川;゚ -゚)「くっやしいけど、生きてるって楽しいぞー!」のようです
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:37:27.44 ID:9kGKpm4h0
-
「はあ……っ! はあっ……!」
今私は森の中を走っている。何故か? 何故だろうか。
いきなり目の前で人が消えたのだ。そして、私の周りにいた人が更に音もなく消えた。
そして、突然に原因は現れた。
「こんばんは。
さようなら。
いってらっしゃい」
そんな不気味で、不可解なセリフを吐き、目の前に不可視だった者が現れる。
にやあ、と笑みを浮かべている。
その不気味な表情のまま、血で染めたように赤い髪を振り乱しながら、私へと飛び掛ってきた。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:38:26.08 ID:9kGKpm4h0
-
――――瞬間、全ての動きがスローモーションになる。
その状況で、私は静かに思う。……殺される、と。
短い人生だが、初めての感覚だった。怒られたり、怒鳴られたり、
いかに不気味な奴がいようと、こんな感覚に陥るのは初めてだ。
だが、こんな命の危機を感じ取れたことなどなかった。
恐ろしい、怖い。そんなことを思うよりも私は必死にその場から逃げた。
しかし、相手もそうたやすく逃げさせてはくれない。
何度逃げようとしても、決して逃げ切れない。そして何度目か、振り返ってみると、
暗転。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:39:59.37 ID:9kGKpm4h0
-
* * *
古ぼけた建造物。それは街の外れにある小さな小さな小屋のような住居。
そこには背が小さく髪が伸びきった不細工な男と、
それなりの身長とそれなりの容姿の男が、今にも壊れそうな長いすに座っている。
('A`)「ブーンよ。これは事件だ」
( ^ω^)「またですかおど畜生」
外から見たこの家は、それはそれは悲惨なもので、壁という壁は穴だらけ。
挙句、屋根は大きな木の板を上から載せたようなダンボールハウスもびっくりな出来栄えだ。
そんな家があれば噂になるはずなのだが、何故だかこの家は人に知られることなく建っている。
ともなれば勿論、出入りする人間もいないわけなのだが。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:41:37.59 ID:9kGKpm4h0
-
( ^ω^)「で? 今度は何が起きたんだお」
半ば呆れ気味にブーンと呼ばれた男が問う。
恐らく事件など、面倒ごとが多発しているのだろう。
('A`)「聞いて驚け!」
( ^ω^)「驚いてやるから早く話せお」
('A`)「そう急かすなよ。どうせ暇だろうが」
( ^ω^)「誰のせいか言ってみろお」
('A`)「しーまーしぇーんwwwww」
誠意の欠片も感じない鬱蒼とした表情の男。
だが、その顔とは裏腹に愉快そうに笑っている。
そのギャップが余計に目の前の彼を苛立たせたのか、無言で顔面をひっぱたかれる。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:43:43.91 ID:9kGKpm4h0
-
('A`)「ひ、ひどいわ! 親父すらぶったことないのに!」
更にもう一発。
そこから怒涛の往復ビンタタイムになるが、
一切反抗しない男は恐らくマゾなのだろう。
( ^ω^)「気は済んだかお」
(#)A(#)「前が見えねえ」
ただでさえ整っていない顔が更に歪み、崩れている。
恐らく顔だけ雪崩にでも遭ったのだろう。その結果、顔面霜焼け状態である。
しかしどうしたことだろうか、それはそれは摩訶不思議なことが起きた。
そんな汚い顔を、汚らわしい男がそっと触れると、あっという間に元通りの気持ち悪い顔へと退化を遂げた。
('A`)「さて、本題に移ろうか」
( ^ω^)「キリッ」
その不可思議現象に驚かない辺り、この二人の間ではよくあることなのだろうか。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:47:04.32 ID:9kGKpm4h0
-
('A`)「ある人間の女が殺された」
( ^ω^)「人間が? 別によくあることじゃないかお。殺人事件なんて山ほどあるお」
('A`)「そりゃ人が人に殺されるなんて毎日起こってることだ。
それに関して俺はノータッチだ。他の奴が管理してるだろうしな」
( ^ω^)「なんだお。そりゃつまりあれかお。
人が人を殺したのではなくて、
人じゃない人が人を殺して人が死んだのかお。そういや人って字は左の奴が明らかに楽してるおね」
('A`)「寄りかかってんじゃねえよって話だな」
( ^ω^)「真面目に答えろよ」
('A`)「真面目に答えさせろよ白豚」
(#^ω^)「久々にキレちまったよ……。ちょっと屋上行こうぜ……」
('A`)「いいけど、屋根突き抜けるぞ」
( ^ω^)「それもそうだお。……で? どうなんだお。
結局人外の手でやられたのかお? いや、むしろそうでなけりゃドクオは騒がないかお」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:51:30.04 ID:9kGKpm4h0
-
('A`)「そうだな。それに加えて更に厄介なのが、
そいつにやられた奴は、魂すら残っちゃいないんだ」
(;^ω^)「ちょwwww それ、かなりやばくないかお?」
('A`)「俺のモテない比率ぐらいやばいな……」
( ^ω^)「あ、はい……」
通常人は死んでしまうと、魂という形で一度世界を彷徨う。
その状態では姿形は保っておらず、一つの火の玉状態になり、
閻魔大王と呼ばれる天国と地獄への片道切符受け渡しの任を請け負っている者の下へと案内される。
そしてそのどちらかの世界へと移動すると前世の身体へと変貌を遂げる。
その状態で、しばらく時が経つと魂は来世へと移動するため、再び火の玉へと戻り、何らかに転生する。
一体何に生まれ変わるのかは、知りえることは出来ない。
('A`)「つまりこのままだと不自然に人が消え続けて、
俺ら揃って閻魔に舌を抜かれるハメになっちまう」
( ^ω^)「閻魔ってガチで舌抜くのかおこえー」
そんな暢気な会話をしているが、事態はブーンが思っている以上に深刻である。
- 13 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/25(火) 23:54:57.10 ID:9kGKpm4h0
-
('A`)「で、今ここに非常にイレギュラーな魂を呼び寄せている」
( ^ω^)「イレギュラー?」
('A`)「そうだ。さっき話した内容だと人外の手で消されると霊魂丸ごと消えちまうってわけだが、
その人外に殺されたであろう人間が、魂だけ残っていたんだ。
しかも成仏せずに、ただその場で浮遊しているだけという形でな」
( ^ω^)「さっきの内容だと全員根こそぎ消されるってのが普通だったけど、
その状況で、運良く生き残ってたってことかお?」
('A`)「ああ。冥界に送られることなくな」
( ^ω^)「まーた冥界の連中がさぼってるだけじゃないのかお」
(;'A`)「それはありそうだがな……。つっても、もう呼び出してるから今更どうにも出来ん」
( ^ω^)「もっと後先考えろおマジで」
('A`)「うるせえ白豚。お前だってその後先考えないおかげで今こうやって生きてるだろうが」
( ^ω^)「心臓は止まってるがおwwwww」
('A`)「ですよねーwwww」
そんなやりとりをしながらも、ドクオは床に何かを書き始める。
自分の両手を広げた程度の円陣、そしてその円の中に解読不能な紋章を書き上げていく。
- 14 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/25(火) 23:58:04.47 ID:9kGKpm4h0
-
( ^ω^)「毎回思うけどお」
('A`)「あんだよ」
( ^ω^)「その厨ニ病みたいな魔方陣どうにかならないのかお」
('A`)「厨ニ病みたいな役職についてんだからほっとけ」
( ^ω^)「ですよねーwwwww神様wwwwサーセンwwwww」
('A`)「お前ショボンのところで働かせるぞ」
( ^ω^)「ちょっとおおおおおおおおおおお!」
そうこうしている間に全てを書き終えたのか「よし」と呟いて立ち上がる。
そして両手を合わせ、なにやらよくわからない言語でぶつぶつと言う。
- 19 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:05:48.79 ID:9kGKpm4h0
-
川 ゚ -゚)「お前ら」
('A`)「あん?」
川 ゚ -゚)「ここはどこなんだ」
何故だ。
何か大事なことを思い出さなくてはならない。
だが、その大事なことがわからない。何を思い出そうとしているのか、何を忘れているのか。
いや、そもそも全部忘れている。そんなことを私は思っている。
必死に記憶を引き出そうとしても、どうやら引き出しがついていようとも、中身がないのか、何も出てこないのだ。
これは何かを忘れているという類のものではなく、単純に、最初から何もなかったような感覚だ。
だから、何も思い出せない。何があったのか、何故ここにいるのか、その理由が私には見つからない。
- 15 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:00:01.59 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「随分と強い力だなこりゃ……それも中々に美人さんだ」
( ^ω^)「よし。復活した後の面倒は僕に任せろお」
('A`)「だが性格は随分と破天荒だな。行動がいちいち読めん」
( ^ω^)「お断りしますお断りします」
そうこうしていくうちに、
円陣から野球のボールぐらいの大きさがある青白い炎の玉が宙に浮かび、現れる。
( ^ω^)「つーかお。生前の記憶を読み取るなんて犯罪だおドクオ」
('A`)「うっせ。そうしないと喋れもしない火の玉だけが現れるっていう不気味な光景になるんだよ。
第一俺はホラーが嫌いだから無理だっつの」
( ^ω^)「お前の顔が一番ホラーじゃねえかおwwwwwwwww」
('A`)「よーしお前の肉体に魂ぶちこんでやる」
( ^ω^)「サーセンwwwwwドクオさんサーセンwwww」
そして突然発光した円陣は、辺り一面白で包んでいく。
その光は何か爆発でもしたのかと思わせるほどに強く、それでいて、優しい光だった。
- 16 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:01:26.63 ID:ZaHFCiHK0
-
川;゚ -゚)「くっやしいけど、生きてるってむっちゃ楽しいぞー!」のようです
- 17 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:03:24.37 ID:ZaHFCiHK0
-
川 - )「ここ、は……」
何かに追われていた。何かから逃げいていた。
何かを奪われた。何かを失った。
私は誰だ。ここは一体どこだ。この状況はなんだ。
('A`)「よう。お目覚めかい姫君」
川 ゚ -゚)「これは……」
目の前に広がっている光景は、別段驚くようなものでもなかった。
お世辞にも綺麗とはいえない室内。なおかつ快適に住めるような広さもない。
本が転がり、よくわからない物が大量に机の上を占領している。
そして何よりも。
川 ゚ -゚)「酷い顔面障害者を見た」
('A`)「ち、畜生! 母さんに謝れ! 母さんに!」
( ^ω^)「お前川原から拾われたんじゃね?」
目の前で繰り広げられている光景は、あまりにも日常的過ぎて、
それでいてほのぼのとしている。だが、私は何か大事なものを忘れている。
そんな気がしてならない。
- 20 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:08:53.64 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「ここは、街のはずれにある小さな民家だ」
( ^ω^)「民家(笑)」
何がおかしいのだろうか。民家と言われれば納得はいく。
だが、恐らくこの鬱蒼とした男の相方らしき男は、
うっすらと笑みを浮かべ、嫌味っぽく口元を引きつらせている。
川 ゚ -゚)「おいそこの豚野朗。何を笑っている」
(;^ω^)「いきなり酷い扱いだおクソ女」
川 ゚ -゚)「これはこれはご丁寧に白豚。で、何を笑っているんだ」
( ^ω^)「おー……」
何か隠している。そう感じた。その隠しているであろう張本人である豚野朗は、
私から視線をそらし、
細々とした蹴りでも入れようものなら体中の骨がキャシャリン状態になりそうな男へと向けなおす。
- 21 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:12:09.20 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「ああん? 言いたけりゃ言えよ。どうせ遅かれ早かれ言うんだ」
( ^ω^)「そらどうも。じゃあ言うお」
川 ゚ -゚)「ああ」
なにやらよくわからない話。振られても答えようのない話。
だが、どうにも理由があるみたいだ。遅かれ早かれ。
それはつまり、私にとって大事な内容だ。
( ^ω^)「お前は……」
一度言いよどみ
( ゚ω゚ )9m 「死んでしまったんだお――――――!!」
目をひん剥き、親指を突きたて重大発表が行われた。
川 ゚ -゚)「えっと、人に向けて指をささないで貰えます?」
(;^ω^)「え、あ、ああ。ごめんなさいお……」
('A`)「なん……だと……」
- 23 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:15:39.85 ID:ZaHFCiHK0
-
どうやら私は死んでしまったらしい。
そこから深く話を聞いていると、どうやら私は既に死んでいる人間に殺されたらしい。
そうして殺された私は、どうやら魂なる存在だけどなり、姿形を保っていなかったとのこと。
そこで、あの不細工なもやし野朗は、なにやら厨ニ病まがいの力を使い自分の下へと呼び寄せたとか。
それで、人の記憶を勝手に舐め回すようにしてみて、逆算して、今の私を形作ったらしい。
ちなみに話がこんがらがりそうなので補足しておくと、白豚の名前がブーンで、しなびたもやし男がドクオだ。
川 ゚ -゚)「そうか……。私はゾンビにやられたのか」
('A`)「違う。違わないけど、違う」
川 ゚ -゚)「それより、聞きたいことがある」
('A`)「なんだよ」
- 24 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:18:42.54 ID:ZaHFCiHK0
-
川 ゚ -゚)「いや、ここにいるより前のことを全く思い出せないんだ」
('A`)「あー……はいはい。そうだな。それはそうだ」
川 ゚ -゚)「どういうことなんだ。答えろ不細工」
('A`)「人の手や、人の世界で死んだ場合はそのまま遺体が残る。
勿論、そういう通常の死に方をした場合は、それまでその人が積み上げてきた物は残るが、
人ならざる者や、人が生きる世界以外で殺された場合、遺体は残らず、
なおかつその人に関する記憶が全て根こそぎ消される。
だが、それまでに幽霊や、人ならざる者と接していた場合、
そういった類の者の記憶はそのままになるってわけだ腐れビッチ」
_,,_
川 ゚ -゚)「読みづらいから産業で」
('A`)「人外に
殺されると
記憶喪失」
川 ゚ -゚)「おk把握」
- 26 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:21:10.71 ID:ZaHFCiHK0
-
つまり、こういうことか。
私は人ならざる者に命を奪われたが為に、現実世界では矛盾が発生せざるを得ない。
そういう世界を不安定にする事情を隠すために、その人間そのものが生きていなかったことになるわけだ。
なるほど。だから私に記憶もなく、なおかつ他者にある私の記憶もなくなってしまったわけだ。そうかそうか。
って
川 ゚ -゚)「納得できるか! なんだその話は。ゲーム脳どもが! 私は一人で帰るぞ!」
(;^ω^)「今頃かお……」
付き合いきれない。きっとどこかで頭をぶつけたに違いない。そうだろう。
そう思い込ませ、私はこの家の出口を探す。見つけた。よし、帰ろう。
あれ。
川 ゚ -゚)「私の家はどこだ」
どこに、帰るんだ?
- 29 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:32:55.87 ID:ZaHFCiHK0
-
( ^ω^)「お前は記憶がないんだお。そして、生前の記憶は人々から消えてるんだお」
川 ゚ -゚)「だから馬鹿も休み休み言えと」
('A`)「こんな頭のネジがぶっ飛んだ話をマジでする人間に見えるかよ」
川 ゚ -゚)「いや、見えるけど」
( ^ω^)「ですよねーwwwwwwwww 私もwwwwwそうwwww思いますwwおwwww」
キュッという地面をする音が響いたと思えば、ドクオが無言でブーンを殴っていた。
流石に、ざまあと言わざるを得ない。
('A`)「で、どうするんだ? これから先はお前の自由だ。
俺たちとこの事件を解決するのも、この話を信じずにあてもなく彷徨うのもな」
不細工だが、それは決して嘘をついているとは思えない目をしていた。
本当に、悔しいぐらい不細工だ。でも、嘘をついているとは到底思えない。
- 30 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:39:02.90 ID:ZaHFCiHK0
-
川 ゚ -゚)「ふふ……そうだな」
('A`)「決まったか」
互いに少し笑いあう。
私もドクオも口元を少し緩ませ、小さく笑みを作る。
答えは出た。
川 ゚ -゚)「お前の死んだ魚の目を信じよう。くるしゅうない詳しく話せ」
('A`)「人が決めゼリフ調に言ったらこの扱いか! 畜生!」
川 ゚ -゚)「そうだね。じゃあ話そうか」
('A`)「あ、はい……」
- 31 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:41:33.99 ID:ZaHFCiHK0
-
( ^ω^)「とりあえず粗茶ですがお。どうぞ」
川 ゚ -゚)「あ、これはこれはご丁寧にどうも」
('A`)「おいお前なんで俺のだけ中身が酢なんだよ」
( ^ω^)「では、僕は向こうでテトリスやってますお」
('A`)「いやおい俺の酢なんだけど」
川 ゚ -゚)「では話そうか」
('A`)「あの、酢なんだけど……」
川 ゚ -゚)「話せよ」
('A`)「はい」
半ばヤケクソ気味に、酢を一気飲みするドクオ。
もちろんその後十数秒床で転げまわって、倒れる。
- 35 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:44:14.33 ID:ZaHFCiHK0
-
( ^ω^)「度が過ぎたお……。口直しにこれを」
('A`)「ブーン……やっぱりなんだかんだ言いながら最後は俺の味方になってくれるのか」
見つめ合う二人。
ぼろぼろなドクオに、そっと口直しの飲み物を差し出すブーン。
二人の間に愛が、
( ^ω^)「酢醤油です」
('A`)「表出ろコラ」
芽生えようがなかった。
川 ゚ -゚)「あとでポン酢やるからさっさと話せ。な」
('A`)「なんで酢が好きなキャラみたいにさせてんだよコラ」
( ^ω^)「いいから話せお」
('A`)「何この空気……! 悔しいッ!!(ビクビクッ)」
そんなことを言うと、突然にしてドクオの服が跡形もなく吹き飛んだ。
あらあらポークビッツさんこんにちは。
しかしそんな産まれたまま、ありのままの自分をさらけ出しながらドクオは真顔になる。
- 36 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:46:04.69 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「とりあえず、なんでお前の記憶がないか、ってことだがな」
川 ゚ -゚)「ああ」
('A`)「さっきも話したように、通常なら記憶は残るんだ」
川 ゚ -゚)「通常なら? どういうことだ」
('A`)「通常ってのは人は死後、魂だけの存在になり冥界へと送られることだ」
川 ゚ -゚)「というと、このボロっちい家は冥界なのか?」
('A`)「違う。ここは現実世界だ」
_,,_
川 ゚ -゚)「いや、そんなこと言われても私は死んでいるのだろう?
だとしたら、ここが現実世界というのは矛盾しているじゃないか」
('A`)「確かに矛盾している。つまり、俺らがいること事態が現実世界にとっては大きな矛盾なんだよ」
川 ゚ -゚)「どういうことだ」
- 37 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:48:49.35 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「俺らは死人側の世界にいるべき存在なんだ。
それが現実に世界に存在している時点でおかしい話なんだよ。
だから一番俺らが近い存在概念は、幽霊って状態だな。人に見えないことで、その矛盾をかき消せるんだ」
川 ゚ -゚)「なるほどな……。私やお前らがイレギュラーなのはわかった。
だが、それでどうして私の記憶がないんだ?
私自身の記憶があっても矛盾は発生しないだろう」
('A`)「そうだな。だが駄目だ。人ならざる者や、
人が生きる世界以外で命を奪われた場合は強制的に記憶が消えるようになってるんだ。
ただ、これからの記憶は今までどおり引き継がれる」
川 ゚ -゚)「……つまり、私の生前の記憶は諦めろということか」
('A`)「そうだな。残念だが諦めろ」
川 ゚ -゚)「仕方ない……な」
流石に少し落ち込んでしまった。
やはり記憶というのを無くすと不安で仕方ない。
一体私はどういう風に生きていたのか、そもそも私とはどういう人間だったのか。
だが、どれだけ嘆き悲しんでも記憶が戻ってくるわけではない。
( ^ω^)「どうでもいいけどお前全裸でかっこつけんな」
('A`)「うるせえ俺は裸族の神だ」
川 ゚ -゚)「らお」
- 38 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:52:55.70 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「まあいい。お前ら調査に行くぞ。大体犯人のいる位置は特定している」
( ^ω^)「流石ドクオさん神の力とかぱねえっす」
('A`)「よしもっと褒めろ。俺を褒め称えろ」
( ^ω^)「その情けない魚肉ソーセージにラー油練りこむぞ」
('A`)「あ、はい……」
そんなこんなで、ドクオとブーンは外に出ようと、出入り口まで歩く。
そして扉に手をかけ、開こうとした時だった。
('A`)「おお。そうだ。女よ」
川 ゚ -゚)「なんだ」
('A`)「お前、名前は覚えているか?」
川 ゚ -゚)「名前……か」
- 39 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:53:55.35 ID:ZaHFCiHK0
-
記憶は全てなくしてしまった。だというのに、何故ドクオは私にそんなことを聞くのか。
馬鹿か、と口にしようとした、が。
そんなわかりきっていることをわざわざ聞いて来るだろうか。
少し、考える。
自分の名前のことを。
私の呼称は、一体何か。
……頭が痛い。耳鳴りがする。どれだけ思い出そうとしても、頭の中は真っ暗だ。
どれだけ脳内を探っても、出てこない。
これが記憶を失うということか。
思い出せなくて、何か喉に詰まっているような感覚ではない。
そこには何もない。だから何もつかめない。
そう感じていた。なのに、
川 ゚ -゚)「素直、クールか」
何故か私はそう呟いていた。
- 41 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:55:49.41 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「そうか。知っている」
何故知っている、とは思わない。
理由もなく、私はこいつが知っていてもおかしくないと思ってしまう。
何故か。
( ^ω^)「ドクオは神様だから全てわかっているんだお」
川 ゚ -゚)「そうだったのか……」
なるほど。神様だったのか。
なら、納得がいく話だ。
だが、
川 ゚ -゚)「気持ち悪い奴だ」
素直に、私はそう思った。
- 43 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 00:56:41.36 ID:ZaHFCiHK0
-
* * *
('A`)「うはwwwwwwエアーキスやべえwwwwww」
街中で一人発狂している馬鹿がいた。
( ^ω^)「通り過ぎる女性に顔からぶつかるとかないわ」
川 ゚ -゚)「おい、あの女子中学生縞パン穿いてたぞ!」
(^ω^;)「あんたもかお! 真面目な展開かと思ってたのにお!」
('A`)「縞パンだと……おいどこだどこにいる答えろおい」
川 ゚ -゚)「残念ながら見失いました」
('A`)「この役立たずがああああああ」
( ^ω^)「いいからお前は早く役に立てお」
- 44 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:00:25.55 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「残念だったな。既に役に立ってるんだよこれが」
( ^ω^)「なん……だと……」
('A`)「実は、犯人はこの近くにいる。場所は特定できないがな」
( ^ω^)「流石ドクオさん! ということは既に対策も練ってるということですかお!」
('A`)「勿論……何も練ってませんwwwwwwwwサーセンwwwwwwwww」
( ^ω^)「おいこいつ早くつまみ出せ」
そんな感じで二人がやりとりをしている間、私は少し違和感を覚えていた。
この二人についてではない。そしてこの内容は二人に報告したほうがいい。それはわかっている。
縞パン女子中学生に目を奪われていたが、それ以外に見てしまうものがあった。
- 45 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:04:27.79 ID:ZaHFCiHK0
-
赤く、そして長い髪の女。
別段これだけならただのDQNで片付く話なのだ。ただ、何かがひっかかっている。
私はこの女を、見たことがある気がするのだ。
今はない記憶。その喪失した過去から目に焼きつかざるを得なかったもの。
あの時感じた恐怖を、戦慄を、私は覚えている。この身体に刻み込まれた形なきモノ。
そう思った瞬間、私は駆け出していた。
その女に向かって。何、人違いだったら通り抜けて済む話だ。
だがもし、通り抜けなかった場合は? ……決まっている。事を起こした張本人だ。
しかし、走り出した筈の私の足は止まっていた。
……武器も何も持たない状態で突っ込んでも意味がない。
一度立ち止まってしまうと、もう走り出すことなんて出来ない。
そう思い、女を眺めていると、
人が、
突然に、
消えた。
- 47 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:11:08.03 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「動き出したか!」
( ^ω^)「よしきたお!」
人が突然消えたのを境に、ドクオとブーンは動き出す。
一瞬で私の前を通り過ぎ、走り抜けていく。
動かなくてはならない。そう思っているが、
私は目の前の光景を信じられずに何も残っていない空間をただただ眺めている。
こうやって私も殺されたわけだ。……ただ一点、生き返っているということを除いて。
川 ゚ -゚)「私は……」
どうする。
戦う力も持たず、魂だけという存在だ。
('A`)「おい、ブーン! 手当たり次第に特攻しろ!」
( ^ω^)「任せろお! 専門分野だお!」
するとブーンは両手を大きく広げ、力強く地面を蹴った。
小さく風が吹き始める。
( ^ω^)「おおおおおおおおおおおおお!!」
その姿はまるでブレーキを失った暴走車である。
一切曲がることや、止まることは考えていない様子で、街中を走り抜けていく。
- 48 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:12:47.77 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「俺は後ろで踊ってる!」
そういうや否や、再び生後間もない姿でおはようございます。
全く気がつかない速度でドクオは一人コミカルアドベンチャー。
シャーミンもびっくりな幸せダンスを踊りながら、私を見つめる。
('A`)「クーよ」
川 ゚ -゚)「なんだ祖チン」
('A`)「あいつは、暴走したトラックにひき逃げされたんだ」
川 ゚ -゚)「……なるほど。で、それがどうしたんだ」
('A`)「別に同情してやれとも、悲しんでやれとも言わない。俺が言いたいのは、
人は死後、恨みや強い後悔を持ちながら姿を手に入れると特殊能力が手に入るんだ」
川 ゚ -゚)「特殊能力だと?」
('A`)「そうだ。例えば生前の自分に関係がある能力や、強い怨念の原因だったりと、
その種類はさまざまだが、あいつの場合は恐らく轢き逃げに強い思いがあったんだろうな。
そして結果があれだ。直進しか出来ないが、正面で相対するならほぼ無敵の力だ」
そして、と言葉を繋ぎ、私を再び見る。
ポークビッツはいつしか、煙草ぐらいの大きさへと進化していた。
- 49 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:16:58.18 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「お前も同じだクー」
川 ゚ -゚)「私も……同じ……」
('A`)「さあ、それを知ってお前はどうする?」
ニヤリと、ドクオが笑う。
特殊能力。
そんなものが、私にも備わっているというのか。
だとすれば、もし力があるのだとすれば、一体どうする。
( ^ω^)「ちょwwwww止まんねwwwww」
ふと目を離した隙に、ブーンは地面さんとこんにちは。
見事なまでに顔から滑り込みスライディング。暴走したのは足ではなく顔面だった。
川 ゚ -゚)「特殊能力、ダメ絶対」
('A`)「ですよねー」
そんなことをしているおかげで、犯人を見失った。
やっぱり平和が一番ですよね。私もそう思います。
- 51 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:20:30.27 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「死力は尽くしたんだが……」
( ^ω^)「お前全裸で踊ってただけじゃねーか」
やっぱり平和だった。
('A`)「仕方ない。行きつけの情報屋のところに行くか」
( ^ω^)「心の傷に誰かホイミを」
川 ゚ -゚)「キアリー! キアリー!」
(^ω^ )「おい誰が毒状態だ」
そうこうしながら、ドクオが道を案内する。
何度も細い道を歩き、何度も路地を曲がる。
こんなところに本当に店があるのか? と思ってしまうほどに、複雑な道のり。
- 52 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:23:14.81 ID:ZaHFCiHK0
-
川 ゚ -゚)「しかし流石情報屋というだけあるな。よっぽど認知されにくい場所にあるのか」
('A`)「え? いや、なんとなくふいんき(まだ変換できない)出すために回り道してるだけだけど」
そして、さっきも見たようなお店を通過する。
何故だろう。かれこれこの店をもう3回は見ている気がするんだが。
( ^ω^)「ドクオ……素直に言えお。迷ったんだろお」
('A`)「ま、まままま迷ってないわ! ちょっと迷路気分で歩いとるだけや!」
( ^ω^)「あと、ショボンのバーはそこな」
('A`)「あれれー。さっきから見たことある店だよー」
川 ゚ -゚)「めっちゃ普通やんけコラ」
木製の扉。
店頭にはバーボンハウス、と小洒落た店名が書かれた看板が置かれている。
ドクオは全てを流すかのように、私たちを無視して扉の取っ手を掴み、ゆっくりと引く。
- 53 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:26:20.13 ID:ZaHFCiHK0
-
(´・ω・`)「やあ。いらっしゃい。ようこそバーボンハウスへ」
開かれた扉の微かな軋みが店内に響く。
黒のスーツに、白のYシャツ。
そしてネクタイも巻いたエリートサラリーマン顔負けのイケメンが、カウンターを超えた先に立っていた。
('A`)「ようしょぼくれ。情報を聞き出しにきた」
一方、訪れた男の方はそれはそれは残念な具合に全裸である。
伸びきった髪がその悲惨さを物語っている。どうしてこうなってしまったのだろう。
(´・ω・`)「おやおや。慌しいな。とりあえず落ち着いて話を聞こうか」
('A`)「ああ」
きゅっ、きゅっ、というグラスを磨く音が響いている。
そしてドクオも差し出されたおしぼりで自分のマスコットキャラをきゃっ、きゃっと磨く。
小さく流れるジャズのBGMは、店の雰囲気をよく醸し出している。
薄暗くもどこか柔らかい灯り。そして重厚な木製のカウンター。
私たちはそのカウンター越しにバーのマスターと顔を合わせ、座る。
- 55 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:28:39.71 ID:ZaHFCiHK0
-
(´・ω・`)「これはサービスのテキーラだよ」
すっとマスターから差し出されるロックグラス。
お店ならではの氷に、透明感ある茶色の液体が注がれている。
('A`)「ありがとうよ。久々の酒だ」
(´・ω・`)「喜んでもらえたならなにより。……それより、そちらの女性は一体?」
ドクオはロックグラスの中身を一気に呷る。
それに釣られて、私も一口含む。ああ、喉が焼けるように熱い。
酒というのはこんなにも美味しいものだったのか。
('A`)「ああ。こいつは人外に殺された魂で、クーっていうんだ」
川 ゚ -゚)「どうもマスター」
(´・ω・`)「これはご丁寧にどうもどうも。
それにしても珍しいね……。魂だけっていっても、彷徨うことなんてそうそうないのに」
- 56 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:35:36.35 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「そうだろう。今はその人外を追ってるんだ」
( ^ω^)「赤い髪をした女で、最近人間を無差別に消している奴だお」
(´・ω・`)「なるほど。そういう女性ね……。うん。知っているよ」
('A`)「流石ショボン。やっぱ困ったときはお前に頼るべきだな」
(´・ω・`)「戦闘能力は優れているけれど、こういう能力は君の専門外だったね」
('A`)「そうさ。だからお前に聞きにきたんだ」
(´・ω・`)「……君の素行については理解しがたいことが多いけれど、神様だからね。仕方ない。教えよう」
('A`)「イケメンをも屈服させる俺の凄さ。どうよお前ら」
( ^ω^)「黙れ仮性包茎」
川 ゚ -゚)「黙れブサメン」
('A`)「結局世の中顔か畜生!」
この世の真理を叫びながら、一瞬沈黙が訪れる。マスターのショボンへと目をやると、彼は何故か目を瞑っていた。
静寂の最中、中身を失くしたロックグラスから、氷が溶け、その音が店内に響く。
二回目の氷解音が鳴ると、静かにショボンが目を開け、ふう、と小さく溜め息を漏らす。
- 57 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:37:53.80 ID:ZaHFCiHK0
-
(´・ω・`)「わかったよ。その犯人の情報」
('A`)「流石ショボン。やっぱりお前の能力は助かるぜ」
(´・ω・`)「脳内がほとんどインターネット状態だからね。戦いには不向きさ」
('A`)「お前ほど頼れるサポート役はいねーよ。これからも頼むわ」
そういって、ドクオは綺麗に拭き終えたおしぼりをショボンに返す。
表情を一切変えず、ショボンは思いっきりドクオの顔に絞りかすを投げつけた。
(´・ω・`)「うん。こちらこそよろしくね」
('A`)「ははは。生きてるって臭いんだなあ」
(´・ω・`)「そうだね。じゃあドクオの脳内に情報を直接送りつけるから、
さっさとその粗末なものを縛って帰れこの営業妨害野朗」
('A`)「わかりましたよ腐れ眉毛。今度一本ずつ引き抜いてやるから待っていやがれ」
川 ゚ -゚)「ややっ 険悪なムードが」
( ^ω^)「いつものことだお。十割ドクオが悪いからほっとけばいいお」
(´・ω・`)「それじゃ、送るからね」
- 59 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:41:23.83 ID:ZaHFCiHK0
-
ドクオの言葉は待たず、ショボンが目を閉じる。
今度は少し苦しそうな表情になり、何かを念じている。恐らく情報を送っているのだろう。
('A`)「やあっ……! らめえっ……! なかっにぃ! 入ってくるよおおおぉぉおお!」
誰も望んでいない嬌声が店内を包み込んだ。むかつくからおしぼりをドクオの口に詰め込んだ。
('A`)「くふぇwwwwwwやぶぇwwwwwくっふぇwwwwwwww」
まだ元気だったので、明日が見えなくなるぐらいにねじりん棒を押し込む。
「ぐふぇwwwwwくふぇwwwちょwwwwwふぉれはwww」と余裕が見えていたが、
徐々に顔が青ざめ、静かになった。よかった。
(´-ω-`)「……ふう」
( ^ω^)「お疲れ様だお」
流石に疲れるのか、ショボンは少しぐったりとしていた。
とはいっても、そう感じただけで、表情は変わっていない。流石のポーカーフェイスというべきか。
- 60 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:42:53.25 ID:ZaHFCiHK0
-
(´・ω・`)「ああ……大丈夫。それじゃ情報は送りつけたからそれの後処理よろしくね」
( ^ω^)「把握だお。いつも悪いお」
川 ゚ -゚)「(あれ、主人公ってむしろこれブーンじゃね)」
( ^ω^)「それじゃ、また来るお」
(´・ω・`)「ああ。またね」
身内同士で盛り上がられると、新参の私は非常に喋り辛いのでしたまる。
で、用も済んだから私とブーンは仲良くドクオのお粗末君を掴み店を後にした。
- 63 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:46:06.16 ID:ZaHFCiHK0
-
川 ゚ -゚)「さて、これを起こさなきゃならないんだが」
握っていた手を離し、地面にキスをさせる。すまない地面。
( ^ω^)「だお。ふむ。……あー縞パンニーソの幼女が歩いてるおー」
川 ゚ -゚)「なんという棒読み。これは間違いなく……」
('A`)「……なんだと! どこにいる! おい!」
川 ゚ -゚)「やっぱり起きると思ってました」
そろそろこの展開にも慣れてきた。
どうせドクオのことだから、というご都合主義が全開なのはわかってる。
( ^ω^)「オラ! とっとと案内しろお!」
('A`)「く、くそう! 幼女で釣るとか卑怯だぞ!」
川 ゚ -゚)「いや、釣られるお前が明らかに悪い」
('A`)「ですよねーしってましゅうううう」
川 ゚ -゚)「よーそろー」
最早肉体言語が一番手っ取り早い。全身全霊こめて鼻フックをぶちかます。
言葉で伝えるよりも、体で伝える方が早いとは、昔の人はやはり偉大だ。
だから私もここにいる。心臓止まってるけどな。
一方ドクオは恥ずかしいのか腫れた鼻を隠しながら、全裸で道案内を開始した。
- 64 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:50:14.52 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「それはなんと……」
( ^ω^)ゴクリ……
('A`)「この山の中だ!」
( ^ω^)「な、なるほど!」
川 ゚ -゚)「確かにこの中を探せばいつか見つかる!」
('A`)「だろう! さあ見つけ出すぞ! 総員、散れい!」
そして私たちは山の中で別行動を取り始めた。
('A`)「あ、あれ。突っ込みなしでマジで行きやがった……」
そんな呟きを完全に放置して。
- 65 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:51:31.76 ID:ZaHFCiHK0
-
とはいったものの、
川 ゚ -゚)「困ったな。その場のノリで散ったのはいいが、如何せん道などわからん」
呟き空しく、山中へと消えていく。
気がつけば再び私は一人になっていた。
だが、ここに私を殺した奴がいる。全てを奪った奴が。
川 ゚ -゚)「……首を洗って待っていろ。ギャグで済ますと思うなよ」
記憶を奪い、全てを奪い、私は何もかもを失った。
こんなよくわからない二次元に巻き込まれ、気がつけばもうかっちりはまり込んでしまっている。
しかし、私に力は無い。仮に相対しても、奪われた分を奪い返す術がない。
それでも。
それでも私はやらなきゃならない。
「……おやおやあ? こおんな山中に迷いこんだのかああああああい?」
突然響く声。発信源は恐らく真後ろ。いつ現れたのか。わからない。わからないが、
私は知っている。この声を。その主を。どこで? いつ? わからない。
だが、
この身に確かに、刻み込まれているんだ。
- 67 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:53:56.22 ID:ZaHFCiHK0
-
( ^ω^)「なんで蚊って死んでまで霊体化してんだお畜生」
ぱちん、ぱちんと自分の腕を叩く音が響いていく。
( ^ω^)「霊状態で死んだら……もう後がないじゃないかおお前ら……」
一人きりの山の中。僕は蚊に黙祷を捧げていた。
可哀相に。恐らく自分が死んだことにも気がつかず生命活動のために血を吸いに来たのだろう。
命を失っても尚、自分の生きる意味を見出している蚊に、僕は敬意すら覚える。
( ^ω^)「というか……」
( ^ω^)「なんでその場のノリで能力発動してこんな奥まで来ちゃったんだお」
僕の能力は一度発動すると、微妙に宙に浮くため、地面に足がつかないと止まれない。
ブレーキなしの移動能力特化。使い方によってはかなり便利だが、使い勝手はかなり悪い。
そのため、今も気がつけばこんな山奥に来てしまったのだ。
( ^ω^)「まあ、戻ってたらそのうち会えるお」
能天気なことを考えながら、僕は再び走り出す。
( ^ω^)「どこかおー! 出て来いお人外ー!」
- 68 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:55:53.95 ID:ZaHFCiHK0
-
さて。
俺は今一人で山中を探索しているわけだが。
実際空手でこんなだだっ広いところをちまちま探してなんかいられるかってんだ。
勿論奴の居場所なんて掴んである。ショボンが与えた情報だ。
それに自分の力を掛け合わせればどこに留まっているかは簡単に推測出来る。
恐らくもう直にはち合うだろう。
だが、その前にだ。
('A`)「くそ……こんなことなら服を着ればよかった」
蚊があまりによりすぎて痒すぎる。
なんだ。そんなに俺の存在の証明品は魅力的か。
('A`)「さて、そろそろ行くか」
充血したそれは、俺をあざ笑うかのように大きく円を描いていた。
- 69 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 01:58:01.60 ID:ZaHFCiHK0
-
ノパ听)「お前……あの時私が消した奴じゃないか」
川 ゚ -゚)「お前が……あの時私を消した奴なのか」
相対する殺した者と殺された者。
そしてまた殺す者と、殺される者として睨み合う。
どちらが生き残るか。どちらが死に絶えるか。
ノパ∀゚)「ひゃははははあああああwwwwwww どうして生きてるのかなあwwwwwwww」
気が狂った高笑い。狂喜乱舞。
急斜面となっている山道。私を見下ろす形で女は赤く長い髪と首をだらりと垂れ下げる。
そして双眸をぎょろりとひん剥きながら私を一瞥。
川 ゚ -゚)「お前に答える理由は無い。それより答えろ」
私に力は無い。成す術なく消されてしまうかもしれない。
それでも、私は屈するわけにはいかない。許さない。絶対にだ。
- 70 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 02:02:38.88 ID:ZaHFCiHK0
-
川 ゚ -゚)「何故霊体を狙うんだ」
ノパ听)「おいしいじゃないかあ……」
川 ゚ -゚)「おいしいだと?」
ノパ∀゚) 「おいしいよね。だって……
大好きな霊媒体のお肉だもんねええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
駄目だ。狂っている。話にならない。
ノパ听)「それより、はじめようかああ……」
だらりと上半身を垂れ下げる女。
貞子のように髪が揺れ、ふらりふらりと不規則なリズムを全身で刻む。
突如顔の表情をゆがめ、高笑いを再開する。しかし驚くわけにはいかない。
- 74 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 02:16:20.27 ID:ZaHFCiHK0
-
再び姿が消える。それだけならよかった。
それだけなら先ほどと同じように避けられた、かもしれない。
だが、状況は大きく変わってしまった。まさか辺り一面を火で包まれるとは思ってもいなかった。
あまりにも実力差がありすぎる。やはり駄目か。私一人では戦うことは愚か、逃げることもままならない。
ドーム状になった炎は、空気を燃やしながらその火力を更にあげていく。
その結果、逃げ道すら奪われ、身動きが取れなくなった。
悔しいな。全く。
折角生き返ってもこの結果だと意味が無い。
駄目だな。やはり無理だったのだ。
ノパ∀゚)「つっかまえったあああああああああああwwwwwwひゃあああああああwwwwww」
気がつけば後ろを取られており、
鈍器で殴られたのではないかと思うほどの衝撃を背中から受け、地に叩きつけられる。
川 - )「ぐ……ぁ」
嗚咽が漏れる。自然に涙が零れ落ちる。痛い。そんな言葉で片付けられるようなものではない。
意識を持っていかれるのではないか、そんな懸念すらよぎった。
ほぼ神経が麻痺しきってしまっているが、倒れた背にマウントを取るようにして乗りかかられる。
- 76 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 02:29:15.28 ID:ZaHFCiHK0
-
ノパ∀゚)「じゃああああああwwwwwwwwwwww終わりだねえええええwwwwwwww」
すまないな。と呟き、私は全てを投げた。
生き返れたというのに、私はまた帰るのか。悔しいな。本当に。
このままやられておしまいか。無力のまま。何も出来ずに。
嫌だ。
私は 、 生きて 、 いたいんだ 。
「おいおい。勝手なことしてくれてんなあ」
そんな呟きが聞こえ、ああ、来てくれたのか、と私は笑う。
だが、私の中の何かが砕け散り、脳内回路が焼ききれるのでないかというような頭痛が起きる。
川 - )「ああああああああああああああああああああああ!!」
ノハ;゚听)「なんだああああああああ????wwwwww」
空気中に含まれる水分が凍っていく。
辺り一面を覆いつくす銀世界。白。白。白。
- 77 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 02:37:37.74 ID:ZaHFCiHK0
-
ノハ;゚听)「何が起きているんだあああああああああ!!」
火を放とうと手のひらから沸き出さすが、何度も凍り、幾度も溶け、再び凍る。
その連鎖を繰り返し、火は熱を失い、全く効果を発揮できない。
突然現れたその氷によって、相手の動きを封じ、私は体制を整える。
そして、私のすぐ隣にいる男の顔をちらりと見やり再び女の方を向く。
川 ゚ -゚)「私一人だったら良かったのにな」
('A`)「はっ。ヒーローってのは遅れて登場するもんさ」
川 ゚ -゚)「本当に死ぬかと思ったぞぷんすこ」
('A`)「別にwwwwwwwwもうwwwwww死んでるじゃんwwwwwww」
川 ゚ -゚)「ですよねーwwwwwwww」
一本の矢で駄目なら、三本の矢を。でも燃えると意味がない。
ノハ;゚听)「なんだよおおおおおおお邪魔すんなよおおおおおおおおお!!!」
('A`)「まあ、クーの覚醒も見られたことだし俺もそろそろやるかね」
そういうと、厨ニ病患者もびっくりな勢いで突風が吹き荒れる。
光が溢れてゆき、あたり一面を更に白で染め上げていく。
- 79 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 02:41:18.52 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「神ってのはな、絶対的な力の差があるから神になれるんだよ」
ノハ;゚听)「ちょっとおおおwwwwwそれはあああwwwwwwwwww」
('A`)「じゃあな噛ませ犬」
呟いたその瞬間、
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ノi|lli; i . .;, 、 .,, ` ; 、 .; ´ ;,il||iγ
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`;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `, ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´
辺り一面が炎上した。
- 80 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 03:00:39.32 ID:ZaHFCiHK0
-
川 ゚ -゚)「お前少しは火力を考えろよ……」
('A`)「守ってやったんだから文句言ってんじゃねーよ」
現実世界の物である木々には影響を及ぼしていないが、霊体である女のほうは完全に沈黙した。
爆破跡が見渡せるようになり、中枢を見てみると、
ノハ )「ぉぉおおお……」
生きていた。
('A`)「さって。それじゃ、お前はあるべき場所に帰ってもらいますかね。
本来俺の役目じゃないんだが、まあこの際仕方ないだろ」
ノハ )「あああぁあ……」
ドクオが静かに手をかざすと、女の体が白く光りだす。
しばらくすると光は筒状に放たれながら、爆発するのではないか、と思ったその時、
姿形全く残さず消え去っていた。
('A`)「さあ、帰るか」
身を翻し、ドクオは私の方を向く。
終わったのだ。私を殺した女は死んだ。全てが終わった。
良かったじゃないか。全てが終わって。これで悔いなく私は死ぬことが出来るだろう。
だったら、だったらどうして私は今こんなに、
気持ちが晴れないのだろうか。
- 82 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 03:11:31.06 ID:ZaHFCiHK0
-
川 ゚ -゚)「なあドクオ」
('A`)「あん?」
川 ゚ -゚)「私は、どうしてここにいるのだろうな」
('A`)「なんだよ。付き合ってくれってか? 喜んで」
川 ゚ -゚)「ようし氏ね。お前に聞いた私が馬鹿だった」
('A`)「やーい! バーカバーカ!」
川 ゚ -゚)「まあいいか。戻ろう」
そういい、振り返る。
振り返り、帰路に着こうとしたのだが……
そこには煤けたボロ人形が立っていた。
- 89 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 04:31:18.55 ID:ZaHFCiHK0
-
( ω )「おい……」
(;'A`)「あ、あれブーンさん?」
( ω )「てめえら……ようやくして見つけたと思えばクソったれ……
何良い話で〆ようとしてやがんだコラボケ……何大爆発しちゃってんだよ……」
('A`)「ぶっ放しちゃってサーセンwwwwwwwwwww」
( ゚ω゚)「おwwwwwwまwwwwwwえwwwwwグベヘェ」
('A`)「ぶ、ぶうううううううううん!! 帰るか」
川 ゚ -゚)「ああ、帰ろう」
ドクオがブーンを引きずりながら山道を下っていく。
それに着いていきながら、私も山道を下る。
- 90 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 04:36:19.01 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「こいつ……重いな……」
川 ゚ -゚)「さっさと回復させればいいんじゃね?」
('A`)「ですよねー」
今度は別に手を差し出すわけでもなく、突然ブーンの体が光りだす。
白光が止んだと思えば、あっという間に戻っていた。
('A`)「うら、とっとと歩け」
( ^ω^)「その力本当に反則臭いお」
('A`)「ほっとけ。俺は死神だからな。死んでるもんに対しては常識破りなんだよ」
( ^ω^)「で、死神さまお。そろそろ職務も思い出そうかお」
('A`)「ですよねーwwwwwそろそろ話さなきゃですよねーwwwww」
( ^ω^)「いいから真面目にやれお」
('A`)「キリリッ」
そう言ってから、しばらく沈黙が流れた。
一言も話さず、私たちは山道を下り続ける。
- 91 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 04:37:14.14 ID:ZaHFCiHK0
-
無言のまま私たちは出入り口付近まで歩き、
そして山を出終えた後、ドクオが立ち止まる。
('A`)「なあクーよ」
川 ゚ -゚)「なんだ」
('A`)「生き返るってのは、禁断の領域だ。命ある者は皆死んでいく。
その流れに背き、再び元の世界で生きるなんてことはあっちゃならない」
川 ゚ -゚)「何が言いたいんだ」
('A`)「通常なら死人が生き返った場合、
俺はその処理をして、魂を冥界へ送り付けなきゃいけないんだ」
( ^ω^)「ドクオ、いつになく真面目だお」
('A`)「馬鹿野朗。俺は死神だ。職務はまっとうしなきゃならねえんだよ。
それにいつまでも黙っておくわけにゃいかねーだろ」
( ^ω^)「ですよねー」
('A`)「だからクーよ。俺はお前の魂を送らなきゃならない」
川 ゚ -゚)「なんだそんことか。別に構わないぞ。
私は一度死んだ身だ。今となっては感謝している」
('A`)「だがな」
- 92 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 04:38:27.00 ID:ZaHFCiHK0
-
('A`)「内藤のように、イレギュラーな存在もいる」
( ^ω^)「確かに僕は冥界になんて行ってないお。ついでにドクオの仕事も手伝ってるお」
('A`)「そういうこった。だからよ、クー」
そう言うと、ドクオは口元を吊り上げ、笑う。
そいつはもう、これまでに見たことないと断言できるほどに気持ち悪く、
最高に、
('∀`)「俺のところで、働かないか?」
気持ちのよい笑顔だった。
- 94 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 04:40:25.11 ID:ZaHFCiHK0
-
* * *
古ぼけた建造物。それは街の外れにある小さな小さな小屋のような住居。
そこには背が小さく髪が伸びきった不細工な男と、
それなりの身長とそれなりの容姿の男が、今にも壊れそうな段ボール箱の上に座っている。
('A`)「ブーンよ。これは事件だ」
( ^ω^)「またですかおど畜生」
外から見たこの家は、それはそれは悲惨なもので、壁という壁は穴だらけ。
挙句、屋根は大きな木の板を上から載せたようなダンボールハウスもびっくりな出来栄えだ。
('A`)「よく聞け! あの野朗またやりやがった!」
( ^ω^)「ちょwwwwまさかまたかおwwwww」
('A`)「あいつの居場所はわかってるから行くぞオラ!」
( ^ω^)「あの畜生また隠してたケーキ食いやがったのかお!」
('A`)「行くぞ畜生! 今度という今度は霊魂丸ごと冥界送りにしてやるよ!」
- 95 名前:◆2ucFzRmltkGi:2009/08/26(水) 04:44:43.77 ID:ZaHFCiHK0
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( ^ω^)「待てやくらああああああああ!!」
('A`)「待てちくしょうがああああああ!!」
川;゚ -゚)「誰が待つかもやし炒めコンビが!」
ひゃっほーい!と叫びながら、私は街中を駆け抜けていく。
気がつけば二人ともが私の行為に気づき、追いかけてきていた。
そんな二人を撒き、私は人通りの多い場所へと出る。
きっとこれからの叫びは誰にも聞こえないだろう。それでも構わない。
ただそれでも、私は叫ばずにはいられなかった。
川;゚ -゚)「私は死んでいる! もう生き返れない!」
街中で、人間に気づかれることなく私は叫ぶ。
人々はそんな彼女の必死の剣幕にも、必死の咆哮も、誰にも伝わらない。
ただ過ぎ去り、通り抜けていく。それでも私は気にせずに、人目もはばからずに叫ぶ。
今の気持ちを。今の私の心情を、ただ一言にまとめて。
川;゚ -゚)「くっやしいけど! 死んでからもむっちゃ楽しいぞー!!」
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