/ ,' 3 「皆さんが静かになるまで5分かかりました」のようです 休憩時間
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 16:39:47.47 ID:bwl69lhe0
-
/ V 3「……」
血に塗れ、地に臥し。
魔人は笑いながら、昔の事を思い出していた。
/ V 3(血だらけで、地面に転がされるなんて、あの時以来じゃのう)
あまりの失血の多さに、意識が朦朧とする。
自らの血だまりが体に触れて、寒くて暖かい。
そう、あの頃と同じ
50年前―――
荒巻4歳の頃
/ ,' 3 「………」
魔人は、生まれた時から魔人という訳ではなかった。
- 162 名前:>>149 キニスンナー おれは絵貰えてすげぇうれしかったし、励みになったよ:2009/05/19(火) 16:44:36.32 ID:bwl69lhe0
-
/ ,' 3 「……」
4歳の荒巻は血まみれになって、地面に転がっていた。
頭から、足から、腕から血は夥しいほど流れ出ていたが、痛みは感じなかった。
/ ,' 3 「……」
床に転がりながら、荒巻は考える。
/ ,' 3 「ワシは、どうして生まれてきたんじゃろう…」
返答はあるはずもなく、
呟きは夜空に吸い込まれていった。
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 16:48:58.18 ID:bwl69lhe0
-
マイオスタチン関連筋肉肥大という病気がある。
筋肉の肥大を抑制するタンパク質が発生しなくなるという、特殊な病気。
この病気にかかると、筋肉が異様なまでの発達を見せ、肥大化するという。
過去にドイツで 生後6ヵ月後には立ち、
4歳で50kgのダンベルを上げたという事例まで挙がっている。
生まれる確立は40,000万分の1という悪魔の病気。
荒巻は、修羅に見入られたていたのか、
その病気にかかり、この世に生を受けた。
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 16:51:45.21 ID:bwl69lhe0
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/ ,' 3
ノ'⌒` ´⌒ヽ
( ,、 ゚ 人 ゚ノ'ヽ
/( ノヽ ミ 仝ミ/>' 〉
\`ξ~~~~~~~ヽ´
|__/__|
( , ノ( 、 ノ
| / | /
(__) (__)
生まれながらにして激マッチョな荒巻。
更に、無痛症という病気にも罹っていた。
生まれついての修羅体質。
闘の神に魅入られた、男。
両親は、あまりにマッチョなわが子を恐れ山に捨てた
- 181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 16:58:48.60 ID:bwl69lhe0
-
/ ,' 3 「………」
生まれた日から厚い筋肉に覆われていて、
さらに痛みも感じない完全ボディ。
しかし、その分厚いボディの中にいるのは
一般人と変わらぬ、ただの赤ちゃんである。
愛されたい、抱きかかえられたい、両親の温もりを、知りたい。
どんな赤ん坊でも与えられる温もりを知らぬまま、荒巻は山へ捨てられた。
/ ,' 3 「………」
悔しかった、哀しかった、イラだった。
/ ,' 3 「オ、オギャ、オギャー!!」
そんなぶつけどころのないような感情をこめた心からの叫び。
しかし山中では、赤ん坊の声など誰の耳にも入らなかった。
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:03:23.21 ID:bwl69lhe0
-
山に捨てられて四度目の夜がきたとき。
/ ,' 3 「………」
荒巻は泣くのを止めた。
どんなに世の中を恨んで、声を大にしても届かないし響き無い。
声ではだめだ、もっと直接的な―――
そう、例えば、拳で訴えれば届くかもしれない。
それなら、無視しようがないじゃないか、そうだ、きっとそうだなんだ。
/ ,' 3 「………」
そこまで考えた時、荒巻は学んでもいないはずなのに
不意に背に死を感じ取った。
ああ、そうか、ここでおれは死ぬのか
そう思った時。
- 195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:07:37.36 ID:bwl69lhe0
-
( ゚д゚ ) 「オイコラ、大丈夫かクソガキ?」
/ ,' 3 「………」
救ってくれたのは、一人の武闘家だった。
どうやら、自分の特異体質の話を聞き
鍛えれば強くなり、それを利用できると思ってきたのだろう。
( ゚д゚ ) 「ハハハ!本当は二日前に話を聞いてたんだが
マリオパーティが面白すぎてとまらなくてな、来るのが今日になってしまった
いやでも、生きててよかったぜ、これからよろしく頼むぜ?修羅さんよお」
ゲスな男だった。
その日からミルナとぼくの共同生活が始まった。
- 198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:11:41.17 ID:bwl69lhe0
-
それから四年。
( ゚д゚ ) 「てめぇ!なにみてやがんだよ!」
/ ,' 3「いや、こっちをみてるのはミルナさんじゃ......」
( ゚д゚ ) 「うるせー!酒買ってこい!!」
ガシャーン
僕の頭に一升瓶が叩きつけられる。
/ ,' 3「う、あ…」
( ゚д゚ ) 「ほらほら、どうせ痛みもかんじねーしマッチョじゃねーか
さっさと行ってこいよ!死にたくねぇだろ?」
/ ,' 3「そ、そんなむちゃくちゃな…」
( ゚д゚ ) 「あ?口答えするのか?なにみてんだてめー?」
/ ,' 3「だ、だからこっちをみてるのミルナさんじゃ…」
( ゚д゚ ) 「おれさまに逆らったらどうなるか、おしえてやろうじゃねーか?」
- 203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:15:22.60 ID:bwl69lhe0
-
僕の特異体質を利用してうまく鍛え強者に仕立て上げ。
自分の営んでる道場の宣伝として利用しようと、
僕を拾ったこの男理由が理由なだけに、仕打ちがひどかった。
痛みを感じないんだろ?
って理由でビール瓶で頭を叩かれ
マッチョなんだろ?
って理由で乳首ピクピクを長時間させられた。
たしかに、体は痛まなかったが、
/ ,' 3「……」
心が、ひどく痛んだ。
- 210 名前:>>162に戻る:2009/05/19(火) 17:21:59.90 ID:bwl69lhe0
-
そして、今日もこれだ。
こっちを見るなという理不尽な理由でボコボコにされた。
/ ,' 3 「ミルナさんがこっちみてるじゃないかのう……AA的な意味で」
あいつはおれを、サンドバックとしかみていない。
いや――
それなら、まだマシなのか
両親は、おれをバケモノとしか見てくれなかった。
ミルナと暮す道場はすごい山奥にあるので
おれは両親かあいつしか、人間にあったことがない。
誰にも望まれず、必要とされない毎日。
/ ,' 3 「ワシは、どうして生まれてきたんじゃろう…」
もう一度、夜空に向かって呟いた。
星がとても綺麗な夜であった。
- 211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:26:26.94 ID:bwl69lhe0
-
/ ,' 3 「あ……」
今日は月が紅いのか。
星を眺めていると、そういう事に気がついた。
/ ,' 3 「近くで、見てみよう……」
荒巻は孤独感に苛まれると、星や月を見る事にしていた。
月を自分が見つめているときは、月もこちらを見つめてくれているのだ。
それが、少し嬉しくて。
/ ,' 3 「……」
ぽてぽてと山中歩を進める。
足に履物はなく、白い素足で土を踏む。
身に纏った白い道着は薄汚れ、
所々擦り切れたり、穴が空いたりしている。
髪も灰色にくすみ、表情には苦労が滲み出ていた。
- 214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:34:03.64 ID:bwl69lhe0
-
/ ,' 3 「そうか今日は満月か」
独特の香りが山中すべてが有していた。
満月の日だけ嗅げる、その匂い。
荒巻はそれを満月の香りと呼んでいた。
地面を月光が、冴え冴えと照らしていた。
空を見上げる。ちょうど真上に月が見える。
上弦の半月はいつもより大きく感じるものである。
空気にまざりものがなく、
震えを覚えるほどの透明度と彩度でもって月は其処にいた。
山中はすでに真っ暗で
昼を謳歌した野鳥も、身を潜めており。
森の中荒巻は一人だった。
- 217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:35:21.20 ID:bwl69lhe0
-
いや
正確には
2人。
/ ,' 3 ○
月と荒巻で、二人。
話相手のいない新巻は、
嫌な事があるとよく此処へきて、月と喋っていた。
- 220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:39:01.41 ID:bwl69lhe0
-
/ ,' 3 「聞いてくれんかのう…?」
/ ,' 3 「ははは、そういわず」
/ ,' 3 「ミルナのやつが、またワシをイジめるんじゃ」
/ ,' 3 「そうじゃそうじゃ!こっちを見るなとかイチャモンつけおって
AA的に考えて、見てるのはそっちじゃろうに」
/ ,' 3 「そうじゃのう…たしかに、そうじゃ」
/ ,' 3 「いやいや、パフュームの真ん中ややっぱりゴリラじゃよ
曲がよくてもゴリラっはゴリラじゃ」
/ ,' 3 「ほっほっほっ…、そう怒るなよ、お主も好きものじゃなあ」
/ ,' 3 「え?せんよ?わしせんよ、そんな汚れキャラじゃないしのう」
- 223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:41:10.69 ID:bwl69lhe0
-
/ ,' 3 「わかったわかった、一回だけじゃぞ?」
/ ,' 3 ピクピク
/ ,' 3 「ほら、ご覧の通り…え?もうせんせん!わしはせんぞ
一回だけって言ったしのう」
/ ,' 3 「いやいや、ピクピクが甘いって、お主になにがわかるんじゃ
マッチョが一日中乳首ピクピクいわれてると思ったら大きな間違いじゃぞ?」
/ ,' 3 「何をおどろいてるんじゃ!当たり前じゃろう!
お主わしがひまさえあれば乳首ピクしてるとおもっておったのか!無礼なやつじゃ!」
/ ,' 3 「まったくもう…」
- 226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:45:43.48 ID:bwl69lhe0
-
/ ,' 3 「しっかし、どうするかのう…もうミルナにイジめられるのは……」
/ ,' 3 「え?流石にそれは無理じゃろ」
/ ,' 3 「いや、たしかにそうじゃが…」
/ ,' 3 「…………」
/ ,' 3 「なるほど、キミはそう思うのじゃな?」
/ ,' 3 「ミルナを殺せと?そう言うんじゃな?」
/ ,' 3 「まあ……そうじゃな、キミがいうんじゃ仕方ないのう」
/ ,' 3 「あ、いや、そういう意味じゃないぞ?あくまで本心じゃ」
/ ,' 3 「奴を徹底的に痛めつけ、殺す――」
/ ,' 3 「了解じゃ、なんの、君のいう事なら、なんでも聞くよ、わしのことを想っての進言じゃしの」
- 229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:48:45.40 ID:bwl69lhe0
-
そうして荒巻は、
その曇り空で覆われていた森を抜け
家に戻ったと同時に、
その恵まれた肉体をもってミルナを殺害した。
初めて人を殺したはあの時だった。
殺人という童貞をすて、自由を勝ち得たあの夜。
/ V 3「くお、うぉおおおお......」
流石兄弟のコンビネーションの前に倒れ
地に伏せる荒巻はあの夜の事を思い出していた。
- 232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 17:54:52.05 ID:bwl69lhe0
-
(´<_` )「さあ、どうする荒巻あまり痛めつけないように捕獲してこいと言われているんだが」
( ´_ゝ`)「降参するなら今だ、手当てもしてやろう」
/ V 3「………」
/ V 3「月じゃ、月が見えおる......」
あの時と同じ、紅くて丸い月が。
(´<_`;)「は?今真昼間だぞ?」
/ V 3「何をいうておるか、はっきり見えるじゃないか」
/ V 3「おお...月さん月さん、聞いてくだされ」
/ V 3「こいつらが、イジめおるんですじゃ」
/ V 3「え?なになに?ははは、ミルナではありませんのじゃ、あいつはもう死んだじゃないですか」
(;´_ゝ`)(なんだこいつ、独りでぶつぶつ言い出したぞ…)
- 236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 18:00:02.51 ID:bwl69lhe0
-
無論、月など見えるはずがない。
真昼間の教室内である。
(;゚∀゚)「……」
/ V 3「そうなんじゃ、年寄りをよってたかって…」
/ V 3「え?違う違う、月の方そればっかりじゃのう」
/ V 3「うーむ、乳首をピクつかせたいのは山々なんじゃが…ははは」
/ V 3「ハズかしながら、こいつらに圧倒されておるんですじゃ、疲労がたまっておってのう」
/ V 3「え?まあ、たしかにそれをすればお見せできるんじゃが…」
/ V 3「ふふふ、月の方がそう申すんであれば、仕方ないのう」
/ V 3「わかったわかった......ミルナの時のように、進言に従いますじゃ」
/ V 3「此処にいる全員を」
/ V 3「 全 殺 し に す れ ば い い ん じ ゃ ろ ?」
- 238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 18:03:06.71 ID:bwl69lhe0
-
――――ヒュ
(´<_` )「ぇ?」
頬を、風が撫でた。
と思った。
しかし、次の瞬間感じたのは、激痛。
(´<_`;)「いたッ!?」
次いで、ポトリと左の耳が、地面に落ちる。
(;´_ゝ`)「弟者!」
- 242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 18:06:42.04 ID:bwl69lhe0
-
(´<_`;)「な、なにがおれを!?」
噴水のように溢れ出る血。
痛みを知覚したとき、背後の獣がいるのを感じた。
/ V 3「惜しいのう…かすっただけか、
これだから目が見えないのは不便じゃのう…」
(´<_`;)「なっ―」
振り返ると、そこには荒巻。
(´<_`;)(バカな!おれの目で終えなかっただと!?)
――――驚愕は理解に変わる。
目の前の荒巻はかつての荒巻と同じだが、違う。
頭でなく、本能で理解する。
驚愕を理解し恐怖に変わる。
- 243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 18:10:31.32 ID:bwl69lhe0
-
/ V 3
――四足獣。
手と足を地面につけ、四足の筋肉のバネを利用し、飛び上がる.
荒巻の構えはそれであった。
構えと言っていいものか、構えなどと言った歪な物では、ない。
自然が、野生が造り上げた悪魔の肉体。
それを生かすには、人間用に作られた拳法など、枷に過ぎぬのだ。
悪魔から与えられた肉体生かすのなら、これ
――四足獣の構え。
(´<_`;)(厄介な)
スピードで人間が獣に勝てる道理はない。
弟者は舌打をしながら、迎撃用の構えに身を改めた。
- 246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 18:13:00.25 ID:bwl69lhe0
-
/ V 3
――ぴしり。
荒巻の肉体が、さらに歪な物へ、わけのわからぬ舞台へ引き上げる。
表情すらない顔で、荒巻はこちらを見ているのであった。
/ V 3「ぐぉおおおおお!!!」
(´<_`;)「ぐう…」
(;´_ゝ`)「弟者!」
その重なった雄叫びは、
百獣すら平伏するであろう迫力と強さを示していた。
びりびりと皮膚を突き刺す感覚に死を覚え、弟者は一瞬身動きがとれなくなった。
その隙を逃すわけがなく。
- 251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 18:16:49.28 ID:bwl69lhe0
-
/ V 3「うがあああああ!!」
弟者に向かい、飛び掛った。
魔人は、生まれた時から魔人という訳でない。
痛みを感じぬからと言って、
筋肉に愛されたからといって魔人と成る訳ではない。
しかし、心が壊れ、更に想像できぬほどの力を有する場合
初めて、その人間が
魔人と化す事が、できるのである。
-
-
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