/ ,' 3 「皆さんが静かになるまで5分かかりました」のようです 給食の時間 その1
8 名前:◆TR2vneJwo2 :2009/05/22(金) 18:07:23.25 ID:kx7uuC4C0
      

(*゚∀゚) 「あひゃ」


 千鳥足で、その部屋に入ると息も絶え絶え
 あたしは中央に置いてある椅子に体重を預けた。

 ギシリ、と椅子が軋む。


(*‐∀‐) =3 フーッ


 慣れた椅子の感触に安堵を覚え、一息つく。
 もう4年間も座っている椅子だ。よく体に馴染む。

 そう、4年だ。
 小学校に上がってあたしは昼休憩になると、
 毎日休まずこの部屋にきて、この椅子に座ってたっけ。


(*゚∀゚) 「皆勤賞、なんつってな」


 アヒャ。
 誰に言うでもなく、呟く。




14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 18:14:40.74 ID:kx7uuC4C0
      

 床には灰色の薄い防音カーペットが敷かれてて、
 壁も、模様もない防音仕様の殺風景なもの。


 部屋の四隅は、時計回りに
 金属製のドア、録音器具、アンプ、放送器具が占領してる。


(*゚∀゚)「相変わらず、メカ的だねーっ!」

 椅子に体重を預けながら、
 目の前の放送器具が備え付けられた机を撫でる。

 側面や引き出しには、シールを綺麗に剥がし損なった跡が残っている。
 これはあたしと、先生との激戦の跡だ。


 殺風景なこの部屋に、すこしでも可愛さを与えようと
 放送机にキャラクターもののシールを貼りまくったあたし

 と、それに対抗し、シールを剥がしにかかった、ちんぽっぽ先生。
 貼るあたし、剥がすちんぽ先生、激戦は何年も続いた。


 その結果が、この机の跡なんだろう。




17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 18:21:04.06 ID:kx7uuC4C0
          

(*゚∀゚)「アヒャ、傷だな、きずーっ!」


 机をなでていると削れている箇所があり、指が引っかかった。


 机の角が微妙に削れているのは、 どうしても剥がれないシールがあって、
 已む無くカッターナイフを用い、削り取った所為だろう。


 削り取るくらいであれば、
 シールを貼ったままの方がいいと、あたしは思うのに。

 
(*‐∀‐)「アヒャー、真面目なちんぽ先生らしいさねー」

 
 生真面目で、不器用な先生らしい。

 でも、そういう所を密かに尊敬していた。
 口には、絶対ださなかったけど。


 一欠片の可愛げも無い部屋だけど、
 思い出がつまったこの小さな部屋があたしは大好きだ。




21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 18:29:52.35 ID:kx7uuC4C0
       

(*‐∀‐)「………」


 机の傷を、指の腹で撫で撫でしい
 あたしは、この放送部室で起こった四年間を思い起こす。

 
 小学校に入り、昼休憩時DJをこなす
 かっこよくて、かわいい放送部のおねーさんに憧れ、直ぐ放送部に入部したあたし。

 
 熾烈な、レギュラー争い。
 始めは中々放送DJ担当させて貰えなくって悔しい想いもした。

 あたしより、喋りが面白くてかわいい先輩に
 憧れて、尊敬して、嫉妬して。ケンカして、仲直りして。

 ようやくお昼休みの放送の
 担当DJにしてもらった時は嬉しくって嬉しくってないちゃったっけ


 体育祭での実況。
 暴走しすぎて顧問のちんぽ先生に叱られたなあ。


 夏には同じ放送部メンバーの
 わかんないです君やワカッテマス君、ちんぽ先生と合宿へ行ったりもした。




28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 18:38:03.18 ID:kx7uuC4C0
        
 そんな、思い出のたくさん詰まった部室だからこそ。
 あたしは、死に場所に此処を選んだんだろう


(*;‐∀‐)∴: グフッ

 吐血。

 痛みに驚き肘掛けに置いた拳を、きつく握る。
 お腹を見ると、包帯からまたドス黒い血が滲み出ていた。

 そのキズを見て、あたしは再度思う。

(*;‐∀‐)「あぁ、やっぱりつーちゃんはここで死んじゃうんだろうねっー……」


 悲哀の感情と鈍く響く痛みに刺激され、胸が苦しかった。

 あの惨劇、朝礼であたしは荒巻校長の暴走から、紙一重で逃れ
 校内に逃げおおせていた。

 でも、逃げる際荒巻校長の攻撃がカスっていたせいで、
 腹に軽く穴が開き、血がとまらなくって、とっても痛くって。

 保健室へ忍び込み、保険の授業で習った拙い記憶をたどって
 気休め程度の治療をほどこしたんだけど、やっぱり無駄だった。


 おそらく、きっと、あたしはもすうぐ死ぬ。




34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 18:45:15.67 ID:kx7uuC4C0
  

(*;>∀<)「く、くぅううう〜......」


 キリ、キリ、キリ……

 軋むような痛みが、あたしを襲う。
 鎮痛剤は飲んだんだけど、定期的に痛みと熱に襲われる。


 グニャリ、あわせて視界も歪む。

 或いは、部屋全体が歪んでいるのかも知れない。


(*;‐∀゚)「ま、そんな些細な事はこの際どうでもいいさっ」


 あたしは、もうすぐ死ぬんだから。
 でも、死ぬ前にしたい事が一つある。


(*;‐∀゚)「昼休みの、放送......」


 そう、最期の放送をしに、あたしはここに来たんだ。




38 名前:いつもと同じくながらなので投下遅いです、すみません クックルまとめてるはずです:2009/05/22(金) 18:56:13.96 ID:kx7uuC4C0

 ポォン。

 放送器具のスイッチを入れる。

 機械オンチで、TVのリモコンくらいしか扱えないあたしでも、
 放送器具の扱い方は身に染みていた。

 時計を見る。

(*゚∀゚)「さって、放送まであと3分さねーっ」

 ジクジクジク、お腹が痛む。
 ドクドクドク、血は止まらない。

(*;゚∀゚)「ぐっ、ぬぬ」

 それでも、あたしは放送部DJなんだ、
 痛みを苦しみを電波にのせてはいけない。


(*∩∀<)∩ パァーン

 あたしは自分の両頬を叩き、気合を入れる。
 大丈夫、だってあたしはDJなのだから


(*゚∀゚)「放送30秒前!さあ!いくよ!」

 あたしは震える手で、マイクの音源ボタンを押した。




43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 19:06:26.57 ID:kx7uuC4C0
   

(*゚∀゚)『さあさあ、皆さんこんにちはだよっ!
     パンデミックでも、戦争があっても、虐殺があっても休まず営業!
    みんなの昼休憩のお楽しみ放送部の放送だよ!』


(*>∀<)『今日もみんなのお相手は、もちもちもっちりつーおねーちゃんだぞー』


(*゚∀゚)『みんな!美味しいご飯食べてるかなー?』


(*゚∀゚)『給食...はきてるのかな、ちょっとあたしはわかんないんだけどw』


(*゚∀゚)『え?食が進まないって?』


(*゚∀‐)ゞ『強制グロ画像を、あれだけ壮絶にみせられたんだもんねー気持ちはわかるよっ』


(*゚∀゚)『ほんと、あの時の荒巻校長すごかったねー
     三国無双って感じ!見てたら思わず心の中で言っちゃったよっ』


(*゚∀゚)b『校長は今日も絶好調!なぁ〜んてね!』

(*゚∀゚)『え?寒いって?うるさいよ!文句言うならあんたがもっと面白い事いいなよっ!』




48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 19:14:24.31 ID:kx7uuC4C0
       


(*゚∀゚)『そういえばおねーさん!最近ね〜…』

 
 ズキンッ、喋ると横隔膜を動かすせいか
 お腹のキズを刺激して、更に痛みが増すのを感じた。

 

(*;゚∀゚)『〜〜で、それで〜......これが本当の大根おろし!なんちゃってw』


 血塗れになっても、痛みで顔が歪んでも、滝のように汗がでてもいい。
 

(*;゚∀゚)『またスベッてる?おかしいなー、あたしとした事が』


 でも、視聴者に苦しみを悟られてはいけない。
 苦しみを痛みを声にだしてはいけない。
 

(*;>∀<)b『今朝とろろとなっとうとおからを食べてきたせいだよっ!きっと!あたしは悪くないさっ!』


 ラジオ上では、
 あたしは元気なおねーさんDJを演じなければいけない。




53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 19:21:34.23 ID:kx7uuC4C0
      
 誰かに届いてるんだろうか、この放送は。


(*;゚∀゚)『あれ?言ってる間に10分経ったね!そんなに喋った気しなかったのにさっ!
     この放送は毎回15分だから、あと5分かあ』


 ―――きっと、届いている。


(*;‐∀‐)『あと5分ねー、おねーさん何を喋べろっかなー』

 
 自慢の腹黒妹しぃだって、評判の生徒会だって
 校長よりダンディと噂の教頭だって、この小学校にはいるじゃないか。

 あんな校長に全員やられるはずがない。
 だれか、生き残っているはずだ。


(*;‐∀゚)『そだね〜〜』


 その生き残った人たちが、校長を倒してくれると信じている
 信じているから、あたしはラジオスターとなるんだ。


(*^∀^)『お別れの、挨拶でもしよっか』




59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 19:27:54.07 ID:kx7uuC4C0
     
  
ヾ(*゚∀゚)ノ 『あ、いやいや?勘違いしないでおくれよっ!?』

 あたしの声で元気付けられるでろう人がいるなら


(*゚∀゚)『そういうんじゃなくて、ほら?あたし人気DJじゃん!
    ひっぱりだこ的な感じじゃん!』

 それだけで、この放送の価値はある


(*゚∀゚)『VIP放送部以外にも、活動広げようとおもってね〜』

 だから、精一杯演じよう、ラジオスターを。


(*゚∀゚)『こんな校内放送じゃ収まる器じゃないって気付いてねっ!
    FM802的なとこにいこうかと画策してるんだよっ!』


(*>∀<)『メジャー宣言!みたいな!』


(*゚∀゚)ゞ『え?裏切られた気分だって?』

(*゚∀゚)『まあまあ、そう言わずにさー、未来に羽ばたくつーちゃんを、どうか応援しておくれよっ!』




73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 19:35:56.56 ID:kx7uuC4C0
    
(*‐∀‐)(あーあ、なりたかったなあ......本当にプロのDJ)


 もう手の届かない夢なんだけど。

 身振り手振り、動作をつけて喋っていたせいか、
 内臓が、包帯を圧迫するまで、飛び出てきてしまってるみたい。

 もう、本当に、長くないんだろうなあ。

 痛みは何故か収まってきたが、目が霞む、喉が渇く、目が霞む。



(*゚∀゚)『と、言う訳で今日でつーちゃん放送は最終回!』


(*゚∀゚)『この四年間聞いてくれていた皆ありがとうっ!
    あたしが居なくなっても、寂しさでないたりすんなよっ!』


(*゚∀゚)『あたs―――』


(*;‐∀‐)∴: ブォフォ




90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 19:45:05.17 ID:kx7uuC4C0
     
 しまった。
 シメの途中だったのに、ガマンできずに吐血してしまった。
 視聴者にいらぬ心配をさせる訳にはいかない。 言い訳をしないと――

(*;‐∀‐)『う...』

(*;゚∀゚)『っと、ごめんねークシャミしちゃったよっ!レディーなのに恥ずかしい!』

(*;゚∀゚)『週末にね!大阪民国にたこ焼き食べに行ったから
     その時今話題のdフルエンザもらってきちゃったかもだねっ!』

(*;゚∀‐)ゞ『え?マスクをせず聞いてたって?』

(*;>∀<)『そりゃあんたが悪い!つーちゃんからの最期の土産だと思って
     精々くるしんじゃって!』

 なんとか、ごまかせたかな。
 あたしは演じきれたのかな、ラジオスターを。

(*;゚∀゚)『っと、いう訳でエンディングだよっ!』

(*;゚∀゚)『今日のエンディングテーマは、
     最近おねーさんがお風呂上りによく聞いてる名曲を紹介するよっ!』

 エンディングテーマ、この曲を紹介すれば、DJとしての仕事は終わりだ。

(*;゚∀゚)『じゃあ、名残惜しいけど、―――――それでは、聞いちゃってください!
     おねーさんからきみたちに送るラストナンバー! the band apart で‘ STEP UP ’―』




120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 19:57:11.92 ID:kx7uuC4C0
     

 ___∧,、____   ブツン



(*; ∀ )「う、うう......」


 放送は、終わった。
 もう目も見えない、耳も聞こえない。

 傷口から包帯を染み出流れ出た、
 あたし自身の血が肌に触れて、あったかくて、寒い。


(*;∀;)「だれかに、伝わったかなあ、聞いていてくれたのかなあ」


 あたしの気持ちは、電波にのせた。
 精一杯、伝えきったつもりだ。

 あたしはここで死んでも、その気持ち受け取ってくれた人がいるなら


(*;∀;)「あたしは、そこにいるよね―――?」




126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/22(金) 19:59:59.34 ID:kx7uuC4C0
  

 プツン、再度何かが途絶える音が響く。


(* ∀ )



 ラジオスターは眠りにつく。


 確かな、充足感を胸に。

 内に秘めたる思いを電波にのせて。



 ラジオスターは、
 電源の入っていないマイクを抱え込み、静かに眠る。眠る。眠る。





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