|゚ノ ^∀^)にとってはそれが真実だったようです 若干閲覧注意
3 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 22:53:19 ID://EhbzfcO

 死体の状態は、然程複雑ではなかった。

 切り刻まれた首、裂けた頸動脈。
 死因は明らかだ。
 傷の付き方が綺麗だったため、凶器が刃物であることも分かった。

 遺体の身元だとか、現場だとか、死因だとか、それらは全て判明していた。
 けれども、10年経った現在も、その事件は未解決のままである。

 犯人が誰なのか、凶器の刃物がどこにあるか。
 その二つが証明されなかったのだ。

 容疑者がいなかったわけではない。
 第一発見者である、被害者の夫。
 彼が真っ先に疑われた。被害者は浮気を繰り返していたらしいから、動機もある。

 さらに、容疑者の自宅──同時に被害者の自宅でもあり現場でもある──からは、
 ナイフが一本行方不明になっていた。
 そのナイフこそが凶器であり、家主こそが犯人であると、誰もが信じて疑わなかった。

 が。
 如何せん、証拠となるものが一つもなかった。
 警察の厳しい取り調べにも、彼は「やっていない」と答えるばかり。

 結局、真実は明かされぬままに、時が過ぎた。

4 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 22:54:16 ID://EhbzfcO



|゚ノ ^∀^)にとってはそれが真実だったようです



.




5 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 22:55:56 ID://EhbzfcO

|゚ノ ^∀^)「お父さん」

( ´∀`)「……」

|゚ノ ^∀^)「夕ご飯、出来たよ」

( ´∀`)「……」

 茂名レモナは溜め息をつくと、無言のまま窓を眺める父の肩を叩いた。
 ようやく、父がレモナに顔を向ける。

|゚ノ ^∀^)「ご飯」

( ´∀`)「……モナ」

 レモナの言葉に頷き、彼は卓袱台の前へ移動した。
 向かいに座ったレモナが「いただきます」と呟く。
 父は何も言わず、焼き鮭に箸をつけた。




6 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 22:57:32 ID://EhbzfcO

|゚ノ ^∀^)「今日ね、お仕事から帰る途中、野良猫を見たの」

( ´∀`)「……」

|゚ノ ^∀^)「親子かな、大きいのと小さいのが一匹ずつ。可愛かったよ」

( ´∀`)「……」

|゚ノ ^∀^)「撫でようと思ったけど、近付く前に逃げられちゃった」

 レモナの声と、食器の音だけが居間の空気に溶けていく。
 静かだった。

|゚ノ ^∀^)「……鮭、ちょっと甘いかな。お醤油いる?」

( ´∀`)「……」

 答えはなかったが、レモナが卓袱台の中央に醤油を置くと、父はそれを取って鮭へと垂らした。
 次に何を言おうかとレモナは考え、結局、開いた口に漬け物を放り込んだ。




7 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 22:58:21 ID://EhbzfcO

 沈黙。
 かちかち、箸と食器がぶつかる。
 ぽりぽり、レモナの口の中で漬け物が砕ける。

 人の声が恋しい。

|゚ノ ^∀^)(テレビ、つけようかな)

 ちらりとテレビを見遣る。
 が、すぐに諦めた。

 10年前の「事件」以来、父は、テレビや新聞などを嫌がるようになった。
 今レモナがテレビの電源をつけてしまえば、彼はすぐに食事を中断し、
 寝室にでも行ってしまうだろう。

|゚ノ ^∀^)「……美味しい?」

 その一言を最後に、2人は黙々と食事だけを続けた。



*****




8 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 22:59:39 ID://EhbzfcO


 10年前、この茂名家で殺人事件が起きた。

 被害者はレモナの母。
 現場である両親の寝室や遺体の状況から、他殺であることが断定された。

 捜査の結果等は、冒頭で述べた通り。

 容疑者として挙げられたのはレモナの父。
 メディアも警察も、彼を犯人のように扱った。

 証拠が見付からなかったことは、決して幸いだとは言えない。
 そのせいで容疑が完全には晴れなかったのだから。

   (  ∀ )『やっていません……私は、何も……』

 父の憔悴しきった姿が、今でもレモナの脳裏を過ぎる。

 皆から殺人犯だと言われ続ければ、そりゃあ辛かろう。




9 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:00:56 ID://EhbzfcO

 間もなく、事件の話題はメディアから消えた。
 だが、世間が忘れたとしても、近隣の住民はどうだ。
 彼らから記憶が消える筈がない。


『絶対にあの人が犯人に決まってる』
『奥さんとの仲も悪くなってたって聞くし』
『犯罪者が近所にいるなんて恐ろしい』


 茂名親子へ向けられる視線の冷たいこと。

 現代では珍しささえ覚えるほど近所の付き合いが深い地域だ。
 それ故に事件の残す影響は強く、また、2人に対する態度も分かりやすかった。

 気の弱い父は、引っ越しなんてしたら罪を認めて逃げたようなものだぞという
 祖父母の無責任な発言を鵜呑みにし、この地に留まることを決めた。
 それは間違いだったと、今更言っても仕方のないことだが。

 白眼視するのは大人だけではない。
 当時11歳の小学生だったレモナには、同級生の揶揄が一番辛かったように思う。

   |゚ノ  ∀ )(お父さんが犯人なわけない)

 そんなレモナの主張は誰にも届かなかった。



*****




10 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:02:23 ID://EhbzfcO


|゚ノ ^∀^)「お父さん、行ってくるね。
       お昼ご飯、冷蔵庫に入ってるから。あっためて食べて」

 朝。
 レモナは身支度を整えながら、父に声をかけた。

 いつも通り、父から反応は返ってこない。ぼんやりと壁を見つめている。

 10年前から、ずっとこんな調子だ。
 やる気というか、生気が抜けきったような。
 おかげで仕事をすることもなくなったので、今ではレモナの収入だけで食い繋いでいる。

|゚ノ ^∀^)「……行ってきます」


.




13 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:03:48 ID://EhbzfcO


 家を出て少し歩くと、見知った男に声をかけられた。

(`・ω・´)「やあ、レモナちゃん」

|゚ノ ^∀^)「あ……どうも」

 ぺこりと頭を下げる。
 男は「おはよう」と微笑んだ。

 名は、シャキンといったか。
 去年で定年を迎えた、「元」刑事。
 10年前の事件で知り合った。

(`・ω・´)「これから仕事かい」

|゚ノ ^∀^)「はい。シャキンさんもですか?」

(`・ω・´)「いいや、おつかいを妻に頼まれてね。
      仕事は昼からだ」

 定年退職後の今は、どこだかの民間企業で警備の仕事をしているらしい。
 レモナの父より年上なのに、シャキンの方がよっぽど活気に溢れている。

 事件の際、両親の不仲や父の行動についてしつこく聞いてきた他の警察官と違って、
 シャキンだけはレモナを気遣ってくれた。

 家が近いこともあってか、こうして道端で会えば立ち話をする程度には、
 現在も気にかけてくれているようだ。




14 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:04:23 ID://EhbzfcO

(`・ω・´)「お父さんは元気?」

|゚ノ ^∀^)「変わりありません」

(`-ω-´)「……そうか」

 すまないね。
 ぽつりと、シャキンは言葉を落とした。

(`-ω-´)「在職している内に、解決したかったんだが。
      僕が未熟なせいで、上手くいかなかった」

|゚ノ ^∀^)「いいんです。シャキンさんは誰よりも頑張ってくださいました」

(`・ω・´)「はは、そう言ってくれるとありがたい。
      ──それじゃあ、失礼するよ。引き留めてしまって悪かった」

 右手を挙げ、シャキンが歩き出す。
 会釈したレモナもまた、歩みを再開させた。

 シャキンは嫌いではない。
 この町の中、唯一、自分の味方のような気がする。



*****




15 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:05:19 ID://EhbzfcO


 レモナは、やたらと存在感のある邸宅を見上げた。
 門の脇にあるインターホンを押す。
 表札に書かれた「鬱田」という文字が、いやに重々しい。

 少しして、不機嫌そうな女の声が聞こえた。

『──はい』

|゚ノ ^∀^)「おはようございます、レモナです」

 マイクとスピーカー越しに二言三言交わすと、門が自動で開かれた。
 早足気味に通り過ぎ、鬱田邸の中へ入る。

('A`)「おはよう、レモナ君」

|゚ノ ^∀^)「おはようございます」

 主人、鬱田ドクオがロビーにいた。
 レモナは肩にかけていた鞄を下ろし、一礼する。

('A`)「少し散歩をしてくるよ」

|゚ノ ^∀^)「はい、行ってらっしゃいませ。お気をつけて」

 すれ違いざま、ドクオはレモナの肩を撫でた。
 滑るようでありながら、どこか熱を移すような触れ方であった。




16 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:06:00 ID://EhbzfcO

 鬱田ドクオ。
 今年で50になるとか。

 若い頃に両親を亡くし、祖父の代からの資産を全て手にした男だ。
 今は適当に仕事をして暮らしている。
 まったく外出しない日もあれば、商談のために他県まで飛ぶ日もある。暇なのか忙しいのか。

 町の中では人格者ということで通っている。
 金持ちなのに嫌みではない、困っている住民にはすぐに金を貸してくれる──などなど。

 進学せずに働こうと決めていたレモナを、
 中学卒業後、すぐに使用人として雇ってくれたのも彼だ。

 「犯罪者の娘なんか雇って、泥棒でもされたらどうするんです」。
 そんな隣人の嫌味に対し、

   ('A`)『私は、茂名さんがあんなことをするような人だとは思いませんよ』

 と、毅然に返していた。


.




17 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:07:28 ID://EhbzfcO


('、`*川「──今日はいつもより遅かったんじゃないの。
     おかげで、1人で洗わされちゃったわ、食器」

|゚ノ ^∀^)「ごめんなさい……」

 エプロンを着けて厨房に行くと、皿を棚に並べていたペニサスに睨まれてしまった。

 彼女もまた、ここに勤める使用人である。
 レモナと違うのは、ペニサスの方が10歳ほど年上なことと、住み込みで働いていること。
 そのせいか、レモナより1年遅れて働き始めたにも関わらず、妙に偉そうにしている。

('、`*川「とりあえず、掃除してきてちょうだい。いつも通りでいいわ。
     ……ああ、そうだ。私、奥様のお買い物に付き合わなくちゃいけないの。
     内藤さん達は今日は午後からの予定だから、それまで1人でよろしくね」

|゚ノ ^∀^)「はい」

('、`*川「誰もいないからって、仕事サボるんじゃないわよ」

 奥様、要するにドクオの妻。名はクールという。
 ペニサスはクールに好かれているらしく、2人で外出することが間々ある。
 遊びに行くのと変わりない。

 サボっているのはどちらなのだろう。
 喉元まで這い上がった文句を、飲み込んだ。



*****




18 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:09:14 ID://EhbzfcO


('A`)「ごちそうさま。美味しかった」

|゚ノ ^∀^)「それは良かったです。……ありがとうございます」

('A`)「いや、こちらこそありがとう」

 昼食を済ませたドクオは、真っ白なテーブルナプキンで口元を拭い、レモナに微笑みを向けた。
 レモナも笑みを返す。ぎこちないものだったが。

 ペニサスとクールは昼前に出ていった。
 まだしばらくは戻らないだろう。

 2時間後には他のお手伝いが来る予定だが、それまでは、レモナとドクオの2人だけ。

 嫌だ、とレモナは思った。

 ペニサスもクールも他の使用人達も好きではないが、それでも、早く来てほしくて堪らない。
 今すぐ、この食堂に、誰か。

|゚ノ ^∀^)「……お下げします」

 空の食器へ手を伸ばす。
 その指に、ドクオの指が絡んだ。




19 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:10:29 ID://EhbzfcO

('A`)「レモナ」

 声が耳に潜り込む。

 甘さも、優しさも、冷たさもない。
 ただただ粘つくような声だった。

|゚ノ ^∀^)「洗い物を、」

('A`)「後でいい」

 「すぐに洗わないといけないんです」だとか、
 「汚れ物を放っておいたのをペニサスさんに見付かったら怒られてしまいます」だとか。
 言い訳はいくらでも思いついた。

 けれども、レモナの口は一度小さく震えただけで、結局言葉は紡がれなかった。

 何を言ったって無駄だ。

('A`)「お前が本当に役立つ仕事なんて、『これ』ぐらいしかないだろうが」



 誰か、早く、邪魔しに来てほしい。



*****




20 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:12:54 ID://EhbzfcO


 レモナがドクオのことを『いい人』だと思っていたのは、
 17歳のとき、ベッドの上に引き倒された日まで。

 その日以降、機会さえあれば、ドクオはレモナを寝室に呼びつけた。
 行為の中に愛情を感じたことは一度もない。
 彼が覗かせるものといえば、怖気立つような情欲と、嘲りだけだった。



('A`)「可哀想な女だなあ……」

 泣きじゃくるレモナを見下ろしながら、ドクオが言う。
 彼は、レモナが泣けば泣くほど喜んだ。

|゚ノ ;−;)「ふ、ゔ、う」

('A`)「駄目な両親のせいで、こんなことになってるもんなあ。
    ああ可哀想可哀想」

|゚ノ ;д;)「ひっ! ぎ、ぅぐ、」

('A`)「はは……やっぱ母親よりは、いい体してやがる」

 レモナの肌を這う指に、力が篭る。
 爪が食い込み、痛みが走った。




22 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:14:59 ID://EhbzfcO

 ──こうやって言葉で嬲られる内に知ったことが、一つある。

 レモナの母の「浮気相手」は複数人いたのだが、
 ドクオも、その1人だったらしい。

 逢瀬は極々慎重に行われていたようで、それを知る者は、
 ドクオ本人と、話を聞かされたレモナ、あとはクールくらいなものか。

('A`)「あの女、金をせびるばっかで鬱陶しかったな」

 しばしば、彼はレモナを抱きながら、母の行動や言動について語った。
 それによってレモナが傷付く様を見たいのであろう。

('A`)「俺以外にもあんな調子だったろうし、ありゃあ、いつ殺されてもおかしくなかった。
    ろくでもない女だったよ」

 レモナの顔色を窺うように、ドクオは首を傾けた。
 彼の頬を引っ叩きたくなるのを堪え、何とか睨みつける。
 が、ドクオは怯む様子もない。それどころか満足そうに口元を緩ませた。




23 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:16:23 ID://EhbzfcO

('A`)「あばずれと殺人犯が両親だなんて、大したお嬢様だなあ、ええ?」

|゚ノ ;−;)「……お……」

('A`)「お?」

|゚ノ ;−;)「お父さんは、殺してない……」

 一瞬、間があいた。
 それから──ドクオの笑い声が響く。

('∀`)「ああ、そりゃそうだろう、あれには無理だ。
    何たって、妻の浮気を知ってても文句すら言えないような奴だからな。
    人殺す度胸なんかあるもんか」

 悔しい。
 全ての言葉が、レモナの心を抉るために発せられている。
 反論しようとすれば、口の中に指を捩じ込まれた。

 指先で押された喉が、げえ、と震える。




24 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:17:25 ID://EhbzfcO

('∀`)「苦しいかあ、そうだろうなあ、可哀想になあ。
    お母さんが死ななけりゃ、こんな嫌な思いしないで済んでたのになあ。
    お嬢ちゃんのお母さんを殺したの、誰なんでしょうかねえ」

 一気に指が引き抜かれ、レモナは咳き込んだ。
 咳に伴い、吐き気が腹の奥から迫り上がってくる。

 ようやく収まった頃に、また指が突っ込まれ、喉をつつかれた。
 何度か繰り返され、レモナの喉の痙攣が激しくなっていく。

('A`)「俺のベッドにゲロ吐いたら殺すからな」

|゚ノ ;−;)「……っ、……、……」



 日に日に、ある疑問が、確信へと近付いている。


 母を殺したのは、ドクオではないのかと。


.




25 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:18:58 ID://EhbzfcO


 ──服を整えて、ドクオの寝室を出る。
 正面に立つ人物を見たレモナは、はっとした。

川 ゚ -゚)

|゚ノ;^∀^)「あ……」

 「奥様」。クール。
 冷ややかな目で、レモナの頭から足まで視線を滑らせる。

川 ゚ -゚)「終わった? 入るタイミングが掴めなかったのだけれど」

 何と答えたものか判別しかね、レモナは「失礼します」とだけ呟き、体ごと横を向いた。
 引きずるように、右足を前に出す。

川 ゚ -゚)「母親そっくりだな」

|゚ノ; ∀ )「っ、」

 クールが歩み寄り、耳元で囁いた。
 身を竦ませたレモナに、クールから笑い声が漏れる。

 そのまま、彼女は寝室へと入っていった。




26 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:20:23 ID://EhbzfcO

|゚ノ; ∀ )「……」

 彼女はドクオが他の女に手を出そうが、それを咎めはしない。
 しかし、いい気がしないのも確かなようで、レモナへの態度はあからさまだった。

 レモナ本人と母への苛立ちを、まとめてぶつけている節もある。
 この家で働き始めた頃から、既にクールはレモナに対して冷たかった。
 「人殺し」の娘だとして見る目もあったのだろうが、それよりも別種の怒りが強く感じられたのだ。

|゚ノ;^∀^)(……あっ)

 不意に思い至る。

 クールがいるということは、ペニサスも帰ってきている筈。

 レモナはあちこち痛む体を無理に動かし、食堂へと急いだ。


.




27 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:21:58 ID://EhbzfcO


('、`*川

|゚ノ;^∀^)「ご──ごめんなさい……」

 案の定、ペニサスが食器を前にして、不快そうな表情を浮かべていた。
 頭を下げるレモナに一瞥を寄越し、少々乱暴な手付きでワゴンに皿を乗せる。
 がちゃがちゃ、耳障りな音が鳴った。

('、`*川「もう少しで内藤さんたち来るから。庭の手入れ、指示しといて」

|゚ノ;^∀^)「……分かりました」

 叱咤などは飛んでこなかったが、その分、声の刺々しさが過剰なまでに突き刺さった。



*****




28 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:23:12 ID://EhbzfcO



(`・ω・´)「おっと、レモナちゃんじゃないか」

|゚ノ ^∀^)「あ、シャキンさん……。こんばんは」

(`・ω・´)「こんばんは」

 夜11時。
 コンビニで弁当を物色しているところに、シャキンがやって来た。
 シャキンの右手には、数箱のチョコレート菓子。

 レモナの視線に気付いたシャキンは、照れ臭そうに
 自分には不釣り合いな、華やかなパッケージを顔の横に掲げた。

(`・ω・´)「いやね、さっき仕事が終わって今から帰るとこなんだけど、
      ついでに買ってくるよう娘に頼まれてね。
      レモナちゃんは、どうしたんだい」

|゚ノ ^∀^)「私もさっき終わったところなんです。
       随分遅くなっちゃったから、晩ご飯、お弁当でいいかなって」

 この時間なら、もう父は眠っているだろう。
 だが、念のため、2人分を手に取った。




29 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:25:02 ID://EhbzfcO

(`・ω・´)「ん、こんな時間まで働いてたんだ」

|゚ノ ^∀^)「ええ……。
       奥様のお誕生日が近いものですから、そのパーティーに関するお話があって」

(`・ω・´)「ああ、なるほど。
      鬱田さんのことだ、奥さんのために素敵なパーティーにするんだろうなあ」

 彼はいい人だからね。
 言って、シャキンが笑う。

 そうですね、と、レモナは目を逸らしながら返した。
 シャキンはドクオの本性など知らない。

 数秒間の沈黙の後、シャキンが、「そうだ」と手を叩いた。

(`・ω・´)「もう遅いし、僕の車で送っていくよ」

|゚ノ ^∀^)「え……」

(`・ω・´)「若い女性が歩いて帰るのには危険な時間だ」

|゚ノ ^∀^)「いいです、そんな──近いですし」

(`・ω・´)「まあまあ」

 「遠慮するな」「結構です」を何度か繰り返し、最後はレモナが折れた。
 2人でレジに向かう。
 そこでまた「僕が奢る」「自分で払います」のやり取りが行われたが、今度は何とか断りきれた。




30 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:26:17 ID://EhbzfcO



(`・ω・´)「──困ったことがあれば、いつでも言ってくれ」

 茂名家の前、シャキンの車の中。

 シートベルトを外していたレモナは、隣にいるシャキンを見た。

(`・ω・´)「僕が出来ることなんて、多くはないだろうけど」

 ドクオのことを話そうか、一瞬だけ迷った。
 すぐに思い直す。
 シャキンに助けを求めたところで信じてもらえるか怪しいし、証拠がなければ何ともならない。

 コンビニの袋と鞄を膝に乗せ、ドアの取っ手に触れる。

|゚ノ ^∀^)「……シャキンさん」

(`・ω・´)「何だい?」




31 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:27:28 ID://EhbzfcO

|゚ノ ^∀^)「シャキンさんは、私のお父さんが絶対に無罪だって信じてくれますか?」

(`・ω・´)「……」

 シャキンの周りの空気が、戸惑いを孕む。

 ──正直な人だ。
 10年前から今に至るまで、彼は、父を犯人だと決めつけることはしなかったが
 無実だとも言わなかった。

 それが逆にありがたい。
 真剣に、事件や父に向き合ってくれているようで。

|゚ノ ^∀^)「……ありがとうございました。急に変なこと訊いちゃいましたね、ごめんなさい」

(`・ω・´)「いや、……こっちも、ごめんよ」

 助手席のドアを開け、車を降りる。
 再度礼を言い、「おやすみなさい」の挨拶を最後に、ドアを閉めた。

 だが、すぐに、車内のシャキンが助手席側の窓を開ける。
 何か忘れ物でもしただろうか。




32 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:28:24 ID://EhbzfcO

|゚ノ ^∀^)「どうしました?」

(`・ω・´)「あげるよ」

 ぽんと、小さな箱が放り投げられる。
 レモナがそれを受け取っている内に、車はさっさと走り出してしまった。

|゚ノ ^∀^)(お菓子……)

 渡されたものの正体は、先程シャキンが買っていたチョコレート菓子の一つだった。

 くすくす、笑いが零れる。
 レモナからすれば、本当に「いい人」なのはシャキンだ。


.




33 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:29:26 ID://EhbzfcO


|゚ノ ^∀^)「あ、お父さん起きてたんだ。ただいま」

 リビングには父がいた。
 じっと黙って座っている。

|゚ノ ^∀^)「遅くなってごめんね。お腹すいたでしょ、お弁当買ってきたよ。
       今あっためるね」

 台所の電子レンジに弁当を一つ放り込み、ボタンを押す。
 2人分買っておいて良かった。

 父には弁当を食べさせるとして、自分はまず先に風呂に入ろう。
 もう一つの弁当とシャキンからもらった菓子を、まな板に乗せる。
 冷蔵庫から取り出した麦茶をグラスに注ぎ終えると、電子レンジから、ちん、と音がした。

 弁当とグラス、割り箸を持って移動し、父の前、卓袱台の上に置く。

|゚ノ ^∀^)「はい、どうぞ。
       私お風呂入るから、お父さん先に食べて──」

 言いながら父の顔を覗き込んだレモナは、ぎょっとした。




34 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:30:29 ID://EhbzfcO

( ;∀;)

 泣いている。
 静かに、目の縁から溢れた涙が、頬を伝って、ぽたりと落ちる。

 そう珍しいことではなかった。
 記憶を反芻しているのか、それとも別の要因か、
 とにかく父は突然泣き出すことがあった。

 放っておけば、いずれ泣き止む。
 レモナは腰を上げ、着替えを用意するために自室へ向かった。

 声もあげず、涙を拭いもせずに泣く父の姿は、どうにも胸が痛む。
 10年前の事件が原因なのは間違いない。

 何とかしてやりたい。
 多くの人から傷付けられた父を、救いたい。
 レモナは廊下の真ん中で立ち止まり、思案した。




35 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:31:44 ID://EhbzfcO

|゚ノ ^∀^)(……やっぱり、無実の証明をしないと)

 そのためには、

|゚ノ ^∀^)(『真犯人』を見付けて、逮捕させる……)

 それが一番手っ取り早く、世間に与えるインパクトも大きい。

 頭に浮かんだのは、ドクオの顔。

 彼は執拗に父と母の話題を出す。
 そして、最後には決まって「犯人」のことを口にするのだ。
 本当に殺したのは誰なんだろうな、と。

 「本当に」。
 つまり、ドクオは、父が犯人でないことを確信している。

 あいつは気が弱いから犯人じゃないんだとドクオは言うが、
 もし、もしも。
 別の理由があるとしたら、どうだ。

 たとえば──ドクオが真犯人だから、とか。

 この仮定が思い浮かんだのは1年ほど前だったが、その日以来、
 ドクオが疑わしく感じられて仕方がない。




36 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:32:38 ID://EhbzfcO

|゚ノ ^∀^)(あの人はお母さんの浮気相手の1人だったし、
       お金のことで、お母さんを鬱陶しがってた……)

 動機があるとすれば、その辺りだろう。

 レモナは我に返るまでの10分間、そこに立ち尽くしていた。



*****




37 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:34:53 ID://EhbzfcO


 それから一週間ほど経った、ある日。
 空いた時間、レモナはドクオの寝室に呼ばれた。

|゚ノ ^∀^)「……3時に、お客様が来ると聞きましたが」

('A`)「まだ時間はある」

 後ろから抱き竦められる。
 レモナは慌てて俯いた。嫌悪にまみれた顔を見られたくない。
 この男は、そういった表情に興奮するのだから。

 だが、ドクオの右手がレモナの顔を持ち上げた。
 鏡に映るレモナを見て、ドクオが満足げに頷く。

 頬を滑る舌の感触に眉を顰めながら、レモナは視線をあちこちへ飛ばした。

 何か、ないだろうか。
 「事件」に──母に関わりそうな何か。

 つい一昨日も部屋に呼ばれたが、そのときは何も見付からないまま終わってしまった。
 今日は、少しでも収穫が欲しい。

 2週間後に控えているクールの誕生日までに、手掛かりを掴んでおく必要がある。
 再来週のパーティーを逃せば、次の機会がいつになるか分からない。




38 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:36:12 ID://EhbzfcO

('A`)「何をきょろきょろしてるんだ」

|゚ノ;^∀^)「あっ──」

 突き飛ばされる。

 床に倒れたレモナを跨ぐようにして立ったドクオは、左右へ目を遣った。

('A`)「金目のものでも探してたか?」

 かっと頭が熱くなる。
 こいつ、どこまでも人を馬鹿にして。

 レモナの睨みを意にも介さず、ドクオはしゃがみ込んだ。
 エプロンを剥ぎ取る。

 今日は、ベッドの気分でないらしい。
 レモナの知ったことではない。
 どこで抱かれようが不快なのは同じだ。




39 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:37:55 ID://EhbzfcO

 顔を背ける。
 窓が視界に入った。カーテンが開いている。

 その窓辺に、箱が置かれていた。
 薄い。長方形の、あまり大きくないもの。
 初めて見る。少なくとも前回は、あんなところに箱などなかった。

|゚ノ ^∀^)(……何だろう……)

 じっと見つめていると、レモナの視線を追ったドクオが反応を示した。
 立ち上がり、窓辺に歩いていく。

('A`)「しまい忘れてたか……」

 ドクオはぼそりと呟き、近くにあった用箪笥の上段に箱をしまった。
 ついでにカーテンを閉める。




40 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:40:29 ID://EhbzfcO

|゚ノ ^∀^)「何ですか、その箱」

 上半身を起こし、問い掛ける。
 返ってきたのは、「関係ない」というつまらなそうな声だけ。

|゚ノ ^∀^)「……本当に?」

('A`)「……」

 きっちり10秒。
 黙り込んでいたドクオは、溜め息を吐き出すと、レモナに振り返った。
 無理に口角を引き上げたように笑っていたが、すぐに表情が消える。

('A`)「いや、関係なくはないな」

 声は、何故だか、苛立ちを含んでいるように聞こえた。
 それからまた10秒間沈黙したドクオは、一度俯き、ゆるりと顔を上げた。

 そこには既に、いつもの嫌な笑みが張りついている。




41 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:44:16 ID://EhbzfcO

('∀`)「10年前は、冷や冷やしたもんだ」

|゚ノ ^∀^)「10年前?」

('∀`)「不倫のことを警察が知って、うちにまで来たらと思うと。
    ……そんで、『これ』が見付かっちまったらと思うと、
    不安で不安で堪んなかったな」

 「これ」、と、先ほど箱をしまった用箪笥を撫でる。

 含みのある言い方をして、レモナの反応を楽しんでいるのだ。
 そうは分かっていても、レモナは箱が気になって仕方がなかった。

 警察に見付かったら困るもの。
 困る理由として考えられるのは、

|゚ノ ^∀^)「……犯人だと疑われるから……?」

 思わず、推測を口にしていた。

 ドクオは否定も肯定もせず、レモナに近付いてくる。




42 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:46:20 ID://EhbzfcO

('∀`)「さて、続きだ続き」

 ──やけに苛々しているようだった。

 にやついていても、声や空気に僅かな怒りが滲んでいる。
 その真意までは、レモナには読み取れない。

 何か察せないだろうかと、レモナのブラウスを脱がすドクオを注視してみるが、
 薄気味悪さを感じるだけだ。

 犯人であろう男の指が触れることに吐き気さえ覚えながら、レモナは用箪笥を一瞥した。


 脳裏を掠めたのは、行方不明となっている凶器──茂名家から消えた、ナイフ。



*****




43 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:50:33 ID://EhbzfcO


(`・ω・´)「それだけじゃ、何とも言えないな」

 数日後。昼。
 レモナは、喫茶店でシャキンと向かい合っていた。

 レモナの話を聞いたシャキンは、ドクオの素顔や仕打ち、不倫について困惑していたようだったが、
 ようやく上記の返答を絞り出した。

|゚ノ ^∀^)「ですよね……」

(`・ω・´)「『自分がやった』と言ったわけではないし、
      そもそも箱の中身が凶器だと決まったわけでもないからね」

(`・ω・´)「あと、仮に凶器だったとして、そうやって自ら臭わせた意図が分からないな。
      君の心を掻き乱したかっただけにしても、何となく納得いかない」

 シャキンがカップを持ち上げ、中のコーヒーを一口啜る。
 顔を顰め、砂糖を追加した。




44 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:52:39 ID://EhbzfcO

(`・ω・´)「……まあ、鬱田さんが君のお母さんと深い仲にあったというだけでも
      重要な新事実を手に入れたことにはなるよ」

 カップの中をスプーンでかき混ぜる。
 スプーンをソーサーに置いたシャキンは、
 腕を組むと、ううんと唸り、言いづらそうにしながらも話し始めた。

(`・ω・´)「君の、お母さんの……そのね、浮気についてだけど」

|゚ノ ^∀^)「……はい」

(`・ω・´)「僕らは当時、メールの記録や聞き込みから判明した浮気相手達のもとに、
      話を聞きに行ったんだ」

(`・ω・´)「すると、既に関係が終わっていた男たちの内、何人かには奇妙な共通点があった」

 勿体をつけた話し方だ。
 なるべくレモナを不快にさせないよう、言葉を選んでいるだけかもしれないが。




45 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:54:59 ID://EhbzfcO

(`・ω・´)「事件の数ヶ月前に、手紙が届いてたんだよ。
      封筒には、彼女と別れてほしいという旨が書かれた便箋と、
      ……結構な額の現金が入ってたそうだ」

|゚ノ ^∀^)「現金、ですか」

(`・ω・´)「そう。差出人は不明だったけど、今なら誰からの手紙だったのか分かる気がする」

 複数人に金をばらまくというのは、一般人にそうそう出来ることではない。

 やるとしたら、金持ちくらいなものだろう。
 ドクオのような。

|゚ノ ^∀^)「……どうしてあの人は、そんなことを」

(`・ω・´)「そこまでは、まだ何とも。
      でも、とにかく、彼が手紙の差出人である可能性は非常に高い。
      それに……警察に知られたくないものを所持しているというのも気になる」

(`・ω・´)「僕の部下──『元』部下か。当時一緒に捜査してた仲間に伝えてみるよ」

 シャキンの声に熱が篭る。
 真相に近付いていることが、彼の中の何かを刺激したのだろうか。

 レモナは、慌てて首を振った。




46 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:56:04 ID://EhbzfcO

|゚ノ ^∀^)「シャキンさん」

(`・ω・´)「ん?」

|゚ノ ^∀^)「それは少し待ってほしいんです」

 いかにも不可解だと言わんばかりの顔をするシャキン。
 レモナはミルクティーを飲み、声を潜めた。

|゚ノ ^∀^)「私、シャキンさんに協力していただきたくて」

(`・ω・´)「協力?」

|゚ノ ^∀^)「はい。自分の耳で直接、鬱田ドクオから事件の話を聞きたいんです。
       出来れば、シャキンさんも一緒に」




47 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:57:05 ID://EhbzfcO

(`・ω・´)「……そりゃ、僕はなるべく君の思う通りにしてあげたいよ。
      君の話が全て本当ならば、君は──あまりにも辛い思いをしてきたわけだし。
      けど、僕も一緒に、となると難しいんじゃないか」

|゚ノ ^∀^)「……そのことなんですけれど」

 腕時計を見下ろす。
 一応、買い出しという名目で鬱田邸を抜け出してきた身なので、
 そろそろ戻らないとペニサスに怒られてしまう。

 早く話を終わらせよう。


|゚ノ ^∀^)「来週、奥様の誕生日があるんです──」



*****




48 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 23:59:14 ID://EhbzfcO



('、`*川「レモナ、それホールに持ってって!」

|゚ノ ^∀^)「はい!」

 オーブンを開けながら、ペニサスが怒鳴るようにレモナに指示する。
 レモナは料理が大量に乗せられたワゴンを押して、人がひしめく厨房を後にした。

 ホールに料理を運び、空のワゴンと一緒に厨房へ戻る。
 何度も二ヶ所を行き来して、ホールの全てのテーブルに料理が並んだのは、
 そろそろ日が落ちようかという頃だった。

 パーティーが始まれば、しばらくは、また慌ただしく駆け回ることになる。
 レモナは今の内にと、ホールから庭へ続く扉を開け、外に出た。

 警備員が4人ほど、所定の位置に立っている。
 その内の1人のもとに駆け寄った。

|゚ノ ^∀^)「シャキンさん」

(`・ω・´)「ああ、レモナちゃん」




49 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:00:43 ID:kF0WgrowO

|゚ノ ^∀^)「間もなく始まりますけど、私はしばらく自由に動けないと思います。
       特に始めから中盤にかけては」

(`・ω・´)「逆に、僕は中盤頃から抜け出すのが難しくなりそうだね」

|゚ノ ^∀^)「ええ、途中で庭を開放するので、ここの警備は忙しくなる筈です」

 シャキンが苦笑する。
 いかにも申し訳なさそうだ。

(`・ω・´)「ごめんよ、もっと楽な場所の警備につきたかったんだけど、
      こればっかりは僕には決められなかった」

|゚ノ ^∀^)「いえ、そんな! 警備員として来てくれるのだって難しかったでしょうに」

(`・ω・´)「いいや、案外そうでもなかったよ。とにかく人手が欲しかったみたいだからね」

 今日はパーティーに際し、料理人や警備員が多数集められていた。
 レモナがこの日を「機会」としていた理由は、これだ。
 シャキンが堂々と鬱田邸に入り込む口実になる。




50 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:02:22 ID:kF0WgrowO

 警備服を着込んだシャキンは、いつも以上に、しゃんとして見えた。
 頼もしい。
 彼は足を揃えると、後ろに両手を回し、ぐっと胸を張った。

(`・ω・´)「レモナちゃん、僕の右手」

|゚ノ ^∀^)「え?」

 言われてシャキンの手を見下ろすと、右手に何かを持っていた。
 そっと受け取り、エプロンのポケットにしまう。

|゚ノ ^∀^)「何ですか?」

(`・ω・´)「通信用のマイクだ。一番大きなボタンを押せばスイッチが入る。
      この屋敷内にいる限りは僕に声が届く筈だから、合図にでも使って。
      それと、鬱田さんと話している間は念のためにスイッチを入れっぱなしにするように」

 会社から借りたやつだから、後で返してね。
 シャキンが最後に付け足した一言に、レモナは小さく笑った。




51 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:03:13 ID:kF0WgrowO

|゚ノ ^∀^)「ありがとうございます。──寝室の場所は分かりますか?」

(`・ω・´)「仕事の説明のときに地図をもらったから大丈夫。
      ……そら、もう時間だぞ」

|゚ノ ^∀^)「ああ、戻らないと。
       それでは、よろしくお願いします」

(`・ω・´)「無理はしないようにね」

|゚ノ ^∀^)「シャキンさんも」

 そろそろ、客がホールに入ってくる。
 レモナは踵を返した。


.




52 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:04:47 ID:kF0WgrowO


 パーティー自体には、特筆すべき点はない。

 見るからに「偉い」人達が、和やかに歓談し、食事を楽しみ、仕事のために親交を深める、
 そう珍しくもないものだ。
 そもそも裏方のレモナには、パーティーの様子など、ほとんど耳にも目にも入ってこない。

 料理を運んだり言いつけられた雑用をこなしていると、あっという間に時間が過ぎた。


.




53 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:06:01 ID:kF0WgrowO

|゚ノ ^∀^)(疲れた……)

 誰もいない廊下。
 壁に寄り掛かり、レモナは息をついた。

 あと少しで、全てが終わる。
 頑張らなければ。

 父の顔を思い浮かべる。

 昔は、よく話す人だった。
 レモナが話しかければ必ず答えてくれる人だった。
 家族の前で泣くような人ではなかった。

 優しくて、楽しくて、気は小さかったが、それでもいざというときには頼れる人。
 大好きな父。

 レモナは、母を殺した男が憎いのではない。
 父を苦しめた男が憎いのだ。

 目を閉じて、深呼吸。

 ゆっくりと瞼を持ち上げ、レモナはホールへ向かった。


.




55 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:08:16 ID:kF0WgrowO



 ドクオは、したたかに酔っているようだった。
 顔を真っ赤にさせ、へらへらと笑って客の相手をしている。

 近くにクールはいない。
 探してみると、少し離れたところで、数人の女性客と話しているのを見付けた。

 クールの隣に、鬱田夫妻の息子がいる。
 遠くの町で暮らしているため、顔を見るのは久しぶりだ。

 彼は未だ独り身の筈。何となく、今回のパーティーの、本来の目的が分かった気がする。
 ご自慢の息子君の嫁探しといったところ。
 であるならば、クールはしばらく彼から離れないだろう。

 これはいい。

 ドクオに話しかける客が途切れた頃を見計らい、レモナは彼に近付いた。

|゚ノ ^∀^)「旦那様」

(*'A`)「おおう?」

 レモナを視認したドクオは、間をおいて、優しく微笑んだ。




56 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:10:09 ID:kF0WgrowO

(*'∀`)「やあ、レモナ君。どうしたんだい」

|゚ノ ^∀^)「飲み過ぎかもしれないので、少し休まれるようにとペニサスさんが仰ってました」

 勿論ペニサスは何も言っていない。
 レモナ自身の提案では無視される恐れがあるが、
 妻のお気に入りであるペニサスの名を出せば、多少は信頼してくれる。

(*'A`)「休む……?」

|゚ノ ^∀^)「パーティーはまだ続きます。30分程度でも、ベッドに横になられた方がいいかと」

(*'A`)「ああ、うん……」

|゚ノ ^∀^)「シーツを直しておきますので、
       旦那様は、皆様に軽くご挨拶してからいらっしゃってください」

(*'A`)「んん……。……そのまま部屋に残っとけよ」

|゚ノ ^∀^)「……かしこまりました」

 休め、と言ったのに、意味を理解していないのだろうか。
 嘲笑してやりたくなるのを堪え、レモナは恭しく一礼した。
 まあ──どうせ、言われずとも寝室には残るつもりだから、問題はない。




57 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:11:50 ID:kF0WgrowO

 ホールを抜け、寝室に急ぐ。

 エプロンの右ポケットからマイクを取り出し、スイッチを入れる。

|゚ノ ^∀^)「シャキンさん、シャキンさん。
       今から寝室に行きます。予定通りの動きで構いません」

 レモナに渡されたのはマイクだけなので、向こうからの返事は期待しようもない。
 シャキンがしっかり聞いてくれていることを願い、小走りで廊下を進んだ。

 マイクを元の場所に戻す。

|゚ノ ^∀^)(……あとはシャキンさん次第)

 今回のシャキンの役割は「聞く」ことと「見る」こと。
 単純にして、最も重要な仕事だ。

 「聞く」に関しては、マイクとイヤホンがしっかり作動してくれさえすればいい。
 「見る」方は、心配しなくても大丈夫。シャキンが凶器のナイフを見付けるだけ。


 寝室に入る。
 レモナは、エプロンの左ポケットを優しく撫でた。



*****




58 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:13:23 ID:kF0WgrowO


 ドクオが来たのは、5分ほど後。

 ベッドの上に座るレモナと目が合ったドクオは、ふ、と鼻で笑った。
 後ろ手に鍵を閉め、ベッドに近付く。

 レモナは腰を上げると、ドクオから逃れるように部屋の中央に駆けた。
 ドクオが追いかけてくる。
 今度は、中央からドアへ。

('A`)「何だよ」

|゚ノ ^∀^)「休まなきゃ駄目ですよ」

('A`)「休むよ。今から休むんだろ、ベッドで」

 ドクオに引き寄せられる直前、レモナは鍵を開けた。
 幸い、ドクオは気付かなかったようだ。

('A`)「それとも床がいいか?」

|゚ノ ^∀^)「……」

 軽蔑の目を向ければ、ドクオは楽しそうに口を歪める。
 そしてレモナの腕を掴んだままベッドに歩み寄り、レモナをシーツへ突き飛ばした。




59 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:15:00 ID:kF0WgrowO

|゚ノ ^∀^)「……奥様の誕生日に、私を抱くんですか」

('A`)「あ?」

 嫌味を言ってやる。
 のしかかってきたドクオは、レモナの言葉に反応した。
 互いに無言で睨み合ったが、不意に落ちたドクオの笑い声で、沈黙は破られた。

('A`)「浮気者の娘が一丁前に何言ってやがる」

 ドクオの手が、エプロンの肩紐を掴む。
 これを取られては駄目だ。マイクが離れてしまう。

 触りたくもない男の手を、レモナは握った。




61 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:17:31 ID:kF0WgrowO

|゚ノ ^∀^)「その浮気者に手を出したのは誰です」

 返事は舌打ち。
 酒の臭いが鼻を突く。

 落ち着いてきているように見えたが、随分と酔っ払っているらしい。
 これなら、本心を引きずり出すのも容易い。

('A`)「……うるせえな、あれに関わったのは本当に失敗だったよ。
    会えば、金金金しか言わねえ。最悪だ」

 ──そう、それだ。
 もっと言ってしまえ。
 母への殺意を認めてしまえ。




62 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:19:06 ID:kF0WgrowO

|゚ノ ^∀^)「……私のお母さんのこと、嫌いだったんですか? 付き合ってたくせに」

 直球に質問を投げかける。

 ドクオが肯定するのを期待した。
 が。

('A`)「……」

|゚ノ ^∀^)「……?」

 予想に反し、彼は黙りこくっていた。
 難しい顔でレモナを見下ろし、かと思えば視線を逸らす。

 その挙動を訝っていると、ドクオが、躊躇いがちに口を開いた。


('A`)「──好きだったよ」




63 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:20:50 ID:kF0WgrowO

 理解出来ず、レモナはぽかんとして、辛そうな表情のドクオを見つめていた。

 好き?
 母を?
 あんなに馬鹿にしていたくせに、何を。

 ああ、これもまた、揶揄の一つか。
 次の瞬間には大笑いして、嘘だとでも言うのだろう。
 そうして母を罵るのだ。きっと。

 けれど、レモナがいくら待っても、ドクオは発言の撤回はしなかった。




64 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:22:17 ID:kF0WgrowO

('A`)「妻より、あっちの方が好きだった。
    どこに惚れたのか今でも分からんが」

|゚ノ;^∀^)(──違う……)

 違う。
 レモナが欲しいのは、こんな言葉ではない。
 もっと汚くて、血生臭い、殺意の篭った告白だ。

 これでは、まるで正反対ではないか。




65 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:23:18 ID:kF0WgrowO

('A`)「好きで仕様がなくて、」

 まさか。
 まさか、ドクオは犯人ではないのか?

 そうならば、全て無駄になる。
 父を救えなくなる。
 優しいシャキンを、勘違いに巻き込んでしまったことになる。

 そんなの嫌だ、ああ、マイクのスイッチを切ってしまおうか、どうしよう、どうしよう、



('A`)「死んじまえばいいと思ってた」



|゚ノ;^∀^)「──……え」




66 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:27:15 ID:kF0WgrowO

('A`)「ちょっかい出されれば誰にでもついてって股開きやがる。
    俺がやめてくれって頼めば、笑いやがるんだ。
    『お互い不倫関係のくせして何言ってんだ』って」

('A`)「なら離婚するから俺と結婚しろって言っても本気にしない。
    それどころか、俺には金しか求めてないんだって言う始末だ」

('A`)「死ねばいいと思ってた。殺してやるって何回も思ってた。
    やってる最中も首絞めることばっか考えてた」

|゚ノ;^∀^)「え……あ……?」

 拍子抜けしたかと思えば、唐突に生々しい言葉が並んでいく。
 流転する空気についていけず、呆気にとられた。




68 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:30:46 ID:kF0WgrowO

 混乱、というのが一番合っている。レモナは混乱していた。
 まさに自分が望んでいた告白であると理解するのにも、長い時間を要するほど。
 そして全てを把握すると、今度は、妙にドクオが恐ろしく感じられた。

 期待以上に汚くて、血生臭い殺意。
 それが恋い焦がれた末の成れの果てだとは、
 男女の恋慕に疎いレモナには受け入れがたい事実だったのだ。

('A`)「ぐいって反らした首に包丁刺してやったら、どんな風に死ぬかとか……。
    それ考えるのが一番興奮したな」

 レモナの手には、もう力が入っていなかった。
 握られていた己の手を抜き取ったドクオが、レモナの頬を撫でる。

 それから──細い首に、両手をかけた。




69 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:32:08 ID:kF0WgrowO

|゚ノ;^∀^)「ぁぐ……っ!?」

('A`)「……不思議だよなあ、娘のお前を好き勝手に犯しても、全然すっきりしないんだ」

 全ての指が、ぎちぎちと食い込む。
 息が止まる。

 痛い。苦しい。
 目の前がちかちかする。

 ドクオの腕に爪を立てても、びくともしない。

|゚ノ; д )「ぎっ……ぃ……」

('A`)「……し……、……」

 ドクオが何か言っている。
 何を言っているのかが分からない。




70 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:32:53 ID:kF0WgrowO

 苦しい。苦しい。苦しい。
 やはり、この男が真犯人だった。
 一瞬でも疑念を払いかけた自分の馬鹿さに呆れる。

 ああ、このまま、第2の被害者になるのだろうか。

 視界が真っ暗になる。



 ──ばたんという音の直後、シャキンの声がして。

 安堵したレモナは、意識を完全に手放した。





*****




71 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:34:14 ID:kF0WgrowO





 レモナが帰宅したのは、翌日の夕方だった。

 病院に泊まった上に、さらに警察の事情聴取に付き合わされたためだ。
 シャキンに送られて家に着く頃には、へとへとになっていた。

(`・ω・´)「本当に大丈夫かい? 念のため、もう一晩病院にいた方が……」

|゚ノ ^∀^)「大丈夫ですよ。それに、お父さんのご飯準備しなきゃ」

(`・ω・´)「ああ、そうか。……明日、様子見に来るよ。
      良ければ、そのときにお父さんと話してもいいかな」

|゚ノ ^∀^)「是非。
       ──ありがとうございました、シャキンさん。色々、たくさん」

(`・ω・´)「僕も、事件が解決して嬉しい限りだ。
      ……それじゃあ、さようなら。また明日」

|゚ノ ^∀^)「お気をつけて」

 シャキンの車が走り去る。
 レモナは遠ざかる車にお辞儀をすると、駆け足気味に家の中へ入っていった。




72 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:36:28 ID:kF0WgrowO

 リビングには、いつも通り、父がいた。
 知らず、レモナの頬が紅潮する。

 今までは父を見る度に悲しくなっていたが、これからは違う。

|゚ノ*^∀^)「お父さん!」

( ´∀`)「……」

 父が振り返る。
 走り寄り、レモナは彼の前に座り込んだ。

|゚ノ*^∀^)「犯人、逮捕されたんだよ!
       お母さん殺した犯人!」

( ´∀`)

 ぴくり。父の体が動いた。




73 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:37:51 ID:kF0WgrowO

|゚ノ*^∀^)「鬱田ドクオ、ほら、私が働いてた家の人。
       あの人の寝室でね、ナイフが見付かったの。10年前の凶器。箱に入ってたって。
       シャキンさん覚えてる? あの人が見付けてくれたんだよ」

|゚ノ*^∀^)「これでやっと、お父さんが無実だってみんなに分かってもらえるね!」

 父の顔に、当惑の色が浮かんだ。
 そんな表情を見るのは随分と久しぶりに感じられる。

 溢れる嬉しさを堪えもせず、レモナは跳ねるように立ち上がった。

|゚ノ*^∀^)「とりあえず、私お風呂入ってくる!
       ご飯食べながら、ゆっくり話すね」

 自室へ向かう足取りは軽い。
 そうだ、父と話し終わったらテレビを見よう。
 彼を傷付けるようなものは、もう何もない。




74 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:39:41 ID:kF0WgrowO

|゚ノ*^∀^) 〜♪

 部屋の真ん中に鞄を放り投げる。
 箪笥の中から、適当な下着と部屋着、タオルを引っ張り出した。

 腰を上げ──かけて、はたと鞄を見据える。

 にじり寄り、鞄を開ける。
 丸めたエプロンの下に手を突っ込み、「それ」を引き抜いた。

|゚ノ ^∀^)「……」

 何枚もの写真。
 全てに母が写っている。中には、母と見知らぬ男のツーショットも。
 角度や距離からして、隠し撮りだろう。


 昨晩、レモナが例の箱に、持参した凶器のナイフを忍ばせたときに見付けたものだ。




75 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:41:49 ID:kF0WgrowO

 こんな写真を大事に箱に入れて保管していたとは、
 ドクオは本当に母を愛していたようだ。
 母の浮気相手に手紙を送ったのも、独占欲の強さからか。

|゚ノ ^∀^)(後で燃やしとこ)

 まあ、今となっては、どうでもいい。

 今度こそ腰を上げ、浴室へ歩いていく。

 それにしても、10年間ナイフを保存しておいた甲斐があった。
 よっぽど捨ててやろうかと思っていたが、こうして役立つときが来て、本当に良かった。
 血は拭ってしまっていたものの、血液反応は出るだろうし、証拠としては充分だ。




76 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:45:09 ID:kF0WgrowO

|゚ノ*^∀^)(おかげで、お父さんが無罪だって証明される……)

 良かった良かった。

 やはり、10年前に見た、血まみれの父の姿は何かの間違いだったのだ。
 だって、優しい父が、母を殺すなんて有り得ない。

 血まみれのナイフを持っていたのも間違い。
 事件の直前に両親の怒鳴り合う声が聞こえていたのも間違い。

 ナイフを回収しておいた自分の判断は正しかった。

|゚ノ*^∀^)(そうだ、シャキンさんに改めてお礼しないと)

 シャキン。彼には、かなり助けられた。

 元刑事の彼の証言なら、警察は信用する筈。
 元容疑者の娘である自分だけでは、疑われる可能性があったし。
 彼がいなければ、ドクオという凶悪犯は捕まらなかっただろう。

 まさか殺されかけるとは思わなかったが、駄目押しになったようなものだから、結果オーライ。

|゚ノ*^∀^)(ああ、何か、すっごく楽しい!)



.




77 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:48:15 ID:kF0WgrowO

 ──母に対する独占欲に苦しんでいたドクオは、茂名家での逢瀬の際、ついに彼女を殺してしまう。
 ドクオは凶器を持って現場から逃走。そこへ帰宅した父が、死体を発見した。

 これだ。これで確定。帰りの車内ではシャキンもそう推理していたし。
 円満解決。
 ハッピーエンド。


|゚ノ*^∀^)(めでたしめでたし)


 レモナは、とても幸せだった。

 ドクオが犯人、父は無罪。



 これこそが、「真実」に他ならないなのだから。



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78 :名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 00:48:54 ID:kF0WgrowO





 |゚ノ*^∀^)にとってはそれが真実だったようです








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