( ・∀・)野球やろうよ!のようです
2 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:10:41.51 ID:VOG99s40O
( ^ω^)「追いこんだお!楽に行こうお!!」


( ・∀・)「オッケー」


「オー!!」  「ツーアウトツーアウト!!」  「ピッチャーしまっていこーぜ!!」


( ・∀・)「よっし!行くぞ!ブーン!!」


( ^ω^)「おっ!くるお!」


ピッチャーが大きく振りかぶり、右手がかるくうなじに触れる。
体を半回転。それにつられて左足がゆっくりと上がり、全ての体重が右足に乗る。
そして体重を少しずつ前方に移動し、左足を前に強く踏み込む。
あとはそのエネルギーを利用して、思い切り腕を振るだけ。

握りはストレート。
ボールを離すのは自分の目線の高さくらいまで腕を振り下ろしてから。
とどめにちょっと手首のスナップをきかせてやればボールが打者の手元で伸びるのだ。




3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 21:13:37.94 ID:VOG99s40O
シュー、と風を切る音がして白球はキャッチャーが構えたミットにむかって一直線に進んでいく。

打者が渾身のスイングでボールを迎え撃とうとするが、ボールは打者のバットの上を通過。
パシィン!と乾いた音が響いた。


( ´∀`)「ットライク!!アウトォ!!ゲームセット!!」


審判の声が響き、守備側の面々が叫びながらホームに集まってくる。






ピッチャーの名は猫山モララーと言った。
現在、草野球チーム「サニーサイドアップス」でエースナンバーをつけている大学生である。
そしてその恋女房であるキャッチャーの名は内藤ホライゾン。
皆からはブーンと呼ばれ親しまれている。

今や唯一無二の親友同士であるこの二人。
その関係は高校時代にモララーが発したある言葉から始まった……。




4 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:16:29.44 ID:VOG99s40O







( ・∀・)野球やろうよ!のようです








――――――――――――……




5 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:19:39.36 ID:VOG99s40O
( ^ω^)「……」


( ^ω^)「えっ?」


( ・∀・)「だからぁ、野球やろうぜ!」



その日は県立VIP高校に入学してから一週間程経った日。
学生達が所属したい部に登録を申請する日だった。

ブーンこと内藤ホライゾンはどの部に入ろうか悩んでフラフラとしていたところ、
同じクラスではあるが今まで特に話すこともなかったモララーに捕まったのである。

( ・∀・)「きみ、中学で野球やってたんだろ?ならいいじゃん」

( ^ω^)「野球……」




6 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:22:37.51 ID:VOG99s40O
ブーンは野球部に入ってかわいいマネージャーとウハウハドンドンしてもいいかなーなどと考えていた。
その時だった。

(`・ω・´)「ん?なんだお前ら。野球部の入部希望者か?」


突然モララー達の後ろから現れたのは、榎本シャキン。
野球部の顧問だ。


( ・∀・)「あー、はい」

(*`・ω・´)「そうかそうか!じゃあ早速登録しような!」

(;^ω^)「え、あ、……はいお」


モララーがとっさに「はい」と言ってしまったため、ブーンも断ることができず、
野球部入部が決まった。



これが二人の出会いであった。




7 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:26:43.37 ID:VOG99s40O
野球部の練習初日、モララー達は着替えて校門にへ集合した。
その時に他の一年生のメンバーの顔を知った。

そして、そのメンバー全員の視線がモララーに集まる。


( ・∀・)ノ「よ。初めましてだね。俺、モララー。よろしく」


モララーはさらりと自己紹介を済ませたが、
他のメンバーはまだモララーを見て呆然としていた。


なぜならモララーはジャージ姿だったからである。


もちろん、他のメンバーは全員野球用の練習着を着ている。
ブーンもそうだ。


(;'A`)「えと……ジャージ?」


思わず頭に浮かんだ疑問が言葉に出てしまったこの男。
名は鬱田ドクオと言った。


( ・∀・)「いやー。俺中学でずっとサッカーやってたからさ。
野球の道具ってグローブしかもってないんだよね」




8 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:29:49.66 ID:VOG99s40O
そう、モララーは野球未経験者だった。
それなのにブーンを野球部に誘うとは、なかなかいい度胸をしている。

一方、野球未経験者であるモララーに対し、他のメンバーはとても優しくしてくれた。

('A`)「俺、鬱田ドクオ。俺も下手っぴだからよろしくな」

( ΦωΦ)「我輩は杉浦ロマネスクである。
我輩も野球はダメダメだ。よろしく頼むぞ」

(,,゚Д゚)「俺は猫田ギコだ。野球のこととかでわからないことがあったらなんでも聞いてくれよ」
  _
( ゚∀゚)O彡゜「おっぱい!おっぱい!」




10 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:34:35.23 ID:VOG99s40O
自己紹介があらかた終わったところで初日の練習が始まった。
一年生はしばらく基礎体力作りのメニューが続く。
ランニング、筋トレ、ダッシュ……。
ボールに触れる事はない。


(; A )「ゼッ……ゼッ……。キツ……」

(;^ω^)「中学とは違うお……」


受験勉強のせいで体力が落ちてしまっている一年生にとって体力作りのメニューは酷だった。
……一部のメンバーを除いては。
そしてモララーもその一部のメンバーの中に入っていた。


(;゚Д゚)「お前速いな……」

(;・∀・)「はっはっ。体力には自信があるんだ」




11 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:38:31.72 ID:VOG99s40O
そして体力作りのメニューを続けて二週間。
ある程度体力がついて、与えられたメニューを難無くこなせるようになったころ、
ようやく二、三年生と一緒に練習が出来るようになった。

公立高校であるこの高校は、私立のように厳しい上下関係などなく、
先輩達はみな優しかった。

ちなみに、この頃にはモララーはちゃんとした野球道具を一式揃えていた。


そして、キャッチボール。
モララーの相手はブーンだった。

( ・∀・)「「お願いしぁーす!」」(^ω^ )


お互いに一礼して、至近距離から軽く投げ合うのから始める。
そして徐々に距離を広げていく。モララー達の隣では同じ一年生が何度も暴投をしていた。

一方、モララー達はたまにモララーの投げたボールがブーンの体に近い場所でバウンド……
いわゆるショートバウンドをする以外はまともなキャッチボールが出来ていた。




12 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:42:35.09 ID:VOG99s40O
( ^ω^)(モララーの投げるフォーム綺麗だお。ボールも素直で捕りやすいお)


ブーンは中学時代ずっとキャッチャーをしていたため、いろんな人の投げるボールを受けてきた。
モララーはその中でも『綺麗なボールを投げる』部類に入っていた。


キャッチボールが終わると一年生は全員内野ノックをやらされた。
ノッカーはシャキンだった。


ダイヤモンドでは荒巻監督が二、三年生達にシートノックを打っている。

モララーはその先輩達の動きを真似てノックを受けてみた。


( ・∀・)「お、」ポロ

( ・∀・)「あ、」スカッ

(;〇)∀)「ほげぁぉ!!」ドカッ!




13 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:47:50.56 ID:VOG99s40O
だが、見よう見真似でなんとかなるほどボールを捕るのは簡単ではない。
結局モララーはほとんどの打球でエラーをしてしまった。


(`・ω・´)「最初から上手い奴なんていないぞ!
他の奴らも初めて野球やった時はこうだったんだから、気にするな!」

(#)∀・#)「はい、先生」

モララーの体には、硬式ボールが当たっために痣があちこちに出来ていた。

(;^ω^)「大丈夫かお?モララー」

(#)∀・#)「はっはっ。こんなんでやられるほどヤワじゃないよ」


モララーとは打って変わって平然としているブーン。
ブーンとドクオとギコはすごく上手にボールをさばいていた。




15 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:52:10.32 ID:VOG99s40O
内野ノックが終わると、今度は外野ノックが始まった。
これも全員参加だ。

ここでは、一番手のギコがいきなりスライディングキャッチを決めて守備の上手さを見せつけてくれた。

ブーンも危なげない守備をしていた。


モララーはというと

∩    ∩
ヽ(;・∀・)ノウワー


フライの落下点の見極めができず、何度も何度もバンザイしていた。


(`・ω・´)「よぉーし!一年生は集合しろ!」


外野ノックが終わると、シャキンの声がグラウンドに響いた。
一年生のメンバーはダッシュでシャキンの周りに集合する。




17 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 21:56:25.56 ID:VOG99s40O
(`・ω・´)「今のノックの内容をふまえて、現時点でどのポジションを守りたいか聞いていくぞ」


シャキンの言葉に、モララーはどう答えようか悩んだ。
まだ始めたばかりだからどのポジションがいいかなんてわからないのである。

モララーが頭を抱えていると、隣に座っているブーンがモララーの肩を叩いた。

( ・∀・)「なに?」

( ^ω^)「ポジションどこにするお?」

(;・∀・)「それが決まんないんだよねー。なんせ始めたばかりなもので……」

( ^ω^)「じゃあピッチャーはどうだお?」

( ・∀・)「ピッチャー……?」


ピッチャー
スポーツ好きな男の子なら一度はピッチャーをやりたいと思ったことがあるだろう。
テレビでプロ野球を見てても1番目立つポジションで、
野球マンガの主人公のポジションが大体これだ。




18 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:00:56.07 ID:VOG99s40O
(;・∀・)「えー?でも初心者の俺がピッチャーなんて……」

( ^ω^)「大丈夫だお。ブーンがキャッチャーやるから全部教えてあげるお」


1番目立つポジションであるから、1番人気のあるポジションである。
それに初心者の自分が立候補するのはいささか気が引けた。


(,,゚Д゚)「なんだ?モララーはピッチャーやるのか?」

(;・∀・)「いや、それは……」

(,,゚Д゚)「俺はいいと思うぞ?」

(;・∀・)「え?」

(,,゚Д゚)「お前のフォーム、結構綺麗だったからさ」

(;・∀・)「……」

( ^ω^)「ほら、ピッチャーやるお!」




20 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:04:47.83 ID:VOG99s40O
一年生の中でもレベルの高い二人がピッチャーをやってみろと言ってくれた。
おかげでモララーの不安も少し解消された。


(`・ω・´)「次!猫田」

(,,゚Д゚)「俺ぁセンター希望っす」

(`・ω・´)「センターだな。……次!猫山」

( ・∀・)「俺は……」






「ピッチャー、やりたいです」




誰も、何も言わなかった。
初心者がピッチャーやりたいだなんて言ったらみんなに笑われるとか考えていたが、
誰も笑いはしなかった。




21 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:09:18.15 ID:VOG99s40O
こうして、全員が希望ポジションを言って、翌日からそのポジション別の練習が始まった。

ピッチャーは一年生ではモララーの他に長岡ジョルジュがいた。
サウスポーだった。

  _
( ゚∀゚)「よぉーモララー。同じポジションだなー。
よろしくなー」

( ・∀・)「うん。よろしく」


ジョルジュもいい奴だった。
ただ、先輩をからかってはよく殴られていたが。

初めてブルペンで投げ込みをさせてもらった時、
ジョルジュの球はモララーより数段速かった。

モララーはピッチャーをやっていけるのか一抹の不安を感じていた。




24 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:13:35.16 ID:VOG99s40O
――――――――――――……

(*^ω^)「あの時は本当に驚いたお。
別にクラスで話したこともなかったモララーに声をかけられたんだから」

草野球の試合が終わった二人は、モララーの部屋で昼間から飲んで昔話に花を咲かせていた。

(*・∀・)「お前、クラスの自己紹介で中学三年間野球やってたって言ってただろ?
俺、てっきり野球部入るのかと思ってたよ」

(*^ω^)「おっおっ。確かあの時ブーンは軽音部に入ろうと思ってたお」

(*・∀・)「ブーンが軽音部とかwww想像つかねぇwww」

(*・∀・)「それにしてもブーン変わったよな」

(*^ω^)「お?」

(*・∀・)「だって昔はカラオケとか誘っても来なかったじゃねぇか。
テストでも馬鹿みたいにいい点取ってたし」

(*^ω^)「誰のせいで成績が下がったと思ってんだおwww
おかげでモララーと同じ大学だおwww」

(*・∀・)「うるせぇwww馬鹿の方が人生楽しいだろwww」




26 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:18:24.66 ID:VOG99s40O
(*・∀・)「いやー。しかし昔は大変だったなー」

(*^ω^)「じじ臭いこといってんじゃねぇおwww」

(*・∀・)「うっせーなwww。昔は昔だろwww」

(*^ω^)「ほんの5、6年前だおwww」

(*・∀・)「まったく……口だけは達者になりやがって」

(*^ω^)「だからそれも全部お前のせいだおwww」

(*・∀・)「ははっww。でも学生時代はお前に助けられたことも結構あったな……」

――――――――――――……




29 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:22:20.53 ID:VOG99s40O
夏の大会が終わり、新チームが結成された。
おかげで練習試合にちょくちょく一年生が使ってもらえるようになった。

と、いってもよく使われるのはギコとドクオとブーンくらいだが。


モララーはまだまだ下手くそだから、試合には出してもらえない。
だが、試合に出れなくてもやることはたくさんある。

声出し、ボール拾い、バット引きetc.


モララーとジョルジュはファールボールを拾いに行く係をしていた。


  _
( ゚∀゚)「あーあ。早く試合で投げてーなー」

( ・∀・)「ジョルジュは大丈夫だよ。球速いし」
  _
( ゚∀゚)「ストレートだけじゃ通用しねーよ。
しかも俺コントロール悪いし。
試合出れるのはいつになることやら……」

( ・∀・)「……」




31 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:27:49.60 ID:VOG99s40O
自分より球速も制球力も上のジョルジュが試合に出れないのなら、
自分は試合に出れないまま高校を卒業してしまうのではないか。


モララーはそんな不安を感じていた。
同じピッチャーのジョルジュと会話していると、
そのはっきりとしたレベルの差を見せつけられてついつい弱気な考えになってしまうのだ。



ある日、モララーはその悩みをブーンにぶつけた。


( ^ω^)「お……。いいピッチャーになるにはどうすればいいかかお」

( ・∀・)「うん」

( ^ω^)「まずは下半身を鍛えることだお。
下半身がどっしりして安定すればコントロールが格段にあがるお。
他は……そうだおね。
寝転がって真上にボールを投げる練習をするのもいいお。
リリースポイントが一定になると、投げるコースを修正しやすくなるお」

( ・∀・)「下半身を鍛えるのとリリースポイントを一定にする……」

(;・∀・)「あれ?これだけ?」




34 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:31:28.07 ID:VOG99s40O
( ^ω^)「お!これをしっかりやればいいピッチャーになれるお!」

(;・∀・)「いや、もっと球を速くする練習とか、
キレのある変化球を投げる練習とか……」

( ^ω^)「モララー、君はちょっと勘違いしてるおね?」


( ・∀・)「……え?」


( ^ω^)「150キロの剛速球を投げれても、
打者の胸元をえぐる高速スライダーが投げれても、
それをコントロールすることが出来なかったら使えないお」


( ^ω^)「だから球が遅くても、針の穴を通すようなコントロールがあれば、
きっと私立の強豪校相手にも通用するピッチングができるはずだお」

( ・∀・)「コントロール……か。
わかったよ。ありがとう」



その日からモララーは家に帰ってから走り込みを欠かさなくなった。




37 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:36:22.42 ID:VOG99s40O
野球部は例え盆休みでも休むことは許されない。

すぐに春の選抜の予選も兼ねた新人戦が始まるからだ。


三年生が抜けた穴を埋めるため、しばらくハードな練習が続いた。

モララーはピッチャーだが、ピッチャーも投球を終えたら一人の野手になる。
そのためピッチャーといえども守備練習を怠ることはできない。

入学当初と比べると、随分エラーが減ったモララーだったが、
それでもやはり他の選手と比べるとその実力は月とスッポンだった。


(;・∀・)「あっ」ポロ

/#,' 3「たわけぇ!!そんなボールが捕れなかったら何が捕れるんだ!!」

(;・∀・)「すいません!もう一本お願いします!」


グラウンドには常に荒巻の怒号が響いていた。
モララーは中学時代にサッカーで散々怒鳴られていたため、
怒られるのは苦ではなかった。




40 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:40:25.37 ID:VOG99s40O
日が経つにつれて、荒巻のモララーに対する風当たりはどんどん強くなっていった。

/#,' 3「違うだろ!!体全体を使って止めろ!!
落としてもすぐ拾って一塁に投げれば間に合うからって何度言ったらわかるんだ!!」

(;・∀・)「はい!すいません!」

/#,' 3「すいませんすいませんってさっきからお前はそればかりじゃないか!!
すいませんって言うだけだったら小学生のガキでもできるわ!!
同じミスを何度も繰り返すな!!」



それは一種のいじめに見えたかもしれない。
荒巻の他の部員に対する態度とモララーに対する態度は明らかに違っていた。


  _
(#゚∀゚)「なんだあのジジイ。モララーばっかり怒鳴りつけやがって、
ギコはミスしても何も言わないくせによ」

( ・∀・)「……怒られるのには慣れてるから平気だよ」

(;^ω^)「でもあれは理不尽すぎるお。さすがのブーンでもイラッときたお」




43 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:45:37.39 ID:VOG99s40O
……荒巻がモララーに特に辛く当たったのには理由があった。
毎日走り込みを欠かさなかったモララーの下半身はしっかりしていて、
コントロールだけなら今のエースよりもしっかりしているかもしれない。

だからピッチングだけなら即戦力になるのではないかと荒巻は考えた。


しかし、モララーはまだ経験も浅い。
試合経験もないから試合独特の緊張感というものも知らないだろう。

それに何よりモララーは守備が下手すぎた。
このままじゃピッチャー前にバントするだけで自然とランナーがたまっていくことになりかねない。


だから荒巻はモララーに特に厳しくし、
時にはモララーだけ練習を追加したりした。


ある意味、これはモララーをえこひいきしていたと言えるだろう。
モララーも与えられた練習に文句も言わず、ノックの一球一球を大事にして練習に取り組んでいた。




46 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:49:29.40 ID:VOG99s40O
それでも、足りないとモララーは思った。
練習が終わった後、一人残って練習した。

そんなモララーの姿を見たブーンは、モララーの自主練習に付き合ってくれた。


( ^ω^)「荒巻監督に好き勝手言わせないお!頑張ってうまくなるお!!」

(#)w(%#)「うん。それには同感だよ。
でも暗いのにそんな強いノックを打たないでくれないかな。
死んじゃうよ」

( ^ω^)「お!まずは体に当てて前に落とすことを覚えるんだお!
ボールに対する恐怖感を無くすんだお!」

(#)w(%#)「気のせいかな。ボールがどんどん怖くなってきた」


ブーンの協力もあって、モララーは短時間で格段に上達した。
と、いってもまだまだ下手っぴである。




47 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:53:56.77 ID:VOG99s40O
だがその努力もむなしく、
新人戦が始まるまでに間に合わず、モララーはベンチ入り出来なかった。
三年生が抜けて現在の部員数は25人。
ベンチ入りできないのは5人だ。

その5人の中にモララーとロマネスクは入っていた。


新人戦地区予選はリーグ戦で行われ、リーグ1位のチームが直接県大会に、
リーグ2位のチームが二次予選へと勝ち上がれる。

二次予選はトーナメント式で、それぞれのグループで1位のチームが県大会へ上がれる仕組みだ。


結局VIP高校は2勝2敗で、上へ勝ち上がることは出来なかった。
だが、このリーグ戦でギコが2本塁打を記録し、その存在感を見せつけた。


ちなみにドクオは相手校のマネージャーをナンパしようとしていた所をシャキンに目撃され、
グラウンド50周の罰を与えられていた。




48 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 22:57:53.00 ID:VOG99s40O
――――――――――――……


(*^ω^)「おー?そんなこともあったかお?」

(*・∀・)「あったよ!暗がりで俺にボールをぶつけまくって……
全身痣だらけになったんだからな!」

(*^ω^)「記憶にねぇおwww。
ドクオのグラウンド50周は覚えてるけどwww」

(*・∀・)「あれは傑作だったよなwww。
最後の方なんか走ってるんだか歩いてるんだかわからなかったしwww」


( ^ω^)「……でも、もうドクオは……」

( ・∀・)「うん……。高校出て以来まったく連絡も取れないんだよな……」

( ^ω^)「……」

( ・∀・)「連絡といえば、ギコとロマとジョルジュはまだかな?」

( ^ω^)「おっ。ギコはもうそろそろ来るはずだけど……」




50 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:02:09.54 ID:VOG99s40O
ガチャ
(,,゚Д゚)「うーっす。久しぶりだな」

( ^ω^)「おっ!」

( ・∀・)「噂をすればなんとやら、だな」

(,,゚Д゚)「なんだお前ら、もう飲んでんのか」

( ・∀・)「うん。そろそろ無くなりそうだから買ってきて」

(;-Д゚)「あのなぁ……。お前らなんでここに集まったかわかってるか?」

( ^ω^)「頼むお!4番打者!」

(;-Д-)「はいはい。わかりましたよ。
でもあんまり飲み過ぎるなよな?」

( ・∀・)「わかってるって」

( ^ω^)「いってらーだお!」




52 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:06:22.63 ID:VOG99s40O
( ・∀・)「で、ギコは来たけどロマとジョルジュは?」

( ^ω^)「おー……。連絡はないお」

( -∀・)「どうせ軍曹と一緒に遊んでんだろうな」

( ^ω^)「おっwww。あの二人は特に仲良かったおねwww」

( ・∀・)「ああwww。『軍曹(笑)!』『長岡、集合』の流れは見飽きるほど見たからな」

( ^ω^)「そういえばジョルジュが初めて白根先輩を軍曹って呼んだのって、
モララーの初登板の日だったおね?」

(;-∀-)「あー……。そういやそうだな。
思い出したくねーよ」





――――――――――――……




55 名前:>>52ミスった ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:08:52.68 ID:VOG99s40O
( ・∀・)「で、ギコは来たけどロマとジョルジュは?」

( ^ω^)「おー……。連絡はないお」

( -∀・)「どうせジョルジュは軍曹と一緒に遊んでんだろうな」

( ^ω^)「おっwww。あの二人は特に仲良かったおねwww」

( ・∀・)「ああwww。『軍曹(笑)!』『長岡、集合』の流れは見飽きるほど見たからな」

( ^ω^)「そういえばジョルジュが初めて白根先輩を軍曹って呼んだのって、
モララーの初登板の日だったおね?」

(;-∀-)「あー……。そういやそうだな。
思い出したくねーよ」





――――――――――――……




56 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:11:27.54 ID:VOG99s40O
長かった夏休みが終わり、秋を迎えた頃。
この秋にモララーは初めて練習試合で登板することになった。



( ・∀・)(あー緊張する)

( ´ー`)「モララー!肩の力抜いて楽に行けよ!」

( ・∀・)「あ、はい」


二年生で正捕手の白根とバッテリーを組んだモララー。
モララーは白根とバッテリーを組むのは初めてだった。


( ・∀・)(あ、初球からカーブ……。……大丈夫かな?)


ストレートのコントロールなら絶対の自信を持つモララーだが、変化球はそこまで自信がない。
いつもブルペンでモララーの球を受けているブーンなら知っていることだ。

ただ、白根は今回初めてモララーとバッテリーを組んだものだからそんなこと知るはずもなかった。




59 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:15:37.72 ID:VOG99s40O
不安を拭いきれないまま、投球動作に入るモララー。


( ・∀・)(……腕は金づちで釘を打つような感じで……)


ブーンに言われた事を頭の中で繰り返しながら腕を振る。
少しリリースが早かったような感じがした。


( ・∀・)(やべっ……)


高い。
しかもコースは真ん中だ。
まるで打ってくださいと言わんばかりのボールになってしまった。

もちろん打者がそれを見逃すわけもなく、強打。
弾丸ライナーがモララーの顔面目掛けて飛んでいく。



(;・∀・)「!!」




65 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:20:24.07 ID:VOG99s40O
とっさにグローブを上げる。
すると、パァン!と乾いた音がして、左手に衝撃が走った。


同時に審判の「アウト!」の声が響く。
なんとかあのライナーをキャッチできた……というか運よくグローブに入ってくれた。


( ・∀・)「ワンアウトー」


平静を装い、内野に向かって声を出した。
心臓は早鐘のようになっている。


だが、気分は少し楽になった。
先頭打者をアウトにとったからだろうか。


モララーはその後の打者をサードゴロ、ショートフライに打ち取り、三者凡退で1イニングを終えた。




68 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:26:09.47 ID:VOG99s40O
ベンチに戻ると、みんながモララーを暖かく迎えてくれた。


(*^ω^)「ナイスピッチングお!」

( ・∀・)「初球はびっくりしたけどねー」
  _
( ゚∀゚)「まったくだww。顔面にボールを喰らったかと思ったぜwww」

( ・∀・)「喰らったら死ぬよなー」

(,,-Д゚)「ま、でもその後も平然としてたから安心したけどな」

( ・∀・)「あははー」


ベンチに戻っても、モララーの心臓はバクバクと鳴っていた。
持ち前のポーカーフェイスのおかげでみんなにはバレていないが、
極度の緊張のせいで手汗がひどかった。


( ・∀・)(次の回……。汗で手がすべったらどうしよう)




71 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:30:20.93 ID:VOG99s40O
次の回、相手打者は4番だった。
白根の要求は外角低めギリギリのストレート。


( ・∀・)(ストレートなら……)


下半身をフルに活用して腕を振る。
ジョルジュに比べると球速は遅いがボールは真っすぐ白根の構えたミットに吸い込まれていく。

打者はそのボールを無理矢理打とうとして、引っかけた。

打球はボテボテのファーストゴロ。
モララーはボールの行方をぼーっと眺めていた。



(#´ー`)「馬鹿!!何ボーッと突っ立ってんだよ!!」


(;・∀・)「え?……あっ!!」


突如飛んだ白根の怒号。
モララーはその意味を理解するのが一瞬遅れたが、
慌ててファーストベースに走っていった。




72 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:34:40.12 ID:VOG99s40O
右方向にゴロが転がったら、ファーストはボールを取りに行く。
そうするとファーストベースが空いてしまうので、
ピッチャーはファーストのベースカバーをしなくてはならないのだ。


ファーストからトスでボールを受け取り、ベースを踏む。
だが、ランナーの方が一瞬速かった。
記録は内野安打だ。


(;・∀・)「す、すいません……」


ファーストの長谷川に頭を下げるモララー。


( ^^ω)「気にするなホマ。次からしっかりやればいいホマ」

(;・∀・)「はい……すいません……」


長谷川は笑顔でモララーを励ましてくれた。
白根も「次からは忘れるなよ」と言ってモララーの背中を軽く叩いただけで怒りはしなかった。

しかしモララーは自分の不注意のせいでいらないランナーを出してしまった後ろめたさで、
少し精神状態が不安定になってしまった。




73 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:39:08.57 ID:VOG99s40O
(;・∀・)(次の打者は抑えないと……)


次の打者は抑えないといけない。
そんなことを考えたものだから力んでボールがど真ん中へ行ってしまった。

バッターはそれをいとも簡単に右中間へ弾き返す。

ボールの行方を確認したモララーは暴投に備えて、
ホームベースの後ろへカバーに行った。


さすがにさっき怒られたばかりで同じミスは繰り返せない。


キャッチャーの白根の背中を茫然としながら眺めていると、
視界にさきほど出した一塁ランナーが入ってきた。

一点取られたのだ。


打ったバッターランナーは三塁へ。
スリーベースヒットだ。




75 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:43:48.14 ID:VOG99s40O
( ´ー`)「今度はベースカバーを忘れなかったな。偉いぞ」

(  ∀ )「すいません……」

( ´ー`)「打たれたのは仕方ないさ。切り替えろよ」

(  ∀ )「はい……」



切り替えろ、と言われたが如何せんまだモララーは経験が浅い。
簡単に切り替える事もできず、その後四球を連発し連打を浴びてあっさり交替させられてしまった。

この回、モララーが取られた点は6点だった。

そしてその失点が響き、試合にも負けてしまった。


(;^ω^)「おー……。気にするなおモララー。
こんな時もあるお」




77 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:47:58.25 ID:VOG99s40O
  _
( ゚∀゚)「一点取られたくらいで崩れるなんて情けねーな」

('A`)「オニイチャンオチンチンツイテマチュカー?」

(; ∀ )「おまえら……俺がどんだけ緊張したと思ってるんだ……」

(#)A`)…イタイ

(,,゚Д゚)「そうは見えなかったけどな」

(; ∀ )「ほら……。パワプロでいうポーカーフェイスってやつ」

(;ΦωΦ)(パワプロでなくてもポーカーフェイスっていうが……)


( ´ー`)「ま、猫山はまだ初心者だしな。これから試合を重ねていけぱそのうち慣れるだろ」
  _
( ゚∀゚)ゝ「あ、白根軍曹!!お疲れ様であります!!」

(;・∀・)ゝ「え、あ、お疲れ様であります!!」


( ´ー`)「おまえら、俺をからかってんのか?」
  _
( ゚∀゚)ゝ「はっ!もちろんであります!」

( ´ー`)「よし、長岡は後で集合な」




79 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:52:28.17 ID:VOG99s40O
( ´ー`)「猫山、どうだ?悔しかったか?」

(;・∀・)ゝ「はい……。すごい不甲斐ない結果になってしまって……。
すいませんでした……」

( ´ー`)「謝んなって。今日が初登板のお前に結果を出せなんて誰も言わねえよ。
あと敬礼やめろ」

(;・∀・)「は、はぁ……」

( ´ー`)「お前はいいもん持ってるんだから……次はいい結果を出してくれるって期待してるぜ」

( ・∀・)「軍曹……」

(;´ー`)「軍曹はやめろっての……」

( ・∀・)「少尉?」

( ´ー`)「よし、お前も後で集合だな」





その後、学校に帰ったモララーとジョルジュは白根により、
地獄の100本ノックを受けさせられていた。




82 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/25(火) 23:56:04.33 ID:VOG99s40O
――――――――――――……

( ・∀・)「まさかあれが原因であだ名が軍曹になるとは思ってなかったろうな」

( ^ω^)「軍曹のあだ名を使い初めたころはみんな殴られて大変だったお」

( ・∀・)「結局軍曹で定着しちゃうしなwww」

( ^ω^)「おっwww」

( ・∀・)「そういや……その頃だったな。お前が腰をやったのって」

( ^ω^)「おっ。分離症だお」

(;^ω^)「あの頃はマジで辛かったお。野球どころか普通の日常生活から腰が痛かったお」

( ・∀・)「そのせいで春のリーグ戦では俺とロマと一緒に応援してたもんなww」

(;^ω^)「おかげで一年ほど野球が出来なかったお」

( ・∀・)「あの怪我がなかったら今頃軍曹以上のキャッチャーだったろうにwww」

( ^ω^)「二年の夏に怪我したお前に言われたくねぇおwww」




83 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:00:01.87 ID:VOG99s40O
ガチャ
( ΦωΦ)(,,゚Д゚)「酒買ってきたついでにロマ持ってきたぞ」

( ^ω^)ノ「ロマおいすー」

( ΦωΦ)「うむ、久しぶりである」

( ・∀・)「今昔話してたんだよ。
そういやビロードは元気か?」

( ΦωΦ)「うむ、大学野球でピッチャーをやってるのである」

( ・∀・)「あいつは天才だったもんな……」




――――――――――――……



春。
今年も新たな新入部員がやってきた。




87 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:05:18.38 ID:YFZgJX1QO
  _
( ゚∀゚)「いやー。やっと顎でこき使える後輩ができたな」

( ・∀・)「いや、こき使うなよ」


緊張してるのか、新入部員の総勢15名はみんな気をつけの姿勢で固まっていた。


( ´ー`)「んじゃ、名前と希望ポジションでも言ってもらおうか」


( ><)「は、はい!杉浦ビロード!ピッチャー志望です!」

( <●><●>)「若菜ワカッテマスです。志望はキャッチャーです」

<_プー゚)フ「轟エクストっす!志望はセンターっす!」




( ・∀・)「ん?あの杉浦って……」

(´ΦωΦ)「……我輩の弟である」


(,,゚Д゚)「ぶはっwww似てねぇwwww」




89 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:09:22.14 ID:YFZgJX1QO
最初は初々しい一年生の様子を見てニヤニヤしていたが、
いつの間にか開いた口が塞がらなくなっていた。


まず、ビロードの投球。
コントロールもいいし球威もある。
いまだベンチ入りしてない兄とは大違いの野球センスだった。

次にエクストの守備。
俊足かつ強肩。
よくポロポロやるが送球はギコと同等くらいの速さだった。

そして、ワカッテマスだ。
盗塁練習で、ジョルジュとバッテリーを組んで、
俊足の長谷川を悠々アウトにしてしまった。
それには白根も舌を巻いていた。

モララーは、ビロードという思わぬライバルの出現に、より一層の努力を必要とされた。



――――――――――――……




91 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:13:42.60 ID:YFZgJX1QO
(*・∀・)「ビロードはすごかったよな」

(*゚Д゚)「俺はワカッテマスが1番すごいと思ったが」

(*^ω^)「エクストの足の速さには驚いたおwww」

( ΦωΦ)「お前ら、飲み過ぎだぞ」


ガチャ
  _
( ゚∀゚)「うぃーっす。遅くなったな」

(*・∀・)「お、ジョルジュ。皆もう集まってるぞ」
  _
( ゚∀゚)「悪い悪い。軍曹に捕まっちまってよ」

(*゚Д゚)「お前らラブラブだなwww」
  _
( ゚∀゚)「バーカ。ちげーよ」

( ΦωΦ)「何を言ってるのだ。白根先輩が引退するとき大泣きしとったくせに」


――――――――――――……




93 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:17:45.30 ID:YFZgJX1QO
モララー達に取って、二度目の夏。
白根達三年生にとっては最後の夏がやってきた。


この年のVIP高校は例年と比べ全体的に纏まっており、強かった。
ブロックの一回戦、二回戦をコールドで勝ち進み、三回戦まで駒を進めた。


三回戦の相手はこの地方じゃ割と名が知られている私立校だった。


試合は熾烈な展開となった。
VIP高校が一点勝ち越すと、その次の回に相手校が逆転する。
勝ち越し、追いつかれ、追い越され、追いつき、追い越す。

すごい乱打戦だった。

モララー、ブーン、ロマネスクはスタンドから必死の応援をしていた。
全員、喉を潰していた。


しかし、健闘の末、14―15で負けてしまった。
もう一歩だった。




96 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:22:23.43 ID:YFZgJX1QO
試合終了後、キャプテンの白根から話があった。
白根は泣いていた。
三年生だけでなく、二年生もほぼ全員が涙を流していた。

荒巻とシャキンも泣いていた。


白根の話が終わったら全員で記念撮影をして、モララー達はそれぞれ先輩達に最後の挨拶をしに行った。


( ・∀・)「軍曹」
  _
(  ∀ )「……」

( ´ー`)「軍曹って……。まぁ今日は許してやる。
猫山、長岡。今までサンキューな」

( ・∀・)「いえ、お礼を言わなきゃいけないのはこっちの方です。
……本当にありがとうございました」

涙が流れそうになるのを堪えながら、モララーが最後の挨拶を済ませた。
ジョルジュはただ無言で俯いていた。

( ´ー`)「猫山。来年の夏はエースナンバーを目指せよ。
長岡。変なこと言って仲間を困らせんじゃねぇぞww」




98 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:27:01.80 ID:YFZgJX1QO
  _
(  ∀ )「ぐんそ……」


ジョルジュが口を開いた。
続いてその口から嗚咽が漏れる。

  _
( ;∀;)「いままで……ほんどに……ありがどうございまじた……」

(;´ー`)「……ば、馬鹿やろう!!何泣いてんだよ……お前が泣いたら……」

( ;ー;)「また……泣けてくるじゃねぇか……」
  _
( ;∀;)「ぐんぞ……うぅぅ……」

( ;ー;)「長岡ぁ……。絶対、強くなれよ……。俺達よりも強く……」
  _
( ;∀;)「うぅぅ……はい……」

( ;ー;)「ばかやろう!……へんじがちいせぇよ!」
  _
( ;∀;)「はい!!」



――――――――――――……




99 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:31:35.58 ID:YFZgJX1QO
( ;∀;)イイハナシダッタナー

(*゚Д゚)「おえぇがらいたろ、あれらけらったよな?」(おめぇがないたのあれだけだったよな?)

(;ΦωΦ)「ギコ、もう呂律が回っとらんぞ」
  _
(*゚∀゚)「うっせーなー。あの時はまだガキだったんだよ。
おい、ロマ。酒無くなったから買ってこい」

(;ΦωΦ)「ええぇぇぇ。さっきギコが買ってきたばかりなのに」

(*´ω`)「zzzz……」


(*゚Д゚)「新チームになってからジョルジュは凄かったよな。
なんか凄く『エース』って感じだった」
  _
(*゚∀゚)「俺だけじゃねぇさ。モララーだって、新チームになってから凄かったよな」

(*・∀・)「きっと最上学年としてのプライドがあったんだよ。
俺もジョルジュも」




102 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:36:35.72 ID:YFZgJX1QO
  _
(*゚∀゚)「でもこの馬鹿、投げすぎで肩ぶっ壊すしよwww」

(*・∀・)「おかげで夏の新人戦はでれませんでしたwww」

(*゚Д゚)「つーかあの時確かリーグ戦全敗しただろwww
最悪のスタートだったよな俺らwww」

(*´ω`)「zzzz……」


(*・∀・)「おい、ブーン寝てんぞwww」
  _
(*゚∀゚)「おいギコ、油性ペン持ってこいwww」

(*゚Д゚)「ばかやろwwwこいつは一応元キャプテンだぞwwww」

(*・∀・)「とか言いつつマッキー持ってきてんじゃねぇよwww
てか、もう当初の目的忘れてるだろおまえらww」

(,,゚Д゚)「……」

  _
( ゚∀゚)「……」




103 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:40:48.18 ID:YFZgJX1QO
( ・∀・)「あー……。なんか、ゴメン」

(,,゚Д゚)「いや、気にするな。俺も少し浮かれすぎてた」
  _
( ゚∀゚)φカキ…

( ・∀・)「ちょwww書くなよwww」


(,,゚Д゚)「そういえば、あの年の冬あたりからあいつおかしかったんだよな」

( ・∀・)「ああ、言われてみれば……」
  _
( ゚∀゚)φカキ…キュ…

( ・∀・)「ちょwwwおまwwwww」

(,,゚Д゚)「wwwwwwwwww」

(豚´ω`)「zzzz……」




105 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:44:23.48 ID:YFZgJX1QO
(,,゚Д゚)「あいつの言い分も、今思えば間違ってはいなかった。
俺が野球の事しか考えてなかったばっかりに……あんなこと言っちまって……」

( ・∀・)「ギコは悪くないよ。あの時期にあんなことを言い出したドクオが悪いんだから……」


――――――――――――……


季節は巡り、6月の中盤。
秋、冬と厳しい練習を耐え抜き、去年全く勝てなかったこのチームも、
最近の練習試合では勝ちの数が負けの数より圧倒的に多くなっていた。

この時期にはモララーもブーンも治っていて、全員揃って野球をやっていた。
だが、最後の夏前の大事な時期に一つだけ問題があった。


(,,゚Д゚)「ドクオのやつ……今日もサボりやがった」

( ・∀・)「サボりなの?腹痛い……とか言ってたけど」

(#゚Д゚)「んなもん嘘に決まってんだろ!!」

(;・∀・)ビクッ




109 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:48:47.04 ID:YFZgJX1QO
めったに怒らないギコが声を張り上げた。
右腕はワナワナと震えている。


(#゚Д゚)「もうすぐ最後の大会だってのに……!
あいつは何を考えてるんだ!」

(;・∀・)「ギ、ギコ。とりあえず落ち着け。
一、二年がなんか困ってる……」

(,,゚Д゚)「……すまん」

( ^ω^)「ギコ……。そのことなんだけど……」


ギコの怒声を聞きつけてか、ブーンがモララー達のもとへ駆け寄ってきた。


( ^ω^)「荒巻監督が最近ドクオが部活に全然来ない理由を聞いてこいって言ってたお。
今度みんなでドクオと話するお」

(,,゚Д゚)「……おう」




110 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:53:59.33 ID:YFZgJX1QO
次の日、部活は休みだった。
授業が終わって、さっさと帰ろうとするドクオを、
ロマネスクが半強制的に部室に連れてきた。


('A`)「なんなんだよ……。今日部活休みだろ?」

( ^ω^)「ドクオ、最近部活を休んでばっかりだけど……どうかしたのかお?」

('A`)「……俺にも事情があるんだよ」

(,,゚Д゚)「その事情がなんなのか聞いてるんだよ」


ギコのドクオに対する怒りが篭った声が、狭い部室に響く。
その後、痛いくらいの静寂が部屋を包んだ。


('A`)「……受験勉強だよ」


静寂を破ったドクオの言葉は信じられない物だった。




112 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 00:57:29.46 ID:YFZgJX1QO
(#゚Д゚)「はぁ?受験勉強だと……?」

(#'A`)「そうだよ。文句あるか?」

(#゚Д゚)「てめぇ……ふざけんなよ!!」

(;・∀・)「ギコ!落ち着けよ!」

ドクオにつかみ掛かるギコをモララーとジョルジュが宥める。
しかし、ギコの言葉は止まらない。

(#゚Д゚)「なにふざけたこと言ってんだよ!!もう来月には最後の大会だぞ!
なに一人だけてめぇの事やってんだよ!!」

(#'A`)「ふざけたことだと?俺はもともと大学に行くためにこの高校に来たんだよ!!
それが野球のせいで大学行けなかったら話にならねぇだろ!」

(#'A`)「ほかの奴らはとっくの前に部活引退して大学受験の準備してんだぞ?
まだ馬鹿みたいに一生懸命部活やって後悔したくないんでな!!」

( ^ω^)「……今の言葉はちょっといただけないお」

(#゚Д゚)「お前、ベンチ入りのメンバーとしての自覚はないのかよ!!
お前のせいでベンチ入りできなかった三年に申し訳ないとは思わねぇのか!!」

(#'A`)「思わないわけないだろ!!でも俺はどうしても叶えたい夢があるから、
どうしても大学に行きたいんだよ!!」




113 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:01:36.28 ID:YFZgJX1QO
(#゚Д゚)「ふざけるな!!そんな中途半端な考えで野球やるんじゃねぇよ!!
そんなに勉強したかったら野球部辞めろよ!!てめぇみたいなのがいると目障りなんだよ!!」

(;・∀・)「ギコ!言い過ぎだ!」

(#'A`)「わかったよ!!辞めりゃいいんだろ!?辞めてやるよこんな部活!!」

(;^ω^)「ドクオ!待つお!!」

ブーンの制止を振り切ってドクオは走って行ってしまった。

(#゚Д゚)「ほっとけ!あんなやつ……。受験の事しか考えてないやつが居たって足手まといだよ」


そのギコの言葉に誰も反論はしなかった。
そこにいたメンバー全員が少なからずドクオには怒りを覚えていた。
最後の大会のために必死に練習してきたのに、それを『馬鹿みたい』と言われたのだから。


その翌日、ドクオは退部届けを提出した。



そしてモララー達はそのまま夏の大会をむかえてしまった。




114 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:05:05.28 ID:YFZgJX1QO
モララーとロマネスクに取っては初の公式戦だった。
先発はジョルジュ。VIP高校は後攻。
モララーはいつでも試合で投げれるように、ブーンとブルペンにいた。

初回、ジョルジュの好投で相手の攻撃を三者凡退で終わらせるが、
その裏の攻撃は続かず両者とも三者凡退で初回を終える。

続く二回、三回と0進行で試合が進み、戦況が動いたのは四回の裏だった。
ランナーを二塁に置いて4番のギコ。
鋭いスイングでセンター前に打ち返し、一点。
スコアを0―1とする。

しかし、5回の表、ジョルジュが捕まった。
立て続けに連打を浴び、一気に三点を失い、ピッチャー交代。
モララーより先にビロードがマウンドへ向かった。
スコアは3―1だ


( ^ω^)「ビロードの次はモララーだお。さ、ベストコンディションに持って行くお」

( ・∀・)「おk」




117 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:09:07.61 ID:YFZgJX1QO
ビロードは頑張った。
ジョルジュと代わった時、1アウト二、三塁だったが、
後の打者をサードフライ、セカンドゴロに討ち取り、
六、七、八回を0点にきった。
しかし打線がそれに答えれず、四回以降一点も入らない。

そして、九回。
ここまで好投を続けていたビロードがおかしくなった。
まず先頭打者にデッドボールを与え、続く打者をキャッチャーフライで打ち取るも、
その後連続フォアボールでランナーを二人出し、あっという間にワンアウト満塁にしてしまった。


( ^ω^)「モララー……」

( ・∀・)「ん、わかってる」

恐らく自分の出番だろうと思ったモララーは軽く屈伸をして、
肩を回した。


アラマキがタイムをかける。


ベンチから走ってマウンドに向かったのはロマネスクだった。




118 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:13:21.14 ID:YFZgJX1QO
(;・∀・)「なんだとっ!!ロマネスクが投げるのか!?」

(;^ω^)「そんなわけねーお。伝令だお」

伝令を出す、ということはピッチャー交代はしないということ。
モララーは少し肩を落とし、ブーンを座らせた。

( ・∀・)「こりゃ俺の出番はないかもな」

(;^ω^)「何言ってるんだお。ビロードがここで打たれたりしたら……」

( ・∀・)「……なんとなくわかるんだよ。……だから……」


ビロードが投げる。
バッターが打つ。

打球はピッチャーゴロ。
ビロードがキャッチャーのワカッテマスに投げる。
ワカッテマスはホームベースを踏み、ファーストへ送球。
ホームゲッツー……チェンジだ。


( ・∀・)「試合終了まで、ずっと球を受けててくれないか?」




120 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:16:16.61 ID:YFZgJX1QO
最終回、VIP高校最後の攻撃。
二番からの攻撃だったが、ここでロマネスクが代打。
結果はサードフライだった。


( ・∀・)「ブーン……」

(  ω )「……お?」


キャッチャーマスクのせいでララーからはブーンの表情が見えない。


( ・∀・)「ありがとう」

(  ω )「それはこっちのセリフだお」


三番打者はワカッテマスだ。
しかし、いい当たりを放つも、ショートのファインプレーにより、ツーアウト。


(  ω )「モララーが……いなかっ……た…ら……、
ブー…ン……は、ここには……いなかったお」

(  ω )「モララー……ありがとうお……」


マスクで表情が見えないが、ブーンは泣いていた。
嗚咽混じりの声でモララーに『ありがとう』と繰り返していた。




122 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:19:32.98 ID:YFZgJX1QO
VIP高校三人目の打者は四番、ギコ。
まだ終われないとばかりに素振りを三回してから打席に入った。


(  ∀ )「ブーン……」

(  ω )「……お?」

( ;∀;)「最後、ストレート」

(  ω )「……おっ!」


ブーンがミットを構える。
モララーが振りかぶる。
ギコがバットを振る。
ジョルジュとロマネスクが声を張り上げる。


……何か一つ、足りない感じがした。


そして、モララーの渾身のストレートがブーンのミットに収まった時、
一際大きい歓声が相手のスタンドから聞こえた。


モララー達の夏が終わった……。




127 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:22:16.01 ID:YFZgJX1QO
――――――――――――……


( ・∀・)「最後に撮った記念写真。ロマネスクとギコの間にスペースが空いてたよね」

(,,゚Д゚)「……本来ならドクオがあそこに入るはずだったんだ」

(豚ぅω`)「お……?」
  _
( ゚∀゚)「じゃあそろそろ……」

( ・∀・)「うん、ロマネスクが帰ってきたらね」

モララーがポケットから小さい紙を取り出した。
その紙には10桁の番号が書いてある。


( ・∀・)「不思議だよな」

(,,゚Д゚)「あん?」

( ・∀・)「……俺さ、高校入学するまで野球部に入る気なんてなかったんだ。
でも何故か野球部入ろうって思って……
ブーンに出会って……今こうやってみんなと一緒にいることが、さ
なんか不思議だなーって」




132 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:26:51.09 ID:YFZgJX1QO
  _
( ゚∀゚)「……」

( ・∀・)「運命とかそんなの信じるタチじゃないけどさ。
いざこうなってみると……やっぱりこれは運命なのかなって思えるんだ」

(豚^ω^)「……」

( ・∀・)「あと、ドクオ。ブーンが一生懸命調べてくれてわかったんだけど、
あいつ、都心の方の国公立の大学に受かったらしいんだ。
だからあの時、あいつは野球部を辞めて正解だったのかなって」

(,,゚Д゚)「……」

( ・∀・)「不思議だよな」


(豚^ω^)「モララーもむつかしい事が言えるようになったんだおね」

( ・∀・)「豚に言われたくねぇww」

(豚#^ω^)「お?誰が豚だお?」
  _
( ゚∀゚)「おめぇだよwww」

(豚#^ω^)「このスレンダーな体のどこが豚だってんだお!!」

(,,゚Д゚)「ほっぺだよwwww気づけwwwww」




134 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:30:40.60 ID:YFZgJX1QO
ガチャ
(;ΦωΦ)「ただいま。遅くなってすまんのである」

(,,゚Д゚)「お、来たな」
  _
( ゚∀゚)「酒は冷蔵庫いれといてくれ」

( ΦωΦ)「なんだ、今から電話するのか」

(豚#^ω^)(とれねぇお……)

( ・∀・)「じゃ、かけるよ」


モララーが白い紙を見ながら番号を押し、ついでにスピーカーをオンにする。
通話ボタンを押し、しばらくするとコール音が流れた。




136 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:33:18.49 ID:YFZgJX1QO
プルルルルル……

『えと……ジャージ?』

プルルルルル……

『なんだ?モララーはピッチャーやるのか?』

プルルルルル……

『我輩は杉浦ロマネスクである』

プルルルルル……

『よぉーモララー。同じポジションだなー。よろしくなー』

プルルルルル……

『モララー……ありがとうお……』

プルルルル、『ガチャッ』




139 名前: ◆ih5OJP/g3g :2009/08/26(水) 01:36:28.02 ID:YFZgJX1QO
『もしもし?』


( ・∀・)

(,,゚Д゚)

( ^ω^)
  _
( ゚∀゚)

( ΦωΦ)







         「「「野球やろうよ!!!」」」





( ・∀・)野球やろうよ!のようです   おしまい


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