者を手に抱え、教室を出てトイレに駆け込む。
個室に入り鍵をかけると、この小さな厄介者に対するムカムカが抑えきれなくなった。
ξ;´ з`)ξ「もー、あんた何なのさー! お弁当お弁当お弁当!!!」
l从・∀・ノ!リ人「お前を痩せさせてやるのじゃー」
ξ ´ з`)ξ「え……」
少し考え、すぐにツンは首を振った。
ξ;´ з`)ξ「って、弁当食った言い訳がそれかい!」
l从・∀・ノ!リ人「そうではないのじゃ。あれは単にわらわの腹が減ってただけなのじゃ。
だがある方法を使えば、あの夢の中のお前の姿に近づけることが可能なのじゃー」
- 15.
ξ ´ з`)ξ「なん……ですって……」
l从・∀・ノ!リ人「知っての通り、わらわはただの人形ではない。
ツンよ、お前は体型は正しくないが心は割と正しい!
わらわを拾ってくれたことからもその優しさはわかろうと言うものなのじゃー」
ξ;´ з`)ξ「一言余計なんだけど……で、でも痩せられるって本当!?」
l从・∀・ノ!リ人「わらわのワザにかかればな。どうだ、興味が湧いてきたかえ?」
ξ*´ з`)ξ「すっごい湧いてきた!」
l从・∀・ノ!リ人(こいつ想像以上に単純じゃな)
妹者は我が意を得たりとばかりにニヤリと笑った。
獲物が釣り針をパクッと飲み込んだと言わんばかりだ。
l从・∀・ノ!リ人「んーと、まずは変身するのじゃ」
ξ ´ з`)ξ「変身?」
l从・∀・ノ!リ人「夢ん中でメダルをやったじゃろ、あれを使うのじゃー」
- 16.
ξ ´ з`)ξ「メダルって……どこ?」
l从・∀・ノ!リ人「右手の甲を見てみるのじゃ」
ツンは自分の手の甲を持ち上げてまじまじと眺めた。
別に何もない。いつも通りの自分の手だ。
ξ ´ з`)ξ「?」
l从・∀・ノ!リ人「あのメダルの文様は覚えてるな。
あれが手の甲に浮かび上がるように想像してみるのじゃ」
ξ ´ з`)ξ「そんなのって出来……あれっ!?」
文句を言い終える前に手の甲にステッキとシルクハットを組み合わせた文様が浮かび上がってきた。
円で囲まれていて、メダルに見える。
思わず顔から離すとその文様は手の甲から飛び出し、ゆっくりと回転しながら宙に浮かび上がった。
ξ;゚ з゚)ξ「ひいいい、なんですかーっ!?」
- 17.
l从・∀・ノ!リ人「そこでこう言ってみるのじゃー。“メタボリックチェンジ!”」
ξ*´ з`)ξ「お、何かカッコイイ。ちょっとノッて来た!」
ツンはテレビアニメの魔法少女モノのようにポーズを決め、そのセリフを叫んだ。
ξ ´ з`)ξ「メタボリックチェーンジ!」
メダルが大量の光の粒子を放って炸裂し、ツンの体を包み込む。
自分の体が一度バラバラに四散するような感覚があり、すぐに飛び散った全身の端々が戻ってきて
一か所で再構築が始まる。
放たれた光は再びメダルの形に収束して消え、襟のネクタイピンになってぶら下がった。
ξ ゚听)ξ「うわ、すっごい!! 夢のまんまだ」
個室から出て鏡の中の自分の姿を確認すると、改めて感嘆が漏れた。
- 18.
自分の折れそうなほど細い腰回りやほっそりした顎、キュッと引き締まったお尻などをひとしきり
撫でて回る。
ξ*゚听)ξ「確かに痩せたわ! うひい、涙出そう」
l从・∀・ノ!リ人「残念ながら変身を解いたら元通りなのじゃ」
ξ;゚听)ξ「えええ!? じゃ、じゃあずっと変身したままでいれば……」
l从・∀・ノ!リ人「そのカッコで日常を過ごすつもりかえ? そのスーツは変身中は脱げんのじゃ」
例のバニーガールとタキシードを合体させたコスプレじみた格好だ。
膝下丈のスラックスから伸びるふくらはぎは優美なカーブを描き、ピンと伸びたつま先へ続いている。
ξ;////)ξ「エ、エロイ……ハイヒールだし」
l从・∀・ノ!リ人「奇抜な格好の方が正体がバレにくいのじゃー。顔に意識が向きにくくなる」
ξ ゚听)ξ「三億円事件理論か。えっと、それでどうして欲しいの?」
l从・∀・ノ!リ人「とにかくここを出ようかえ。その格好で便所にいるのはシュールすぎるのじゃー」
- 19.
妹者がトイレの窓を指差す。
ツンは身をよじってそこから出ると、窓枠を軽く蹴って高く跳んだ。
羽のように軽い体は校舎の二階分の高さを悠々と飛び越え、授業中の生徒たちを横目に屋上へと
辿り着く。
ξ*゚听)ξ「すごいすごーいい!! 夢と一緒だー!」
l从・∀・ノ!リ人「ふむ……」
妹者は腕を組み、煙の上がる町の一角を見遣った。
あそこで例の怪人が暴れているのだろう。破壊活動の狼煙のようだ。
ξ ゚听)ξ「怪人かー。なんなんだろーね」
l从・∀・ノ!リ人「完全に他人事じゃな。ツン、お前には今からあいつと戦ってもらう」
ツンは驚愕のあまり目玉が飛び出しそうになった。
- 20.
ξ;゚听)ξ「えええええええええええ!? 何でそうなるの!!」
l从・∀・ノ!リ人「今のお前はスーパーヒロイン・ハイパーメタボリックエンジェルなのじゃー!
あの程度の奴を討つことなど造作もないわい」
ξ;゚听)ξ「で、でもそんなん急に言われても〜」
l从・∀・ノ!リ人「あいつを倒し町の平和を守ってみ、みんなに感謝されてアイドルになれるのじゃ」
ξ ゚听)ξ ゴクリ……
普段自分の惨めな姿に耐えているツンにとって、妹者のこの言葉は圧倒的魅力を放っていた。
脳裏に人々の喝采を一身に受けている自分の姿が目に浮かぶ。
もちろん片思いの人、ビロード君も自分だけを見ていて……
ξ*゚听)ξ「ア、アイドル……こ、こんなあたしが……」
l从・∀・ノ!リ人「あそこにはテレビも来てるし、今活躍を見せれば一躍有名人なのじゃー。
やる気が出て来たじゃろ?」
ξ*゚听)ξ「すっごい出てきた!」
- 21.
l从;・∀・ノ!リ人(不安になるほど単純なのじゃ……)
ξ ゚听)ξ「よおし、やってやるぞ! とうっ!」
校舎から隣の民家の屋根に飛び移る。
その屋根からもう一つの屋根へ、そしてまた別の屋根へと、ツンは猫のような身軽さで建物の上を
渡り歩いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
喧噪や悲鳴、パトカーと黒煙がどんどん近付いてきて、やがて現場に辿り着く。
地面のアスファルトがヒビ割れ、破裂した水道管から水が噴き出していた。
ξ ゚听)ξ「うわっ、戦場みたい」
l从・∀・ノ!リ人「派手に暴れとるようなのじゃ」
ξ ゚听)ξ「んっ、あそこだ!」
- 22.
黒煙の向こうで、大男が雄叫びを上げながら何かを振り回している。
確かにクックル先生に似ているが、巨漢などと言うレベルではないくらいに筋肉が膨張している。
人間ではありえないほどだ。
( ゚∋゚)「ふんがあああ!!」
ξ;゚听)ξ「う、ちょっと怖くなってきた……」
l从・∀・ノ!リ人「びびるでない。夢の中のシャボン玉を相手にした時と同じ要領で行け」
ξ ゚听)ξ「よ、よーし!」
ツンは格好良くキメようと、男の方を指差した。
ξ ゚听)ξ「何をそんなにイライラしてんだか知らないけど、町の人に迷惑をかけるのは良くないわ!
破防法違反でこのハイパーメタボリックエンジェルがお仕置きしてあげ……」
( ゚∋゚)「オンドリャアアアア!!!」
フッと男の姿が霞んだ。
- 23.
相手が持っていたのは根本から折れた信号機だ。
その一端を持って勢いをつけ、もう一端を地面に突き刺したらしい。
棒高跳びの要領だ。
ξ ゚听)ξ「へ?」
一瞬ではるか上空に自分の体を運び、そのまま名乗りを上げている最中のツンの目前に降ってくる。
地面にぶつかる寸前で男は勢いのすべてを乗せた両足をツンの体に放った。
(#゚∋゚)「超肉弾公務員棒高跳び式ドロップキ―――ック!!」
ξ;゚听)ξ「名前長っ」
ズドン!
巨大な鉄球がぶつかってきたような衝撃が体を貫き、ツンの体は蹴っ飛ばした空き缶のように
吹っ飛んだ。
- 24.
ξ ゚д゚)ξ「ほげえええええ!!!」
小さな商社ビルに飛んで行くと、商品見本を置いた地階のショーウィンドウを突き抜けて壁を
数枚突き抜ける。
ドゴンドゴンというコンクリートをぶち抜く音が数度し、進行方向のパソコンデスクやらロッカーを
巻き込みつつ、給湯室の壁に叩き付けられてようやく止まった。
頭上の戸棚の戸が衝撃で開き、ぷらぷら揺れている。
その中から空のヤカンが一つ落ちてきてツンの脳天にぶつかった。
カンッ!
ξ;>д<)ξ「あでっ! ……ええい、チクショー!」
頭をぶんぶん左右に振って気を取り直すと、色んなものをどけて何とか立ち上がる。
出会い頭にいきなり痛恨の一撃を食らってしまった。
ξ;゚听)ξ「いててて、いったあああい!
- 25.
ξ;゚听)ξ「最初はまず名乗り合うのがヒーローものの定石じゃ……」
文句を言いかけた口がまた途中で止まる。
舞い上がる砂埃の中に人型の影が映ったかと思うと、それをぶち抜いてあの男が飛び出して来た。
( ゚∋゚)「フンフンフンフン!」
胸を張って顎を引いた見事な短距離ランナーのフォームだ。
ツンを目前に捕らえると男は体勢を変え、前屈みになって更に勢いをつけた。
上半身をひねって右肩を突き出し、ツンの懐に飛び込む形でショルダータックルを放つ。
(#゚∋゚)「超肉弾公務員ボンバータ――――ックル!!」
ξ ゚д゚)ξ「ふんぎゃああああってあたしここに来てから悲鳴を上げる事しかしてなーい!!」
盛り上がった肩にくっつけたツンの体ごと、男はビルの更に奥へと爆進した。
- 26.
再びビル内の色んなものが背中にぶつかる感覚があり、鉄筋コンクリートの壁をまるで
発泡スチロールのようにぶち抜きまくり、ようやく外に出た。
男がタックルの姿勢を解いて急停止したので、ツンは自然とそこから離れて地面に放り出された。
ξ;゚д゚)ξ「あだっ、でっ、だっ」
アルファルトの上をボールのように弾んで転がり、地面にぶつかって跳ね上がるごとに細切れの
悲鳴を上げる。
ξ;゚д゚)ξ「あべしっ!」
電柱にぶつかってようやく止まった。
急に体の動きが止まると何だか頭の中の動きまで止まってしまった気分だ。
ツンは呆然と仰向けになって空を見上げた。
ぼんやりと今日の学校の食堂の日替わり定食が何だったか思い出そうとする。
- 27.
ξ ゚听)ξ「えーと……エビフライ定食だったかな。あ、妹者ちゃんに食われたのと同じ……」
場違いに晴れ渡った空の雲の一つが、エビフライに見えてきた。
そこにふよふよと宙を飛んで来た妹者の姿が割り込む。
ツンを見下ろして彼女はため息をついた。
l从・∀・ノ!リ人「やれやれ、あんなザコに手間取ってるようでは先が思いやられるのじゃー」
ξ --)ξ「喧嘩は苦手なんだよお……」
( ゚∋゚)「強い!! 圧倒的に強すぎる、俺!!」
男が何か喚いている。
体を動かすのが億劫なので頭だけわずかに上げて見てみると、筋肉を見せつけるポージングを
取りつつ何かに陶酔したように明後日の方向を睨んでいた。
- 28.
( ゚∋゚)「何故人は体を鍛えるのか? 俺は今日、その理由に気付いてしまった……
それは! まさしく! 破壊の為だったのだ!
アスリートは皆破壊を求めるのだ、記録の破壊、限界の破壊、そしてライバルの破壊。
おお……おお! キタエヨ! ニクタイビ!」
ξ ゚听)ξ「なーんか言ってるよー」
l从・∀・ノ!リ人「あいつの頭の周りのもんが見えるかえ、ツン?」
ξ ゚听)ξ「んー?」
男の頭の周囲が微かに赤く霞んで見える。
眼を凝らすと真っ赤な霧みたいなものがかかっていた。
ξ ゚听)ξ「あれは?」
l从・∀・ノ!リ人「あの男はあの“血の霧”に支配されると同時に、パワーを授かっているのじゃ。
己の内側に満ちる欲望を骨組とした装甲をまとっていると考えるがええ」
ξ ゚听)ξ「ぜーんぜんわかんない……」
- 29.
l从#・∀・ノ!リ人「さっきまでのやる気はどうした!?」
ξ ‐凵])ξ「だってあんなの勝てないもーん」
すっかりやさぐれたツンを見下ろしながら、妹者は苛立たしげに溜め息をついた。
l从・∀・ノ!リ人「そのスーツは敵から受けたダメージを軽減したり必殺技を使ったりする際、
すべてお前の体の脂肪を燃焼してエネルギーを賄うようになっているのじゃ。
軽く一時間も戦えば体重が一キロは減るぞ」
ξ ゚听)ξ「……」
l从・∀・ノ!リ人「夢の中を思い出せ。脂肪が邪魔してるが、お前は本来運動神経は悪くないのじゃー」
ツンは過去に思いを巡らせた。
この脂肪という名の服を着ているばかりに、どれほど不遇であったか……
周囲の人々の心無い言葉が脳裏をよぎった。
- 30.
川 ゚ -゚)「お前がツンか。聞いた通りのミートボールっぷりだな! 友達になってやろう」
川 ゚ -゚)「ここが養豚場、もといお前の家か! お邪魔します!」
川 ゚ -゚)「うわっ、地震だ! ツン、落ち着け、飛び跳ねるんじゃない!」
ξ;゚听)ξ(……って、ひどい事言ってんのはほとんどクーちゃんじゃん!!)
ツンはよっこらしょ、とかけ声をかけて起き上がった。
屈伸運動をしてガタガタになっている体の節々を慣らす。
ξ ゚听)ξ「あんたの言ってることは正直気に入らないけど……
やっぱり、ここまでボコられてやられっぱなしなのもね」
l从・∀・ノ!リ人「その意気なのじゃー!」
ツンは自分の頬を叩いて気合いを入れ直した。
- 31.
ξ ‐凵])ξ(そうだよ、痩せなきゃ……今度こそ痩せなきゃ!
もう諦めないぞ。いつも夢見てる、あたしが望む最高のあたしになるんだ!
クーちゃんの罵詈雑言を止める為にも……)
l从・∀・ノ!リ人「ヒントをやっとくぞえ。
あいつの攻撃は一直線で思い切り大振りなのじゃ」
ξ ゚听)ξ「つまり?」
l从・∀・ノ!リ人「攻撃は事前に必ず察知出来るのじゃー。
常にカウンターを取ってあの筋肉ダルマに思い知らせてやるのじゃー!」
ξ#゚听)ξ「おっしゃあ!」
相変わらずわけのわからないことを喚いている男に向かってツンは駈け出した。
足音に気付いた男が振り返る。
( ゚∋゚)「むっ!? まだやるか!」
ξ ゚听)ξ(夢を思い出して……変身中のあたしは無敵よ!)
- 32.
( ゚∋゚)「オンドルァアア!!!」
一直線に繰り出された拳を身を伏せてかわすと、そのまま両手で地面を掴んで逆立ちになり、
勢いを活かして右足の踵を相手の顎に叩き込む。
サソリの尾の一刺しのような蹴りだ。
どむ、と筋肉が波打つようにして衝撃が突き抜ける感覚。
(;゚∋゚)「ぐっ!?」
怒りと戸惑いに任せ、相手は続いて狂ったように打撃を放ってきた。
その嵐のように降り注ぐ拳と蹴りを、柳が風にそよぐようにしてかわし、その都度カウンターを取る。
ξ ゚听)ξ(なるほど、よく見える)
妹者の言う通りだ。
落ち着けば自分の動体視力が極限まで研ぎ澄まされているのがわかる。
- 33.
相手の丸太のような右足が跳ね上がり、真横から薙ぐ形で飛んでくる。
ツンは軽くジャンプしてそれをかわすと、相手の背後に回り込みつつ、その後頭部に向かって空中で
後ろ蹴りを放った。
ξ ゚听)ξ「よっと!」
(;゚∋゚)「ぐえっ」
蹴りを受けて前につんのめる形になった相手の背後に着地すると、すぐに裏拳が追って来た。
それをダッキングでかわし、相手に背を向けたままその懐へと飛び込む。
ξ#゚听)ξ「せえええい!!」
ツンは右手の拳を左手の平に包み込んで固定し、上半身を捻って背面肘打ちを放った。
ドスン!
みぞおちを貫かんばかりに突き刺さったそれに、さしもの巨漢も一瞬揺らぐ。
- 34.
( ゚∋゚)「グエッ!」
間髪入れず左手の中から右拳を解放すると、スナップをきかせて相手の顎に裏拳を叩き込む。
肘打ちからの二段の連携技だ。
ツンは骨がぶつかるガツンという音を拳越しに聞いた。
(#゚∋゚)「フオオオ!!」
だが一歩後ろによろめいただけで男はすぐに持ち直した。
獣のように吠えると、唇の縁からしたたる血が派手に飛び散る。
(#゚∋゚)「チマチマと細けぇ技を使いやがって! 文系はこれだから嫌いなんだ!」
ξ;゚听)ξ(あんま効いてないな。もっと強力なカウンターを取らないと……)
男のつま先が跳ね上がった。
こちらの顎への蹴り上げが迫ってくる。
- 35.
( ゚∋゚)「ゴルァアア!!」
ツンはそれをすかさずバック転でかわすと、男は飽きもせずまっすぐに突っ込んできた。
ξ ゚听)ξ(ここだわ!)
男はこちらに抱きついて動きを止めようとしたのだろうが、ツンはバック転の勢いを生かしてもう一度
体重を後ろに移してそれから逃れた。
しかし今度は両手で地面を掴まず、空中で一回転する形でつま先を相手の顎に跳ねあげる。
サマーソルトキックだ。
( ゚∋゚)「へごっ」
相手の頭を刈り取るかのごとく跳ね上がった足は男を見事に捕らえた。
瞼の裏で火花が飛び散る。
視界は上へ上へと昇って行き、空が見えて、それから自分の背後の風景が逆さまに見えた。
- 36.
とうとう地面が近づいてくる。
( ゚∋゚)(なんだこりゃ)
蹴りにザックリと切られるようにして彼の体は跳ねあがり、一回転してうつ伏せに地面に落ちたのだ。
ξ ゚听)ξ「フウウウ……」
ツンは蒸気のように呼気を吐き出した。
体から立ち上る熱気に身を焦がされそうだ。
ξ ゚ー゚)ξ「どんなもんだい」
l从・∀・ノ!リ人「うむ。上出来なのじゃー」
(;゚∋゚) ゼェーゼェー
倒れていた男が膝立ちになると、ツンは構え直した。
- 37.
ξ ゚听)ξ「覚悟して降参することね! でないと泣くまで止めないわよ!」
( ゚∋゚) ニヤリ
ξ;゚听)ξ「ん? な、何よ、まだやる気!?」
( ゚∋゚)「お前……姿勢が悪いな」
不気味な笑みにたじろいだ瞬間、男の頭の周囲にかかっていた血の色の霧が膨れ上がった。
ツンの方に押し寄せて来て視界を塞ぐ。
ξ;++)ξ「うわっ!?」
l从;・∀・ノ!リ人「いかん、ツン! かわすのじゃー!」
ξ;++)ξ「えっ? えっ!?」
(#゚∋゚)「背筋を伸ばしてやろう! フンヌ!!」
妹者の声に反応した時にはもう、男の両腕がツンの腰に巻きついていた。
すぐに電話帳みたいに分厚い胸板がこちらの胴を押し潰さんと迫ってくる。
- 38.
真正面から相手に抱きあげられている形だ。
相撲で言う鯖折りの形である。
ξ;゚听)ξ「んぐっ!?」
( ゚∋゚)「油断したな、文系! せめて筋肉にうずもれて死ぬがいい!」
ξ;゚听)ξ「ひぎい! そ、それはすごくイヤだ!」
男は渾身の力を込め、ツンを胴体から両断せんばかりに締め上げた。
肺から空気が絞り出され、肋骨と背骨がギシギシと軋みを上げる。
体が逆エビの形にのけ反った。
ξ;><)ξ「んぐ……んぎぎぎ……!!」
縛めを逃れたのは左腕だけで、右腕は自分の胴もろとも相手の腕の中だ。
自由なその手で相手の顔面にパンチを入れまくるが、鼻血が出ても力が緩むことはない。
- 39.
( ゚∋゚)「無駄無駄無駄ァァ!! そんな10kgのダンベルだって上がらねえような細い腕で……」
男は背筋に更に力を込めた。
ツンにかかる圧力が跳ね上がり、体中の関節という関節が苦痛の絶叫を上げた。
( ゚∋゚)「俺の鯖折りが破れるかああ!!」
ξ;゚听)ξ「ひああああ!!」
ξ;><)ξ(せ、せめて自由なのが右腕だったら……くそおお!)
l从・∀・ノ!リ人「ツン、シルクハットを使うのじゃー!」
ξ;゚听)ξ「えっ?!」
l从・∀・ノ!リ人「その中は四次元的に別の空間と繋がってるのじゃー!
何か役に立つものが出てくるかも知れないのじゃー」
ξ;゚听)ξ「シ、シルクハット……シルクハット!」
自由な左手で頭の上からシルクハットを取り、逆さにして鍔を口に咥える。
- 40.
中に左手を突っ込んで探ると、手応えがあった。
ξ;゚ 3゚)ξ「こ、こへふぁ……」
唇を何とか動かしてハットの中を覗き、掴んだものの正体を確かめる。
これは使える。チャンスだ。
ツンは中からそのアイロンを引っ張り出すと、男の顔面に思い切り押し付けた。
ξ#゚听)ξ「ふんぬ!」
(;゚∋゚)「ふんぎゃあああああ!!」
ジューッという焼き肉屋で聞きなれた音がして湯気が上がり、縛めが突然解けた。
締め付けられていた内臓が一気に解放される感触がし、地面に倒れる。
ξ;´凵M)ξ「ウ、ウウ……」
l从・∀・ノ!リ人「今じゃツン、カロリーブレイクを使え!」
- 41.
ξ ゚听)ξ「ハッ!?」
地面を這い、慌てて間合いを拡げる。
その頃にはもう男の方も苦痛を脱してほぼ正気に戻っていた。
顔面にアイロン型の跡を残したまま、すぐそばの折れた電柱を抱え上げる。
( ゚∋゚)「やってくれたな! ホームランでお星様にしてやんぜゴルァ!!」
激情に任せて電流をフルスイングする。
空気が唸り声を上げて砂埃が巻き上がり、途中にあった郵便ポストがひしゃげて折れた。
だが肝心のツンの姿がない。
( ゚∋゚)「……ん!?」
壊れたポストが中身をまき散らしながら地面を転がってゆく。
電柱を振り終えた姿勢のままあたりを見回した彼は、その声で彼女の居場所をようやく理解した。
- 42.
ξ ゚听)ξ「カロリィィィ……」
自分の持っている電柱の先端だ。
片膝をつく姿勢でそこに構え、両手の指を組んで銃の形にしている。
一瞬でそこに飛び移っていたとは……
(;゚∋゚)「あ、やべっ……」
ξ ゚听)ξ「ブレイク!!」
指先に収束していたエネルギーの球体が膨張し、男に向けて放たれた。
( ゚∋゚)「うわあああああああああ!!」
男の体を包み込むと球は炸裂し、更に細かい光の粒子となって粉々に分解した。
一際強烈な光があたりを包み込む。
( ∋ )
- 43.
それが消えてなくなった時にはもう、頭の霧のかかっていない、一人の男がそこに倒れているだけだった。
アスファルトに降り立ったツンは全身の力が抜け、その場にへたり込んだ。
手は銃の形に組んだままだ。
ξ;゚听)ξ「えーと、終わったのかな……」
l从・∀・ノ!リ人「うむ。これでこいつも元に戻るじゃろ」
ツンは倒れている男の方に行った。
さっきまではバケモノじみていてイマイチ確信がなかったが、やはりクックルだ。
ξ ゚听)ξ「先生、何でこんなことに……」
l从・∀・ノ!リ人「血の霧をこの男に与えた奴がいるのじゃ。それは後で話すとして……
それにしても見事だったのじゃ、ツン! 初戦にしては頑張ったのじゃー」
ξ*゚ 3゚)ξ「あたしだってやる時ゃあ、やるんですよ」
無事の確認や警戒を促す声が煙の向こうでする。
- 44.
クックルが倒れて騒ぎが収まったので、警察やら何やらが様子を見に来たらしい。
l从・∀・ノ!リ人「面倒にならんうちに消えるのじゃ」
ξ ゚听)ξ「え〜!? 記者会見はー?」
l从#・∀・ノ!リ人「アホかお前は。ヒーローの正体は秘密にしとくもんなのじゃー」
ξ;゚听)ξ「えええ!? だってあんた、さっきアイドルになれるって……」
l从・∀・ノ!リ人「自分から正体をひらけかしちゃあミステリアスさが欠けるぞえ。
自然と人気が高まるのを待つのじゃー」
ξ;´凵M)ξ「なんか騙された気分……」
ツンは名残惜しげに手近な電柱に飛び乗った。
そこから近くの建物の屋根に飛び上がり、学校へ戻る。
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トイレで変身を解いて、何事もなかったような顔で廊下に出る。
- 45.
ξ;´ з`)ξ「いたたた! か、体中が痛い……」
l从・∀・ノ!リ人「スーツはダメージを軽減してはくれるが、ゼロにしてくれるわけではないのじゃー」
ξ ´ з`)ξ「ん?! おお、そうだ、こうしちゃおれんわい」
ツンは廊下を走って保健室に駆け込み、体重計に乗った。
メーターに表示された数字に目玉が飛び出しそうになる。
あれだけ上昇はしても下降はしなかった悪魔の数値が、まさか本当に減っているとは。
ξ*´ з`)ξ「ウッヒョー! ほんとに痩せてるううう!!」
l从・∀・ノ!リ人「この調子で戦い続ければ変身中の姿が本当の姿になる日も遠くないのじゃー。
更に町の平和も守れてしかも町の人に感謝される、わらわの目的も果たされる。
こんなオイシイ話はそうなかろ?」
電話勧誘並みに胡散臭い話だったが、ツンは体重が減ったという夢のような事実に完全に
のぼせあがっていた。
- 46.
満面の笑みで頷き、親指を立てる。
ξ ´ з`)ξ「うーん、暴力反対だけどこの話を見逃す手はないとみた!
あたし今日からハイパーメタボリックエンジェルとして頑張る!」
l从・∀・ノ!リ人「よしよし、そう言ってくれると信じてたのじゃ」
ξ ´ з`)ξ「……ところで妹者ちゃんの目的ってのは?」
意味ありげに笑い、妹者はツンの肩に腰かけた。
二時間目の終わりを告げる鐘が鳴り、各教室からざわめきが漏れ始めた。
l从・∀・ノ!リ人「まだ秘密なのじゃ。さあ、飯を食いに行くのじゃ」
ξ ´ з`)ξ「おっと、お昼休みじゃないですかー。
まあたまには学食もいいかな! エビフラーイ!」
保健室を出たところでクーと鉢合せになった。
- 47.
川 ゚ -゚)「あっ、ツン。お前こんなとこで何してたんだ? 脂肪吸引か?」
ξ;´ з`)ξ「えあっ!? えーと、ちょっと気分悪くなってて、寝ててー。
それよりご飯を食べに行きませう」
川 ゚ -゚)「気分悪いんだろ。それに弁当持ってきたんじゃないのか?」
ξ;´ з`)ξ「こまけぇこたぁいいんですよ!」
川 ゚ -゚)「クックル先生みたいな事言いやがって」
二人は連れ立って学生食堂へ向かった。
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一方その頃、ツンの家。
カーチャンは洗濯物を敷いたアイロン代の下を覗いたり、洗濯物の山の中を探ったりしながら、
しきりに首を傾げていた。
- 48.
J( 'ー`)し「……???」
ちょっと目を離した隙に、一体アイロンはどこへ行ってしまったんだろう?
つづく
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