ヽ ('A`) ノ バーラバラパパ、のようです (>< )
1 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:35:59.13 ID:55+t1UGo0


( ><)「パパ、ねぇパーパ」

('A`)「なんだい? ビロード」

( ><)「どうしてパパは他の人には見えないの?」

('A`)「それはね、パパはもうこの世にいないからさ」

( ><)「どうして、この世にいないの?」

('A`)「それはね、バラバラにされて殺されちゃったからなんだよ」

( ><)「どうして、殺されちゃったの?」

('A`)「どうしてかなあ」

( ><)「わかんないんです?」

('A`)「うん」

( ><)「でも、ボクはパパがいれば、別におばけでもいいんです!」

('A`)「ああ、パパもビロードがいれば、それでいいよ」




2 名前: ◆Ib6f2pPCNI :2009/08/22(土) 15:36:55.28 ID:55+t1UGo0










ヽ ('A`) ノ バーラバラパパ、のようです (>< )











5 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:37:51.19 ID:55+t1UGo0


( ><)「パパ、パーパ」

('A`)「ん? どうしたんだビロード」

( ><)「とても、退屈なの。お話しようよ」

('A`)「平和でいいことじゃないか」

( ><)「いやなんです、ショボンおじ様は優しいけど、でも……」

('A`)「父親のことをおじ様と呼ぶのは良くないぞ」

( ><)「わかってるんです、ショボンおじ様もボクのお父様、でも、ボクのパパは世界に一人だけだよ」

('A`)「…………そうか」

(*><)「うん!大好きだよ、ボクのバーラバラパパ!」

(;'A`)「そのネーミングはどうかと思うぞ……」

( ><)「パパがボクに教えてくれたんです」

(;'A`)「まぁ、そうなんだけどな」

( ><)「ねぇ、お話して欲しいんだ、パパ。ここはとても退屈で、気が滅入ってしまいそう」

('A`)「……何が聞きたいんだ?」




6 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:39:50.42 ID:55+t1UGo0


( ><)「パパのこと、ボクはパパが大好きだから、パパのお話が聞ければなんでもいいの」

('A`)「じゃあ、そうだな……初めてお前に出会った時のことでも、お話しようか……」

( ><)「ボクがまだ赤ん坊だったときの話?」

('A`)「そうだ、まあ、もう話したことがあったかもしれないが……ショボンが帰ってくるまでの
   暇つぶしには丁度いいだろう」

(*><)「うん!やったあ!」

('A`)「それはパパが死んだ日のことだ。その日、初めて意識が浮上したとき―――」







7 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:41:04.51 ID:55+t1UGo0

*  *  *  *


 その日、初めて意識が浮上したとき、俺の肉体はとうになくなっていた
目を開けて最初に視界に映ったのは、雲ひとつない、憎らしいほどの青空と
一羽の白い鳥が、優雅に飛んでいる姿だった

('A`)「ん……」

 俺は半透明になっている手で目を擦り、下を見た
すると、今度はまるでプラモデルみたいに小さくなった街並みが立ち並んでいる

 ガキの頃、初めて乗った飛行機から見下ろした景色が、こんな感じだったっけ
雲の中に隠れている小さな家々を見て、俺は呆然と呟いた

('A`)「なぁんだ、コリャ……」

 口から出た声は思った以上に掠れていて、しかしそれ以前に、声が出たことへ純粋に驚く
まるで夢を見ているような気分だ
 
 実際夢だったらとも思ったが、どんなに醒めることを願っても、この夢が覚めることはなかった
当然だ、現実なんだから

('A`)「なんだ、俺はその」


('A`)「死んだのか」





9 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:42:10.10 ID:55+t1UGo0


 ああ、段々と思い出してきた

 こんな状況で冷静になるのも妙な話だが、蘇ってきた記憶は、俺の意思とは無関係にその光景を再生していく

 あれは、森の中だっただろうか
視界は暗くて、相手の顔なんて覚えていないが、確か俺は数人に囲まれていた

 最初に殴られたのは頭だ
土が口の中に入り込んで、じゃりじゃりとした触感が蘇ってくる
くぐもった声をあげて抵抗したが、無意味で

 それから、なんだ
意識が虚ろな中、俺は押さえつけられて、最初に腕を切られた
悲鳴を上げながら、続いて足を切られて、それから…………

('A`)「ああ」

('A`)「ダメだ、やっぱりよく思い出せない」

 もうすでに、痛みなんてないし、特に頭も痛くなったりしないが
ただ霞がかかったように、ぼんやりとしている
俺は思い出すことを諦めて、早々に下へと降りて行った







10 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:42:57.83 ID:55+t1UGo0


*  *  *  *  * 


( ><)「パパは死んでしまったときのことを、今も覚えてはいないの?」

('A`)「そうだなあ、まぁ思い出すべきものでもないし」

( ><)「そうなんだ」

('A`)「ああ、それに、今はお前に会えたことが幸せだよ」

( ><)「うふふ、ボクも、パパがボクのパパでよかったんです!」

('A`)「ははは、嬉しいな。それからパパは下にゆっくり降りて行ったんだ」


*  *  *  *  *





11 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:44:14.86 ID:55+t1UGo0

 体を動かすことは、思ったより簡単だ
どういう仕組みかは解らないが、俺が思ったとおりに手足は動く

 まるでアニメか漫画のように、自由に壁や人を通りぬけると、まず初めに本屋へと向かった
ここには、俺が生前、神とまで崇めていた漫画の最新作が出ている

('A`)(どこだ……)

 お前何やってんだ、とか、思わないでほしい
なぜならば、あの漫画は俺の人生だったからだ、キモオタとかで片付けられたくない

 漸く、その本を立ち読みしている人間を見つけると、俺はすぐさま近寄っていく

('A`)「……この漫画が終わるまでは死ねないって思ってたんだけど……死んでも読めるなんて……感激だ」

 見知らぬ人の後ろ側から、しみじみと呟いた

 こういう生活も、中々いいかもしれない、とか思ってしまうのは、現実逃避って奴なのだろうか

('A`)(ん?)

  川 ゚ -゚)

(*'A`)「うほっ、いい女!」






12 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:45:27.25 ID:55+t1UGo0


 その時、本屋の前を、中々の美女が遠ざかったので、俺は釣られるように、ふらふらとその後を憑いていく

 当然だ、だって今の俺は幽霊、いわゆる人には見えない存在なのだから
それはつまり

 なんでも 覗 き 放 題 というわけだ!

(*'∀`)(うっひょー!)

 ニヤニヤとした笑みを浮かべながら、その女の後ろを憑いていく

川;゚ -゚) キョロキョロ

('A`)(随分キョロキョロしてんなあ……)

('∀`)「急いでも俺は逃がしゃしないぜハニィーw」

ゾク川;゚ -゚)(?なんか不快感が……)

 その女に俺の姿は見えてはいない様だったが、意外に勘がいいらしく、俺が後ろにいるとさらに足を速めた
大きめの鞄を胸に抱え込んで、その女は足を速めると、暗い路地裏の方へと走っていくので
もちろん、俺はついていったさw






14 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:46:36.37 ID:55+t1UGo0

川;゚ -゚)「だ、誰もいないよな……」

('A`)(俺はいるけどね)

川 ゚ -゚)「……よし……」

 そうして、たどり着いたのは、すっかり人通りの少なくなった裏路地を抜けた、廃屋だった
滅多に人も来ないような部屋の中で、彼女は立ち止まり、その大きなバッグを広げる
一体何をする気なんだろう

 こんな叫んでも誰も気づかないような場所に、女が一人で……
嫌な想像は打ち消して、俺はよからぬ妄想に励んだ
が、そんな中に現れたのは、まったく予想外の存在で

川 ゚ -゚)「…………ごめんな、許してくれよ」

 そういって彼女が取り出したのは




( ><)「ふぇ……ふぇ……」

 小さな小さな、赤ん坊だった








15 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:47:37.04 ID:55+t1UGo0

(;'A`)「…………えっ?」

 唐突の展開に、俺は一瞬その体を止める
見えもしないのに物陰に隠れた

川;゚ -゚)「ご、ごめんな、ごめんな、許してねビロード」

川; - )「ごめんな……」

 泣き叫ぶ赤ん坊に、何度も謝ると、その赤ん坊を置いて彼女は走り去って行く

(;'A`)「あ、おい! 待てよ! この子どうするんだよ!」

 俺は叫んだが、勿論声が聞こえるはずもない
振り返ることもせずに、彼女は廃屋から出て行った

 追いかけることも出来たが、俺の後ろには、先ほど女が置いて行った赤ん坊が
けたたましい声をあげて泣き叫び始めたので、そうもいかなくなってしまった

(。><)「びぇえええーーん! びぇええーーん!」

(;'A`)「おいおい! ど、どうすりゃいいんだよ……!」

 廃屋全体に響き渡るような声で、赤子は泣き叫んだ
しかし、こんなところに来る人間なんていない






17 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:48:43.44 ID:55+t1UGo0

 俺には子供なんていなかったから、赤ん坊のあやし方なんてわからないし、それ以前に幽霊だ
もう死んでしまっているのだから、この子供に触れることも出来ない

(。><)「ひぐっ…あーー!…びぇえええええーーーん!」

(;'A`)「…………」

 しかし、それでも何とかしなければ、という人の心くらいは俺にもある
赤ん坊の目の前に浮き、必死で変な顔をしてあやした

(;'∀`)「おーい、ぼくぅ〜〜」

('σ`)「べろべろばぁ〜〜〜」

( ><)「………………」

(。><)「びぇええええええええええええ!!」

(;'σ`)「…………」

(;'A`)「だ、ダメか……!」

(;'A`)「え、えーとじゃあ……」






20 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:49:43.10 ID:55+t1UGo0

(∩∩)「い、いないいない……」

(;'∀`)「ばぁ〜〜!」

( ><)

ヾ(*><)ノシ「あー、あー!」

(*'A`)「おお!笑った!」


 正直、ダメ元だったが、笑顔を見せた赤ん坊に、思わず俺の顔も綻んだ
よかった、笑ってくれた。なんだよ俺もやればできるじゃないか!

 と、そこで俺はあることに気がついてしまった

(;'A`)「あれ?」

( ><)「あー! あー!」

('A`)「……お前……もしかして……俺のこと見えてる?」

(*><)「だー、だー」

 赤ん坊の視線は、確かに俺を捉えている
俺が移動すると、その赤ん坊も俺の姿を追い、隠れると不思議そうな声をあげた

('A`)「…………」




21 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:51:03.43 ID:55+t1UGo0

 よく子供が何もないところを目で追っていたり、何もない空間に話しかけていたりするのは
こういうのが理由なのかも、とは聞いたことがあるが、実際目の当たりにすると驚きを隠せない

((( 'A`)

( ><)「あーー」

('A` ))))

(>< )「あーー」

('A`)「…………」

 さっきまで俺が見えるやつなんていなかったし
いたとしても、幽霊なんて気味の悪いものシカトするだろう

('A`)「…………」

( ><)「うーー!あー?」

 だけど、そうか

('∀`)「ははっ……」

 こんな姿になって、もう俺と話してくれるやつなんかいないと思っていたけど






23 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:51:56.32 ID:55+t1UGo0

('∀`)「べろべろばぁ〜」

ヽ(*><)ノシ「うっきゃー!」

 お前は、俺の姿をちゃんと認めてくれるんだな
 ちゃんと、俺を見て、話してくれるのか

(∩∀∩)「いないいない……」

( ><)「あー!」

(;A;)「ばぁ……」

(*><)「う、あー?」

(うA;)「ははは……ありがとなあ」

 小さく動くその命を抱きしめて

 初めて俺が死んでしまったその日

 幽霊となった日

 汚い廃屋の中、俺は静かに泣いたんだ






24 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:53:27.94 ID:55+t1UGo0

* * * * * 

('A`)「嬉しかったなあ……」

( ><)「ボクうーとか、あーしか言ってないんです!」

('A`)「そりゃ、お前はまだ小さかったし」

( ><)「でもボク、少しだけ覚えてるんです。その廃屋のこと……」

('A`)「そうか……」

( ><)「うふふっ……それにしても、パパが泣いたんです?」

('A`)「ああ、泣いちゃったなあ、パパも結構精神とかガラス並だから」

( ><)「ちょっと、見たかったんです」

('A`)「バカ言うな、男がそんな簡単に泣くところを見られちゃいけないんだぞ」

( ><)「ふぅ〜ん、ボクのママ、綺麗な人だったんです?」





27 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:54:51.74 ID:55+t1UGo0


('A`)「綺麗な人というか……あれはけしからんおっぱいだったな」

(#><)=3「な、パパ不潔なんです!」

(;'A`)「冗談、冗談だって!」

(#><)「もうっ……!」

(;'∀`)「じゃあ、続けるぞ」

( ><)「うー」







30 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:56:55.24 ID:55+t1UGo0

*  *  *  *


('A`)「さて、これからどうするか」

( ><)「うっだー!」

 俺は廃屋の中で呟いた
何せここは人もまったくこない場所、このままでこの子は死んでしまう
見たところまだ1歳くらいだろうか

 あのボインな女が母親で、捨てたんだろうということはなんとなくわかるが
どうしてこんな廃屋に捨てるんだよ
せめて孤児院の前とかだったら……

 それとも自分を特定されることを恐れたんだろうか
まあ、今はそんなことどうでもいい

('A`)「ビロードって……言ってたっけ、あの女」

( ><)「う?」

('A`)「ビロード」

(*><)「あー! きゃー!」

(*'A`)「…………」




31 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 15:58:36.81 ID:55+t1UGo0

 ああ、可愛いな、赤ん坊ってこんな可愛いものだったのか
子供は天使だ、なんていう奴の気がしれなかったけど、今なら少しわかる気がする

 この、小さな命は、俺が守ろう
簡単に殺させたりなんてするもんか

 ここで会ったのも、きっと何かの縁なのだ


('A`)「……ちょっと待ってろよ」

( ><)「うー?」

 俺は壁をすり抜けると、街の方へと向かうことにする
触れることは出来ないけど、さっきの女みたいに、気配の感じることのできるやつはいるかもしれない

 そういう奴を、この廃屋まで導けばいいんだ
そいつがあまりにも非人道的じゃないかぎり、捨てられた赤ん坊を見捨てることなんて出来ないだろう

 壁から顔を出して、ビロードに言い聞かせる


('A`)「出かけてくるからな」

( ><)「うー……? あ?」





32 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:00:36.08 ID:55+t1UGo0


('A`)「すぐ戻るから」

( ><)「あぅー!」


 街は、俺が死ぬ前とまったく変わらなかった。改めて自分の小ささを思い知らされた気もするが
今はそんなこと関係ない、問題は、人通りは多いものの、やはり俺に気づく奴はいないということ
皆俺の体をすり抜けていく

 そのとき、俺は車行きかう交差点の真ん中に突っ立っていた

 ここに突っ立っていれば、もし見える奴がいたら、俺のことを見て驚くんじゃないだろうかと思ったんだ

 どんなに些細な変化でも、俺のことをみて驚いたような奴がいたら、そいつには俺の姿が見えている可能性がある

 そいつに、憑いていくんだ

('A`)(誰か俺を見ろ〜〜見ろ〜〜〜)

 しかし、そうして待っていても、誰も見える奴はいない
ビロード、泣いてないだろうか
腹減ってないだろうか

 せめて俺に物に触れられる技術があればいいんだけど、こればっかりはどうしようもない






33 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:01:56.65 ID:55+t1UGo0

('A`)(見ろ〜〜見ろ〜〜〜)

 行き交う人の波と、とおりゃんせの音楽だけが無情に響く

(;'A`)(やっぱダメか……)

 しかし、ここで諦めて帰ったところでどうにもならない
俺は辛抱強く待った
人の波を必死で見つめて、俺に気づいたような奴がいないか、探した

そして


 いた


(´・ω・`)「…………」

 雑踏の中、俺が彼を見つけたのは、今思えば奇跡に近い

('A`)「!」

 ほんの、一瞬だ
ほんの一瞬、目があったと俺が思ったくらいで、そいつに俺が見えたなんて確証はどこにもなかった
ただ、このままここでじっとしているよりもはるかにマシだ





34 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:02:55.09 ID:55+t1UGo0

 俺はそいつの背中にくっつくと、必死で話しかける

('A`)「なあ、おい、なあったら」

(´・ω・`)「…………」

('A`)「おいお前、俺の話、聞いてくれよ、なぁ、聞こえてるんだろ?見えてるんだろ?」

(´・ω・`)「…………」

('A`)「頼むよ、助けてくれよ、人の命がかかってるんだ、このままじゃあいつ死んじまうよ」

(´・ω・`)「…………」

 しかし、その男は何も言わずに通り過ぎていく
歩く速度を変える様子もない

('A`)「なぁ、おいってば!」

 そこで、初めてその男は足を止める
裏路地に入り、人の波から外れたところだった






36 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:04:17.27 ID:55+t1UGo0


(´・ω・`)「……参ったなあ」

('A`)「おい、聞こえてるんだろ」

(´・ω・`)「これだから、目なんてあわせたくなかったのに」

('A`)「…………!」

 俺は確信する
やはり、こいつには、俺が見えているんだ

 その証拠に、奴は、俺の目をじっと見つめている

(´・ω・`)「まあ、暇つぶしにはなるかなあ……」


 その時、俺は ひとつの



  ミスを犯した





38 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:05:47.44 ID:55+t1UGo0

*  *  *  *  *


( ><)「それが、ショボンおじ様だったんです?」

('A`)「ああ、あいつに会えて、……運が良かったよ、ビロードは」

( ><)「ショボンおじ様に、ボクはここへ連れてきてもらったんですね」

('A`)「そうさ、そうじゃなきゃ、お前に触れることも出来ない俺は、とっくに何も出来ずお前を死なせていた」

( ><)「でも、そうなったらパパとずっと一緒? だったらボクはそれでもいいなあ」

('A`)「バカなことを言うんじゃない」

( ><)「……怒らないでくださいなんです。冗談なんです」

('A`)「死んでいいことなんて、あるもんか」

( ><)「……はあい、でもそれは」

('A`)「ん?」

( ><)「それはこんな状況でも、同じことを言えるの? パパ」

('A`)






40 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:09:04.34 ID:55+t1UGo0

ガチャ


(´・ω・`)「やあ、また二人でお話していたのかい?」

('A`)「ショボン……」

(´・ω・`)「相変わらず、君たちは仲がいいね、父親としては、嫉妬してしまいそうだ」

( ><)「おじ様……」

(´・ω・`)「ビロード、新しいドレスを買ってきたんだ」

(´・ω・`)「君によく似合うと思って」

( ><)「……ありがとうございます」

('A`)「……ショボン、ビロードは」

( ><)「いいの、パパ」

('A`)「…………」

(´・ω・`)「フフフ」





42 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:14:52.54 ID:55+t1UGo0

*  *  *  *  *



 その男は、ショボンと名乗った
この辺りでは有名な成金で、地主でもあるらしく、しきりに人生の退屈さを嘆いていた
ああ退屈だ、と口癖のように呟いている

('A`)「……死んでしまったら、そんなことも言えなくなるぞ」

(´・ω・`)「僕は死んでいないもの、ご愁傷様とは言えるけどね」

('A`)「…………」

 嫌な男、というのが俺の中での第一印象だったが
今は贅沢を言っていられる状況でもなかった

 何せ、ビロードをあの廃屋に置いてからもう半日も立っている
きっと泣いているだろう、もしかしたら喉に何かを詰まらせてたりするかもしれない

('A`)「とにかく、急いでくれ、早くしないと、泣いているかもしれない」

(´・ω・`)「……はいはい」

 待っていろよ、ビロード
今、帰るからな






44 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:19:08.71 ID:55+t1UGo0

(。><)「びえええええええええええ!びえええええええええ!」

(;'A`)「ああ、やっぱり……」

 案の定というかなんというか、廃屋に戻ると、悲鳴のような泣き声がこだましていた
もしこの近くを通りがかる奴がいたら、きっと耳を疑うだろう

(。><。)「あああああああああああああ!!ぎゃああああああああ!」

(;'A`)「よしよし、いいこいいこ〜〜! ほら、ビロード!」

(∩∩)「いないない〜〜」

(;'∀`)「ばぁ〜〜〜」

(#><)「びゃああああああああああ!!」

 ダメだ、癇癪を起こした赤ん坊っていうのは、どうしてこう手が付けられないんだろう
ただ泣いてばかりいるビロードを俺が必死にあやしていると

 興味をそそられたかのように、後ろからショボンが覗き込んできた

(´・ω・`)「へぇ、捨て子?」

(;'A`)「なっ……お前、はっきり言うなよ」

(´・ω・`)「いいじゃない、今時珍しくないよ」





46 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:22:11.97 ID:55+t1UGo0

 はっきりという物言いに腹が立ったが、今はそれどころではない

(´・ω・`)「おなか空いてるんじゃないの?」

(;'A`)「たって、ここには食い物なんて……」

(´・ω・`)「じゃあ」


(´・ω・`)「僕の家に連れて行こうよ」


 その時のショボンの笑みがやけに歪んだものだったことに、俺は気づくべきだったんだ







49 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:24:48.35 ID:55+t1UGo0

*  *  *  *  *


(´・ω・`)「それじゃあ、また来るからね」

( ><)「……はい……」

('A`)「…………」

ガチャン

( ><)「パパ、どうして泣いてるの?」

(うA;)「泣いてない……」

( ><)「男は簡単に泣いちゃだめだって、パパが言ってたんだよ」

(;A`)「ビロード……」

( ><)「パパ、ボク幸せだよ、ここは狭くて暗くて、誰にも会うことは出来ないけれど」


( ><)「ここにはパパがいるもの」


( A )


 これは、俺の罪だ




52 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:31:07.24 ID:55+t1UGo0
*  *  *  *  *


 ビロードがこの屋敷にやってきて、半年が過ぎた
しかし、屋敷の者に会うことはない、なぜなら、ビロードは屋敷の地下にある一室に閉じ込められていて
頑丈な鍵のついた部屋のなか、いつも俺と二人ぼっちだからだ

 俺はビロードと四六時中一緒にいて、食事やオムツは、使用人の一人が機械的に行っている
だけど、こんな環境まともじゃない、俺はたまにやってくるショボンに言った

('A`)「おい、ショボン……」

(´・ω・`)「なんだい?」

('A`)「ビロード、もっと他の人間に会わせたり出来ないのか?
   こんなくらい所にずっと閉じ込められたまんまじゃ、まともな子に育たないっていうか……」

(´・ω・`)「ダメダメ、こんな小さな子、僕が育ててるってだけでもスキャンダルなのに、バラすなんて出来ないよ
      助けてあげただけでも感謝して欲しいね」

('A`)「…………」

 俺には、何もできない
だって俺は死んでいる、ビロードに触れることも、抱っこしてやることも出来ないんだ

(´・ω・`)「それに、ちょっと興味あるじゃない」

('A`)「……何が?」

(´・ω・`)「閉じ込められて育った子供が、どんな風になるか」




53 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:34:51.15 ID:55+t1UGo0

 歪んだ笑みを浮かべるショボンに、俺は殴りかかったが
その拳が届くことは、もちろん、ない



( ><)「ぱぁ、ぱ?」

('A`)「なんだー?ビロード」

( ><)「しゅき、すきぃ」

('A`)「ああ、パパも、ビロードのこと、大好きだよ……」

( ><)「ぱぁぱ? えんえん?」

(;A`)「ああ、えーんえーん……だ……ごめんなあ」

( ><)「えーん? えーん?」

(うA`)

 俺は無力だった

 助けてやりたい命を、守ることも出来ない


 無力な幽霊だ




55 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:39:34.36 ID:55+t1UGo0

*  *  *  *  *


( ><)「ねぇ、パパ、覚えてる?パパが始めてボクに読んでくれた本」

('A`)「ああ、お前はお気に入りだったなあ」

( ><)「うん、バーバパパ、って聞いて、じゃあパパはバーラバラパパだね!って、ボクが言ったの」

('A`)「パパ、びっくりしちゃったよ」

( ><)「うふふ」

('A`)「なぁ、ビロード」

( ><)「なあに?パパ」

('A`)「ここから逃げ出そうって、思わないのか?」

( ><)

( ><)「どうして?」

('A`)「パパはな、ビロード、こんなところで、お前に一生を終えてもらいたくないんだよ」

('A`)「もっと、人生を楽しんでもらいたいんだ、パパには、出来なかったからなあ」

( ><)「バカだね、パパ」





58 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:46:21.47 ID:55+t1UGo0

('A`)「ビロード」

( ><)「バカなんです」

 笑ったビロードの顔は、もう昔みたいに無邪気な笑みではなくて

 そのことに、俺は少しだけ涙を堪えた

 
 ゆっくり

 ゆっくり



 少しずつ、でも確実に



(´・ω・`)「やぁ」

( ><)「……こんにちは、ショボンおじ様」

(´・ω・`)「もう夜だよ、ビロード」


 壊れていく、世界





60 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:48:28.48 ID:55+t1UGo0

( ><)「大丈夫だよ、パパ」

 

 ゆっくりと



( ><)「心配しないで、パパ」



 ゆっくりと


( ><)「パパ」



 ゆっくりと


( ><)「パパ……」



 消える




61 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:49:26.21 ID:55+t1UGo0













                       パパ













66 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 16:55:59.49 ID:55+t1UGo0

*  *  *  *  *



 ボクの名前はビロード
パパの名前はドクオっていうんです

 え? パパはどこにいるのって? ここにいるじゃないですか、やだなあ、見えないんですか?
パパはいつでもボクの後ろにいるんです

 お母さん?さあ、知りません
ボク、捨て子だったみたいだから……


 ところで、ここはどこですか?
ごめんなさい、ボク外に出たことってなかったから、慣れてなくて

 はい、そうですね
ボクはあそこから出たことなかったんです

 寂しかった?いいえ、そんなことはないですよ
だってパパがずぅっと一緒にいましたもん

 だから、後ろにいますってば、変な人
うふふ


 ねえ、パパ、この人たち、変な人だね





71 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 17:05:24.75 ID:55+t1UGo0

 ―――2009年、8月某日
VIP街の地主である城山ショボンが、地下で殺害されているのが発見された
発見したのは城山宅の使用人であり、現場にはドレスを纏った少女が倒れていた
警察は少女と城山の関係性を調べているとして―――




('A`)「……ビロード」

( ><)「なあに?パパ」

('A`)「ゴメンな、ビロード」

( ><)「変なパパ、どうして謝るの?」



 真っ白い病室の中、ビロードは笑っていた
表情のない笑みをつくり、虚ろな目で

 俺はやるせなくて、ただ頭を下げるしかなかった


 真っ白い病室の中に横たわる少女は、出会ったときはまだ赤ん坊で
小さな命を、俺は守りたいと思っていたのに、気がつけばこの様だ





80 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 17:11:05.56 ID:55+t1UGo0



(;A;)「ごめん、ごめんな……」

( ><)「泣かないで、ぱぱ、ねえ」

 懺悔しても、懺悔しても、終わることはない
俺は触れられない手てビロードを抱きしめると、静かに泣いた
涙は溢れても、何も濡らさない

 ビロードは相変わらず笑っていたけれど、その笑みはいつかの無邪気な赤ン坊の笑みに、少しだけ似ていて
手に力を込めるが、やはりすり抜けてしまった



 バラバラになって殺されたバーラバラパパは
お前の心もバラバラにしてしまったなあ


 その罪は生涯、いいや、死んでも拭われることはないだろう







85 名前: ◆WsB51GXg0k :2009/08/22(土) 17:16:22.28 ID:55+t1UGo0



 パパは一つ、勘違いをしている

 パパはボクの心が壊れてしまったと思っているけど、そんなのただの勘違い

 だって、ボクはパパのことが大好きだから、パパがいればそれでいいから

 17年も一緒にいた人を、好きにならないほうがおかしいじゃない

 ショボンおじ様のことも、本当は嫌いじゃなかったよ


 パパがボクに申し訳なさを感じて、ずっと一緒にいてくれる口実になったから

 もういないけど、これでパパがずっと一緒にいてくれるなら



 ボクは幸せ

 大好き、ボクのバーラバラーパパ

 

 終わり



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