トラツグミは知りたいようです 四話
90 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:16:02 ID:b0NmTdBYO

第4話『鵺が啼く』


ブーンが聞いた町の方向へ歩く。
一泊の野宿の後、町が見えてきた。

( ^ω^)「何でも知ってる情報屋さんがいるらしいお」

从 ゚∀从「へー…」

('A`)「金はあるのか?」

ξ゚听)ξ「ほとんどない」

('A`)「詰んでね?」

从 ゚∀从「なるようになる。そろそろあの服着るか」

('A`)「だな」

前の村で貰った服で体を隠す。
これで一応普通の人間には見える。




91 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:17:14 ID:b0NmTdBYO

着いた町は賑やかだった。
たくさんの人が行き来している。
いくつかある店のうち宿に入って受付に向かう。

从 ゚∀从「四人でーす」

(´・ω・`)「はいはい、一部屋で宜しいですか?」

从 ゚∀从「はい」

部屋の鍵を受け取る。
従業員がツンに目を向けた。

(´・ω・`)「あの、そちらの方は」

ブーンの背中でツンが体を固まらせる。

ξ;゚听)ξ「はい」

(´・ω・`)「足を怪我でもされてるんですか?よければ医者を紹介しますが…」

ξ;゚听)ξ「あ、いや…結構です。昔からですんで!」

(´・ω・`)「失礼しました。それではごゆっくり」




92 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:18:27 ID:b0NmTdBYO

部屋に入るなり、ツンがため息をついた。

ξ;゚听)ξ「危なかった…出かけるのは控えるわ、私」

('A`)「それがいいかもな。…さて情報屋に行くんだが、誰かツンについててやらないと」

( ^ω^)「じゃ僕が残るお。毛だらけで僕も危ないし」

実際、さっきまでブーンはフードを深く被っていた。
体毛や鼻をみられてもいけない。

从 ゚∀从「実際俺も羽とか落としたら怪しまれるよな…」

('A`)「俺だって眼と腕をよく見られたらアウトだ。全員綱渡りだろう」




93 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:19:27 ID:b0NmTdBYO

騒がしい町を歩く。
見たことのないような物もあり、ハインが目移りしているのが分かる。

('A`)「なんか町のずっと奥らしいぞ」

从 ゚∀从「あれか?」

ハインが指差しているのは、ひっそりと佇むぼろぼろの小屋。
今にも崩れそうに見える。

('A`)「怪しいな、行ってみるか」

フードを被りなおし、そこに向かった。




94 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:20:11 ID:b0NmTdBYO

ドアを開けると、一人の男が座っていた。
部屋の中には物が少なく、生活感はない。

/ ゚、。/「何だい」

('A`)「あんた、情報屋さん?」

/ ゚、。/「そうだよ。何が知りたい?」

案外簡単に教えてくれるようだ。

('A`)「北の研究所の移転先」

/ ゚、。/「ふむ」

手元の本をぱらぱらとめくる。
やがて頷き、言った。

/ ゚、。/「まずは情報料を頂くよ」

先払い、ということらしい。




95 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:20:52 ID:b0NmTdBYO

('A`)「いくらだ?」

/ ゚、。/「そーさなぁ…君達、特殊だからな」

从;゚∀从「!」

見抜かれている。
つい身構えた。

/ ゚、。/「君達の情報をおくれ」

('A`)「情報ってどんなだ」

/ ゚、。/「名前と……その服を脱いでくれたらそれでいい」

('A`)「俺はドクオ。こっちがハインだ」

言って、厚い上着を脱いだ。
奇妙な肌と黒い翼が露になる。

/ ゚、。/「…もういいよ、しまって」

从 ゚∀从「驚かないな」

/ ゚、。/「研究所の事は聞いてるからね」




96 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:21:50 ID:b0NmTdBYO

/ ゚、。/「どうやら研究所の主要メンバーは機材と験体を持って海を渡ったらしいよ」

急に言われて戸惑う。
慌てて頭に入れた。

/ ゚、。/「南の大陸に行ったとか。そこからは知らない」

('A`)「そこにはどう行けば?」

/ ゚、。/「ん、船かな。……ただ、身体検査があるからお勧めはしない」

/ ゚、。/「ここから西へ向かうと小さな漁村がある。密航しかないね」

('A`)「分かった。ありがとう」

/ ゚、。/「どうも、気をつけて」




97 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:22:54 ID:b0NmTdBYO

外に出るなりハインが深呼吸をした。

从 ゚∀从「何か疲れたな…」

('A`)「だな。……何だ?」

何やら町の方が騒がしい。
と、誰かがこちらに走ってきた。

深くフードを被っていて、顔はよく分からない。

('A`)「何だよ?」

(   )「…お前…!」

向こうから叫び声が聞こえてくる。

(   )「くそっ、どけ!」

(;'A`)「痛っ」

ドクオを突き飛ばして走り去っていった。




98 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:23:55 ID:b0NmTdBYO

また人が走ってきた。
今度は中年の男。

(;`・ω・´)「逃がしたか…!」

('A`)「あの、今のは」

(`・ω・´)「泥棒だ!妙な姿でな、よく分からん!」

('A`)「そうですか…」

悪態をつきながら男は去って行く。
男の背中が見えなくなると、また泥棒が戻ってきた。

从 ゚∀从「……何の用だよ、大声出すぞ」

(   )「お前ら…研究所の奴だろう?」

(;'A`)「…」

(   )「なら、今夜は寝るなよ…」




99 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:24:41 ID:b0NmTdBYO

('A`)「何だ、どういう」

(   )「じゃあな」

ドクオに質問の時間を与えず、泥棒は走り去って行った。

从;゚∀从「…ま、帰ろう」

('A`)「…ああ。にしても、うまく情報が手に入った」

从 ゚∀从「あとは今夜か」

('A`)「何だろうな…」

帰ってブーン達に聞くと、泥棒は向かいの青果店を襲っていたらしい。

ξ゚听)ξ「夜なら、またハインは出られないわね…」

从;゚∀从「まあ、俺は宿で待機するよ…」




100 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:26:16 ID:b0NmTdBYO

――――――――――――

( ‐ω‐)

夜も更けてきた。
皆寝ることもできずに、中途半端にまどろんでいる。

異変は突然だった。

『―――――――――!!!』

大きな音に全員が飛び上がる。

(;'A`)「今のは…あっちの山か?」

ξ゚听)ξ「咆哮かしら。何にせよ行きましょう、きっとこれよ」

( ^ω^)「眠いおー…」

('A`)「どうせキマイラだ、ちゃっと終わらせて寝ようか」

三人がそろそろと宿から出、近くに見える山へ向かう。

从 ゚∀从「いってらっさーい」

从 ゚∀从「…」

从 -∀从「んー…」




101 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:27:01 ID:b0NmTdBYO

从 -∀从

彼らが出てしばらく。
ふと何か変だと気付いた。

体が、動かない?

从;゚∀从「誰だ!」

「薄情な奴らだな…全員行くか、普通」

見えない。
明かりがいつの間にか消されている。

从;゚∀从「…何だ、縛られてんのか?」

「そうだよ。皆は今頃相棒に夢中だ」

从 ゚∀从「お前、昼間の泥棒か」

「大概寝静まってる時間とは言え、ここは危ないな。…動くか」

体が持ち上げられるのが分かった。
どうしようもない。




102 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:29:10 ID:b0NmTdBYO

〈::゚−゚〉

(;'A`)「こいつか?」

山の開けた所にいたのは、人。
大柄で無表情だ。

〈::゚−゚〉「ガッ」

徐にドクオに拳を振ってきた。
すんでのところで回避し、事前に購入していたナイフを当てる。
が、弾かれた。

(;'A`)「…なんだ、固いぞ」

ξ;゚听)ξ「牙も通らない」

再び突き出された拳をブーンが全身で受ける。

(;^ω^)「お゛っっ!!…石かお、この感じ…?」

(;'A`)「何だ、それ?」




103 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:30:35 ID:b0NmTdBYO

(;^ω^)「答えろお!お前はキマイラかお?」

〈::゚−゚〉「ギ」

(;'A`)「昼間と比べて随分無口になったな」

ξ゚听)ξ「でも研究所って言ってたんならキマイラでしょ?」

('A`)「石は無機物だぞ!?」

ドクオ達は飽くまで『生物キマイラ』。
無生物とのキマイラなど見たことも聞いた事もない。

口論しているうちに間合いを詰められ、ドクオが蹴り飛ばされた。

(;'A`)「うわ!!」

ξ;゚听)ξ「ドクオ!」

(;'A`)「やばいぞ…こいつ、もしかして」

(;'A`)「体表全てが硬質化してるのかも…」




104 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:31:29 ID:b0NmTdBYO

从; ∀从「ぐおッ!!」

町外れに連れられてしばらく。
ハインは弄ばれていた。

何度となく蹴られ、転がる。

从;゚∀从「てめぇー…人が鳥目なのをいい事に……!」

「そう言うなよ。身分は同じさ」

从;゚∀从「何だよ、何で泥棒なんか…」

「うるせぇっ!!」

从;゚∀从「う゛っ!」

激昂した誰かの爪先が腹に突き刺さる。
胃液が出るのを辛うじて堪えた。




105 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:32:55 ID:b0NmTdBYO

从;゚∀从「くそ…」

「…お前まさか分かってないのか?」

「俺達はな、捨てられたんだよ!!」

「野生化した不完全なキマイラ、いくつか見ただろう?」

「あれらと一緒にだ……ッ!」

「まともに生きようにも、俺達は化け物だ!」

「実際、気味悪がられて忌み嫌われた」

「あいつらまともな人間は、俺達を化け物としか見ていない………!」

从;゚∀从「そんな事ない、現に怖がらない子供だっていたぞ」

「黙れ!」




106 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:33:44 ID:b0NmTdBYO

「…とにかく、俺達二人は泥棒で生きるしかないんだ」

从;゚∀从「じゃあ俺達なんて放っとけよ」

「憎いんだよ!」

また腹を踏まれた。
嫌な音を上げて口から液体が漏れた。

从; д从「…憎いって、何でだ」

「あれだけ俺達が疎まれたのに、お前達は普通に生活していやがる」

「それが!どうしようもなく!憎いッ…!」

言葉の節々で体を蹴られる。
抵抗したいが、縄が邪魔だ。

从; ∀从「……せめて、拘束ぐらい解きやがれ。お前の能力だろうが、これ」

「ああ、よく分かったな。そろそろ解いてやるよ」

「殺る前に、ヤってやるよ…」




107 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:35:18 ID:b0NmTdBYO

〈::゚−゚〉「ギッ!!」

石の腕が振り回される。
周りの木々をへし折り、風を切って迫る。
ドクオがどうにか跳躍で避けた。

(;'A`)「くっそ…長期戦は不利だぞ、これは」

三人は肩で息をしている。
石のキマイラは平然たるものだ。

腕を振ると、それを避ける。
元のスタミナの違いにこれだけの運動の差が出れば、こうなるのは必定と言えた。

ξ#゚听)ξ「このッ……!」

ツンが大きく伸び上がり、敵の顔に近づく。
触れた瞬間に横薙ぎに殴られ、べしゃりと地面にたたき付けられた。




108 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:37:03 ID:b0NmTdBYO

〈::"−゚〉「ギィィィィィッッ!!」

ξ;゚听)ξ「はー…」

敵の眼から一筋、赤黒い血が流れ出した。

〈::"−゚〉「ギアァァァァァァアッッ!!」

しかし片目を失い動揺したのか、目茶苦茶に暴れ始めた。

(;^ω^)「逆効果だお!」

(;'A`)「ぐあっ!!」

ドクオに向かって倒木が飛んできた。
正面から直撃し、吹き飛ぶ。




109 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:38:39 ID:b0NmTdBYO

ξ;゚听)ξ「ブーン、そこの木の後ろに!」

ツンの声を受け、ブーンがドクオを引きずって太い木の裏に避難した。
骨折などはなさそうだ。

(;'A`)「ブーン…」

(;^ω^)「大丈夫かお!?」

(;'A`)「ちょい休憩だ。……奴の右足を、ずっと削っといた」

(;'A`)「お前の力で何かぶつけたら、最低でも表面は砕けると思う」

( ^ω^)「分かったお。ナイフ借りるお」

( ^ω^)「いくお、ツン!」

ξ;゚听)ξ「ええ!」

キマイラの前に踊り出る。
朝が近い。
そろそろ決めなければ。




110 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:39:44 ID:b0NmTdBYO

一方、拘束を解かれたハインは逃げていた。
四方八方から迫る何かを必死で避ける。

「避けるな、なかなか」

从;゚∀从「眼が見えなくてもな、空気の流れぐらいは分かるんだよ!!」

从#゚∀从「あとお前みたいな触手野郎に捧げるような処女は無い!!」

从#゚∀从「人をボコボコ蹴りやがって…!」

「よく喋るな、余裕あるのか」

足に何かが絡みついた。
持ち上げられ、そのまま背中から地面にたたき付けられる。




111 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:41:04 ID:b0NmTdBYO

从; ∀从「あ゛ぁ……っ!」

「痛いか。もうすぐ気持ち良くしてやるよ」

从; ∀从「………!」

从;゚∀从「はは、ははははっ…」

「何だ、頭でも強く打ったか」

从;゚∀从「最後に、質問だ」

从;゚∀从「…高いところとか、好き?」

「…何?」

从 ゚∀从「留め、刺しときゃ良かったなぁ」

从 ゚∀从「…ようやく、だ」

从#゚∀从「ようやく夜明けだ、屑野郎……!!」


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